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青春あくありうむ!  作者: 風又秀太
第1章 Episode of 高橋悠太×橘立夏
12/12

10話:壁 ~橘立夏~

【4月7日】


「はいみんな席着いてー」



しばらくすると、スーツを着こなした若い女性が教壇に上り、指示を出した。

おそらく先生だろう。



「はいみなさんおはようございます」


「「「おはようございます」」」



まばらだが、あちこちから挨拶が聞こえる。



「はい、今日から1年間、このHRの担任を務めさせていただきます、山本みち子です。よろしくお願いします」


「「「よろしくお願いします」」」


「はい、じゃあまぁ自己紹介はおいおいやるとして、早速、体育館に向かいましょう!」





入学式とその後の集合写真撮影は何事もなく無事に終わった。唯一何かあったとすれば、私と隣の高橋との身長差がすごかったことぐらいだ。


あれ……?前にも似たようなことあった気が……





「気を付け、礼」


「「「さようならー」」」



HRも無事終わり帰ろうとしたとき、



「そこの2人、ちょっと手伝ってくれる?」



帰り支度に手間取ってしまったのが原因か、山本先生に呼び止められてしまった。もう一人呼び止められたのは高橋だ。



「はい、なにをすればいいですか?」



「はい、じゃあそこのプリントと段ボール、持ってきてもらえる?ごめんね、一人で持っていくには重くて」


「了解です!」



そう言って私は、床に置いてある段ボールの取っ手に手をかけた。



「よいしょっ……」



……………………重い。

私の力では持ち上げることすら叶わなかった。



「俺持つよ」



低いぶっきらぼうな声で高橋が言う。



「あ、ありがとう」



先程も思ったが、高橋は女子と話すのにあまり慣れていないようだ。

……ってことは、未リア?



そんなことを考えているうちに、先生と高橋はもう先に行ってしまった。

プリントの束を持って小走りで追いかける。





「はい、助かりました。2人とも遅くなっちゃってごめんね」


「全然大丈夫です!」



あれ?この使い方間違ってるんだっけ。



「はい、じゃあ気を付けて帰るんだよ」




「じゃあ高橋、帰ろっか」


「お、おぅ」





もう昇降口まで来てしまったが、高橋は全く話しかけてこなかった。こっちから何度か話しかけようかとも思ったが、なんとなく話しかけづらい雰囲気で実行できずにいた。

これは、!入学して友達になったもののなんとなく気まずくなって卒業まで会話しないパターンだ!



「じゃあ俺、こっちだから」



いつの間にか校門まで来てしまっていた。結局一度も話せなかったよ……。



「うん、私こっちだ。じゃあね」



その言葉が言い終わるか終わらないかの内に、高橋は向こうへ進み始めた。



「私、嫌われちゃったのかなぁ……」



そう呟き、私も駅へと歩き出した……。



「り!っ!か!」


「ひっ」



声の主は後ろからバッと抱きついてきた。

突然のことで変な声が出てしまった。



「もぉ、ビックリさせないでよ明日香」


「へへへ」


「明日香も先生の手伝いで?」


「え、いや、立夏と帰ろうと思って待ってたんだけど」


「あっ、ありがとう。ごめんね、待たせちゃって」


「気にしないでよ。先生の手伝いしてたんでしょ?」


「うん」



やっぱり話しやすい。高橋と違って会話がスムーズだ。改めて明日香が大事な存在だと気付かされる。



「それで?浮かない顔してなーに悩んでたの?」


「えっ!?」



ほんと、よく気付くよなぁ……。



「んー、まぁちょっとね。仲良くなるのって難しいなって」



上を向いてしみじみとそう呟く。



「……何か焦ってない?」


「えっ?」



思いがけない一言だった。



「どんな相手か知らないけど立夏なら大丈夫!だから焦っちゃダメ。ゆっくり仲良くなりなよ」


「明日香……うっ」



その途端、今まで張り詰めていた緊張が一気にほぐれていくのが分かった。明日香の優しさと私への信頼が、心の傷に染みていくようで、いつの間にか私の目には涙が浮かんでいた。



「もう、なんで泣いてるのさ」



そう言って明日香はハンカチを渡してくれた。



「明日香、ありがとう」


「ん?ハンカチなら気にしなくていいよ」



まったく、明日香はこういうときだけ私の気持ちを分かってくれない。



「ううん、そうじゃなくって……これからもよろしくね」


「こちらこそだよ」





【4月8日】


「おはよう高橋!」


「あっ、おはようございます」



また敬語に戻っているのは気になるが、焦らず根気強く話しかけ続けよう。

本当に友達と呼べる、そんな関係を目指して。

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