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二十二歳の勇者と天然女神達の異世界創造譚  作者: そらまちたかし
第一章:フリーターと痴女女神
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女神フレイヤ ― 3

 

 

  煙が天高い青空へと昇っていく。 


 そんな晴天の下に漂うのは肉が焼けた時の香ばしい匂い。

そして溢れた油が焦げる音。


 そのどちらにしても、人間という生き物は三大欲求の一つ「食欲」を掻き立てられる。


「待て――」


 それは人間だけでなく、犬などの小動物も同様か。

しつけのなってない飼い犬が待ち切れずに、飼い主様の食卓に上がる光景はよく見るものだ。


「待て――!」


 ――しかし、こんな光景は見たことあるだろうか。


 俺の目の前には、滝の様に油を爛れさせたウサギ巨人の肉。

その肉厚が棒切れに串刺しにされて焚き火で焼かれている。


 ここまではいい。

実にサバイバルな感じで良い雰囲気だ。


「だから待て――!」

「ま、まだ駄目ですか!?」


 しかしこれがおかしい……。

四つん這いで肉に集る美少女を今まで見たことなんかない。


「生の肉は怖いんだ。食べて腹にあってもしらないからな」


 そもそもこの肉自体が食っても大丈夫な保証はない……。


 だらしなくヨダレを垂らした小動物――ではなく少女が泣きそうな目でこちらを見る。


「そんな目で俺を見ても駄目だ」

「は、早く食べたいです……」


 食欲と性欲だけに満ち溢れる少女。

そろそろ落ち着いても良い年頃ではないかと俺は深く思う。


 これでいて異世界の女神様なんだから――。

もちろん、女神らしいところは見た事もない。


 俺は呆れて溜め息しかでなかった。


「……よし、上手に――」

「はむっ!」


 あれだ。

狩人ハンターと呼ばれる人達が大型のモンスターを協力して狩る某ゲーム。

その肉を焼き上げる時のお決まりの決め台詞を途中で遮断された。


 どうやらカジキマグロ級の大物を釣り上げたらしい。

俺が肉を振り上げようとした瞬間に、少女がその肉に食らい付いていた。


 そして小さな口で噛みちぎり、「もぐもぐ」と言いながら咀嚼する。


 ――先に毒味しようと思ってたんだが……。


「……だ、大丈夫か?」

「ごくん……!」


 少女は飲み込む音だけを立たせ、しばらく目を閉じていた。


 ――気絶したか?

それとも吐きそうなのを堪えてるのか?


「む、無理に食わなくても良いんだぞ?」

「これは……」


 そう言いながらゆっくりと目を開いた少女はどこか遠い目をしていて――。


「……い、一年ぐらい洗ってない下着の味がします……」


 涙目で俺にそう言うのだ。


 「あぁ、食わなくて良かった」と同時に「飲み込まずに吐き出せよ!」と思う。


 というか、一年間洗ってない下着を食べた事あるのかお前は……。


 しかし、この少女であればあり得る話なので否定しきれない。


「……もういらないか?」


 流石にいらないだろ。

そう思っていたが、一応聞く。


 しかし、少女は首を横に振って俺に笑顔を向けていた。


「……私のワガママで採ってきて下さったのですから、最後まで食べさせて下さい」


 ほんと、少女は平気な顔をして言った。


 こんな物は食わなくていい――。


 俺のその言葉さえも封じ込める笑顔だった。


「……俺も食うか」


 なんか、俺に気を遣ってくれてるのが恥ずかしい。

そんな思いだけでその下着味の肉に食らいつく。


 度肝を抜くような酷い味を期待していた。


 ――普通に美味い……。


 下着や雑巾の味はせず、まさに鶏肉とかに近い味だ。

パリッと香ばしく焼けていて肉汁が絶妙な風味を醸し出している。


「おい、普通にうま――」


 そんな俺に拒絶(ドン引き)する目を向ける少女。

いや、一年間も下着洗わずにそれを食ったことある奴の方がドン引きだ。


 もしや、女神の味覚は人間の味覚とは違うのだろうか。

それとも、この少女が鶏肉が嫌いなのかもしれない……。


「……とにかく、これを食ったら向かう場所が――」


 少女にあのおっさんの事をどう説明しようか。

ふと、そんな疑問が過ぎった。


 優しい人――とは言い切れないが、力になってくれそうな予感はする。


 それに男と別れる前に地図を貰い、船に乗せてもらう約束をしたのだ。

簡素な紙一枚で、何やら書き殴られているが読めない事は――ない。


 その印された場所に日没までに行く。


 しかし、そんな「口約束だけしてきました。」という状況はサバイバルではタブーに値する行為。


 少女諸共罠にハマる可能性があるのだ。


 ――いや、相手は自分の武器を俺に与えたのだ。

これは信頼された証拠じゃないだろうか。


 俺が男の立場なら、信頼できない奴に武器なんて絶対に渡さない。


 それとも、俺がフリーターだからだろうか。

てか、本当にこの世界のフリーターの真意が気になる……。


「――あの、その前に……」


 少女は何か言い辛そうに言う。


 きっと、トイレか何かだろう。

乙女は何かと大変な物だ。


「あぁ、少しぐらいなら時間はあるぞ」

 

 時計――は無いが、まだ日没まではそう遠く無いだろう。


「す、少しで収まれば良いのですが……」


 もしや食った肉にでもあたったのだろうか。

俺はなんともないが、女神と人間の食はやはり違うのだろう。

 

 まぁ、出そうとしているならトコトン出してもらうしかない。

それが最もな対処法とも聞いたことがある。


「な、中で――良いですか?」

「うーん……まぁ良いよ」


 確かに外は恥かしいか。

あんなおっさん(危険人物)がフラフラといる世界だ。


 誰が見ているか分からない以上、少女の気持ちも分かる。

臭いが気になるがどうせこの小屋とはすぐにおさらばだ。


 持ち主には悪いが、少女の危機だと思って譲ってほしい。

俺はそう思いながら小屋の中へと進む少女の背を見つめていた。


「……こ、来ないのですか?」


 何を思ったのか、少女は振り返ると俺にそう一言――。


「そ、それぐらい一人でやれよ!」


 年頃の少女のトイレ姿を見せられる方の気持ちにもなってほしい物だ。

一部のマニアには受けるかもしれないが、人間の排泄シーンに興奮する思考は到底理解できそうにない。


「……そ、それは――新しい攻め(プレイ)でしょうか?」

「だからなんでやるやらないの話になるんだお前はっ!」


「……そ、その――やるやらないのお話し……です」

「は?」


 ……どうやら俺の検討違いらしい。

トイレではなかったようだ。


「……どうした。また発情しそうなのか?」

「い、いえ!……今回は貴方へのお礼をと……」


 ――そういえば、そんな事を出かける前に約束していたような。


 気持ちだけの言い文句かと思っていたが、どうやら有言実行タイプらしい。

そのトロリとまどろむ少女の視線に俺は思わず息を飲む。


 ――いや、正直もっと健全なお礼の仕方をして欲しい。

少女にとっては健全なのかもしれないが……。


 そんな真面目なことを考えていても、サイズの合っていない作業着から除く肌蹴た首筋や肩のライン。

艶やかな色を放つ胸元に目が泳いでしまう。


 脱童貞したばかりの俺も、味を占めて溺れかけているのかもしれない。

ただ、後悔するよりはいいのではないだろうか。


 こんないつ死ぬかもわからない変な異世界だ。

もしかすると、あそこでウサギ巨人にやられていたかもしれない。


 それに、少女がやりたいと言っているのなら男としては断れないものだ。


 食べかけの肉を地面に無造作に捨て、足で砂をかけて火を消す。

次に小屋の戸を閉めて、俺を見つめる少女に軽く口づけをする――。


 それは肉の油で塗れ異様に滑らか――。

いつもより気持ちのいい啜る音が鳴る。


「ん――」


 少女も元気が出たのか、声を上げながら念入りに舌を絡ませてくる。

相変わらず雑だが。


 そして、気づいたらそんな流れを実にスマートに行っていたのだ。


 童貞卒業から二回目。

少し慣れるのが早いか――。


 元々脱ぎかけではあったが、少女の着ている作業着を上半身だけ優しく脱がす。


 滑らかな白い肌に、しなやかな肉付きの体。

なにより、手前二つの大きな膨らみと曲線が俺の下心を瞬時に熱くした。


 一度見たはずなのに、こうも芸術的な物であると何度見ても興奮するものだ。

それに視覚だけの情報ではない、感触もとても素晴らしい物。


 おまけに少女は案外、優しめのゆっくりな攻めに弱いらしい。

前回は少し強くし過ぎたが、慣れた頃には――。


「だ、駄目です――」


 二つの膨らみに伸ばそうとした手を少女が拒否をした。


「ご、ごめん!……は、早すぎたか?」


 その珍しい反応にただ動揺するしかできない俺――。

いや、触っても良いという雰囲気だったから驚くしかない。


 ただ、女子というのはデリケートであると散々聞いたことがある。


 やはり、手順とムードは重要なのだろうか。


 そんな俺の動揺とは反して、少女は首を横に振る。


「い、いえ――私が……その、いってしまうと何処へ飛ぶか分かりませんので――」


 そういえばそうだ。

少女を開放してしまうと勝手に別の異世界へとランダムに飛ぶという仕様(バグ)なのだ。


「……なので、これからは私に任せてください!……下手くそですけど、頑張りますから……」


 ふわりと漂う甘い匂いに、体を伝う柔らかで滑らかな感触――。

宙を舞い、干し草の香りが背中から舞い上がった。


 少女は実にあざとい笑みを浮かべ、俺を干し草一杯の地面に押し倒したのだった。

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