4話:衝突 ~橘立夏~
【11月18日】
「駅から徒歩1分かぁ。近くていいな」
土曜の昼下がりの雨上がりの大通りを歩きながら、私はそう呟く。外山高校ってどんなところなんだろう。今日は明日香の代わりだけど、あわよくば志望校を......
「なんて、そんなこと起きるわけないよね」
仮に、もし外山高校に行きたいと思ったとして、それはきっと、 明 日 香 と一緒に行きたい、ということなのだろう。明日香は最高の友達だし、まだまだ一緒にいたいとも思っている。だが、高校は、自分の意志で決めたいと思っていた。
独り立ちするためだ。明日香と一緒だとどうしても彼女に頼ってしまうだろうし、独り立ちなど到底できるはずもない。だから高校だけは、自分一人でも頑張れるようなところにしたいと密かに思っている......
そんな立夏の決意など秋の風はつゆ知らず、気付けば立夏は、外山高校の門の前にいた。
「ここが外山高校か……」
季節を感じさせる並木道に、簡素な出で立ちの黒い門。奥に見える白塗りの校舎は清潔感を感じさせる。
初めて見た外山高校の印象は、『とんでもなく綺麗』だった。
門をくぐると、「こんにちは」と言いながら、各所に配置された生徒が誘導してくれた。受付で、パンフレットのようなものを何故だか2種類受け取り、そのまま体育館へと、誘導されるがままに進んでいく。
体育館には既に、300人ほどの中学生やその保護者がいた。思った以上に大規模な説明会のようだ。
「こんにちは。あ、、すみませんがこの説明会、中学生とその保護者しか……」
「中学生です!」
キレそう。
「あ!そうでしたか!失礼しました申し訳ございません!!そうしましたら、こちらまっすぐお進み頂いて、奥から詰めてお座りください」
「ありがとうございます」
この野郎、顔覚えたからな!今度会ったらただじゃおかないからな!!
まぁ、今はそんなことなどどうでもよかった。だって、気付いてしまったのだ。やっぱりこの説明会……
ドンッ
色々あって上の空だったのか、前を歩いている背の高い男性にぶつかってしまった。私の身長は149cm、お世辞にも高いとは言えない。そのため、振り返った男性とは30cm近い差があった。
「ご、ごめんなさい」
「あ、全然大丈夫ですよ」
一見怖そうな見た目だったが、いい人そうで良かった。
ゆっくりと彼の横に腰掛け、パイプ椅子の下にリュックを置く。
私は説明会開始の14:00まで、受付で貰ったパンフレットを読むことにした。1つはよくある学校案内のパンフレット。そしてもう1つは……
◇
私は、衝撃を受けた。
自由な校風で
クラブ活動が盛んで
委員会活動が盛んで
授業が楽しそうで
設備も良くて
明るくて
楽しそうで
そして何よりこの説明会
全部生徒だけで作ってる!!