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つれづれ野花  作者: あぐりの
えんこい
100/190

えんこい10

夏休みとは言え、受験生の私達には模擬試験や夏期講習があったりして、何回か学校に行く機会があった。

「ねー、勉強捗ってる?」

講習終わりの帰り道、カノが聞いてきた。

「えー?全然。」

私はそう答えた。良くある、全然(実はそんな事無い)って事では無くて、困った事に事実だった。

「だよねー。勉強してて仮眠取るとさ、仮眠が仮眠の域を超えちゃうの。」

カノはお手上げって動作をしながら話した。私はそれが面白くて笑ってしまった。

「日中は暑くてやる気起きないし、図書館まで行くのも面倒だしねー」

「分かるー!」

実際、私はあの地方版スポーツ紙を見に行って以来、図書館へは数回しか行っていなかった。行けば冷房が効いていて涼しくて快適なのだが、なんせ行くまでに汗だくになってしまうのだ。だから、なかなか気分が向かなかった。

「ねー、夜勉強会しない?」

とカノが言った。

「勉強会?」

私が聞くと、

「そう。お互いの家でさ、分からないところとか教え合うの。」

とカノは言った。

なるほど。私とカノの家は自転車で10分位で近いし、得意科目も違うから勉強を教え合えるかも。

「いーね!でも、なんで夜?」

勉強会なら日中でも良いはず。

「えー?だって寝てたら起こし合えるじゃん。」

カノは笑って言った。

こうして私達の勉強会と言う名のお泊まり会が始まったのだった。


お互いの家で何回か開催されたお泊まり会は、たまに漫画を読んじゃったり、2人して寝ちゃったりもしてたけど、ちゃんと勉強を教え合ったりもしていた。

そんなある日のお泊まり会の時だった。

その日はカノの家で、勉強を始めて1時間くらい経った時だった。

ガラガラっと玄関のドアが開く音が階下から聞こえたと思ったら、

「カーノちゅわーん!」

と言う声が階段を登る音と共に聞こえてきた。

「うわぁ…」

と言うカノの嘆きが発せられた直後、ノックと同時にドアが開いた。

「カーノちゅわーん。お父さまでーす!」

酔っ払いの、カノ父が登場した。

「最悪…」

カノの冷たいセリフと視線を気にも留めないカノ父は、

「おやぁ?さわちゅわーんも居たのー?」

と、私にまで絡んで来た。カノから噂には聞いていたけど、実際目の当たりにすると想像を超えていて唖然としてしまった。

「邪魔なんだけど。何⁈」

私も見た事も聞いた事も無いカノの冷たい対応に屈する事の無いカノ父は、

「何でお父さまがこーんなーんになっているかとゆーと、リュウヘイんちでBBQをしているからでーす‼︎」

と叫び、

「勉強ばっかりして無いで!はい!行くぞー‼︎」

と言って、私の腕を掴んだ。

え?リュウヘイ?BBQ?

状況を把握出来てない私達を助けてくれたのはオトウトだった。

「あれ?さわも居たんだ。」

酔っ払いのカノ父を私から引き剥がし、説明をしてくれた。

「今リュウヘイんちでBBQしてるんだけど、ねーちゃん達の学年の人が結構集まって来て、呼んで来いって。」

「学年の人達?」

カノと私は同時に聞いて、顔を見合わせた。私は同学年と聞いてちょっとドキっとした。

「女子も何人か今呼んでてー、あ!緑川も居るよ。」

それを聞いて、行くか行かないかの選択は無くなった。私の方を見てニヤついてるカノが、

「準備してから行くー」

と返事をして、行く事が決定した。


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