プロローグ:入学 ~高橋悠太~
【4月7日】
爽やかな風が吹く。
暖かい春の日差しが降り注ぐ。
桜満開のアプローチロード。
……そう、遂に来たんだ。
「外山高校に!」
校門の前で写真を撮っていた親子が驚いてこちらを見るが気にしない。
「うおおおおおお!!!!!」
校舎に続く坂道を一歩ずつ、一歩ずつ駆け上がる。ただ全力で、ただ純粋に、俺はその喜びを押さえることもできずに叫び回る。俺を遮るものは何もない。そのことが、ただそのことが、とてつもなく心地よいのだ。
……という妄想をしながら静かに母親と歩く今日この頃である。
◇
ここは、東京都立外山高校。東京都でも屈指の進学校だ。自由な校風で、自主自立が売りの、明るく綺麗な学校である。様々なクラブ活動、委員会活動が行われている他にも、多くの魅力が存在する。例えばここは、国から支援金を受けて、希望した生徒たちが理科の研究を行える『理科教育推進校(Science Impulsion Schools)』に指定されている。それ以外にも、医学部進学を目指す人のためのプログラム、『TLM(Top Level Medical)』に指定されていたり、都立高校にしては異様な広さと綺麗さを誇る体育館やグラウンド、剣道場、武道場、プールがあったり、毎日20:00まで自習室を開放してたりもする。更には徒歩1分の場所に駅があったり、周囲には勉強場所として利用できる、大学のキャンパスやファストフード店があり、まさに至れり尽くせりである。
今日は、そんな外山高校72期生の入学式だ。新入生は、最高の環境と言っても差し支えないようなこの高校での新たな生活に胸を膨らませながら、いくらかの緊張とともに、決意を新たに外山高校の門をくぐっていくのだった。
さて、冒頭で妄想ばかりではっちゃけられなかった彼、高橋悠太も、それなりに夢を持ってこの学校にきている訳でありまして……