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白の皇女、黒の王子

―――かつて、いがみあう国が在った。

人を除き、建物や食物が純白の帝国ブランス・ミルキィ。

戦の主力たる皇女ホワイティナは慈悲深く、知略と魔法に長けた聡明な、齢17の少女と謳われる。


同じく人を除いて漆黒を基調とした王国ノワール・クローム。

軍の筆頭にして王子・ブラスティは冷酷で己の本能のまま戦う齢16の少年。


彼らは考え、趣向、民の扱い。すべてが対局をなしていた。



ジャラり、金属の擦れる音と浮いた身体が揺らぐ。

私は昨夜、城に入り込んだ族によって、敵国であるノワールクロームに捕えられてしまった。


「貴様がホワイティナ皇女だな…」



「いかにも、私は皇女ホワイティナ=ブランミルキィです」


私はその男の顔など初めてみる。しかし、心のどこかで、彼の正体に気がつき初めていた。

武骨な者ばかりのノワールクロムで長く整った髪と強き気品がある。

おそらくは、王族であり、彼の男だと、確信せざるを得ないのだ。


漆黒のマントを纏い、持ち手から刃にかけて黒き剣を持つ男は白きドレスのの裾を靴でふみ、白の杖で手首を固定された私に近づく。


「さあ、ひと思いに殺しなさい!」


鎖に繋がれたまま、死を覚悟し、目を瞑りそのときを待つ。

閉じた瞼に浮かぶのは死んだ両親や小さな弟、信頼していた兵士や優しい侍女達の姿。


(主よ…我が亡き後、ブランミルキィに加護を与えたまえ)


ただ静かに国の未来を祈ることしかできない。

目を閉じて待つ。しかし、いつまでたっても斬られる痛みがない。


自身に命があることを信じられず恐る恐る目を開く。その瞬間、黒刃が私を捕えていた鎖を断ち斬った。


「…え…?」


断末魔の代わりに間の抜けた声が地下へ響く。


「余はブラスティ・ノワールクロム。皇女ホワイティナ、我が妻となれ」


乱雑な国の王子など礼儀も知らないと思っていたが、あろうことか彼は私のドレスの裾に作法としてくちづけた。


―――皇女は捕虜。拒否すれば王子の機嫌を損ね、命が無いだろう。それ故に私は求婚を是とした。


敵であるブラスティが、何故そのような真似をしたのか気になる。だが、それは今考えることではないだろう。


問題はブランミルキィがこれからどうなるのかだったからだ。

三年前に両親が他界し、ホワイティナが帝国の最高権力者となっている。


亡き父王の弟である公爵には娘しかおらず頼みの弟はまだ幼く野心を抱く者に利用されるだろう。

せめて弟が成人していればよかったが、象徴たる皇女がいなくなったことで国が衰退するのは目に見えて

私は王子と結婚し、いつか国が滅ぶその日まで私が生きていたなら、自決することを誓おう。



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