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青春あくありうむ!  作者: 風又秀太
第1章 Episode of 高橋悠太×橘立夏
9/12

7話:小さな目標 ~高橋悠太~

【4月7日】

真新しいブレザーに身を包んだ俺は、1年F組へと足を踏み入れた。


「(ここでこれから1年間過ごすのか……)」


在校生が掃除してくれたのであろう。清潔感と生活感の入り混じった教室で、何人かの新入生が緊張した面持ちで自席に着いていた。30分前に来たが少し早かった様だ。

いそいそと自席に向かい着席する。前から2列目だ。

知り合いがいるはずもないので、話す相手ももちろんいない。俺は生徒会長をやっていたが、元々内気な性格だ。初対面の人、特に女子と話すのは困難。中学のときは同じ小学校の友達がいたからなんとかなったが、このクラスに知り合いはいない。今日の目標は、誰かと一言でも会話することだ。


まぁ、どちらにしろ皆が来るまでは暇なので、机の上にあった『ライセンス』という水色の表紙の冊子を読んでみることにした。





いつかの学校説明会で貰った冊子に酷似していた。内容は変わっているが、同じ雰囲気を感じる。外山の行事やクラブのこと、外山の特色、委員会、ルールについてなど、幅広い内容が盛り込まれていた。中には生徒アンケートや外山生度チェック、ら~めんまっぷなど、読んでいて楽しくなるようなコンテンツもあった。

やはり制作は執行委員会だった。これでますます執行委員になりたいという思いは強まった。


夢中になって読んでいると……


 ツンツン


 ビクッ


背中を誰かにつつかれた。思わず驚いてしまった。振り返ると、


「そんなに驚かないでよぉ」


「ご、ごめんなさい」


女子だ。やや茶色がかった髪を肩下まで下げている。


「なんで謝るのさ!」


「ご、ごめん」


おどおどしっぱなしで自分でも恥ずかしい。


「はぁ、まぁいいや」


そう言うと彼女は立ち上がり、まだ来ていない俺の右隣の椅子にちょこんと腰かけた。なにがしたいのかさっぱり分からないが、悪い人ではなさそうだ。


彼女は身を乗り出し、俺が机に置いたF組の名簿を指差して言った。


「私、橘立夏。これからよろしく!」


おおぉ!自己紹介されてしまった。これが高校のノリというものだろうか。それとも青春というやつだろうか。

どちらにしろ内気な俺には到底できない。さきの彼女の台詞に対しても、ようやく振り絞って出た返答が……


「俺は高橋悠太って言います」


どこの商社マンだよ!

せっかく話しかけてもらったが、おそらく今ので俺がコミュ障だと気付かれてしまっただろう。もう話しかけてはくれまい。


「んー堅いよ。同級生なんだからタメでね」


「あ、はい」


いきなり話しかけてきたからチャラいのかと思ったが、案外学級委員タイプなのかもしれない。


「これからよろしくね!……えっと、なんて呼ぼう」


「んー……高橋とか?」


まぁ無難に名字でいいだろう。


「オッケー、じゃあ私のことも橘って呼んで」


「うん、これからよろしく」


「こちらこそ!改めてよろしくね!」

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