5/26
暗殺者が姫をさらう事はなかった
このごろ“スコーピオ”を名乗る暗殺者が王都を夜な夜な徘徊しては、人々を殺しているという。
「はー暗殺者とロマンのある恋がしたいわ……」
「スパラジーネ様!」
「悪い男は魅力的なのよー」
「姫様、ご趣味がお悪いですわ!“怪盗フライア”ならまだしも!!」
「いいじゃない話すのはタダなんだからー」
「お金の問題ではございません! 暗殺者なんですよ!その名の意味を理解なさってます?」
「後ろからサクッと魂を狩られる」
「それは死神です。もう夜も遅いですし、お早くおやすみくださいませ」
仕方ないから百歩譲って死神でもいい!
「イケメンが現れてくれないかしら……」
毎晩祈っても平和に過ぎていくだけだった。けれど、いつしか分かることだろう。
変わらない生活は幸せということに変わりはないのだから。