光の騎士と闇の王~死んでください女王様①
―――ある世界に、二つの国があった。
天使の加護を受ける光の国ルクスダリス、悪魔を崇拝する闇の国カオスマイン。
善と悪で相反し、敵対する両国の王。
彼らは長きに渡り、兵士を戦わせ戦を行った。
代が二つほど代わり、およそ百年後が過ぎる。
二つの決着がつき、勝利を手にしたのは闇の国カオスマイン。
敗した光の国ルクスダリスの王女エリクシア。
彼女はカオスマインの王ボルギルに嫁ぐことになった。
「エリクシア様……本当に行ってしまわれるのですか?」
騎士団長ログナー・レクイエムの顔は蒼白している。
ボルギルは悪逆の王であり、敵である。
国や民を守るため、王女は政略による婚姻をすることとなった。
「これも国を守るため、仕方のないことなの」
エリクシアは微笑んだ。
握った両手は震えていた。
彼女は王の唯一の血族、ルクスダリスを離れることは守ると同時に、終わりを意味していた。
ログナーはかつての騎士団長の息子で、父親とともに、城へ入ってくることもあった。
年の近い私たちは、すぐにうちとけた。
『騎士は戦ってとっても大変なのに、皆すごく頑張ってるわ』
『王様や姫様を守りたいからですよ』
『……そう? 私は国を護りたいのだと思うわ』
国を護りたいから王や次の王となる私を守る。そういうことだろう。
『僕は大きくなったら、父上と同じ騎士団長となり
必ず貴女をお護りします!』
ログナーは右腕を掲げた。
『期待しないでおくわ』