突然の出来事
僕はあの日、目の前で事故を目撃してしまった。
夏休みになり、その事故は夏休みが終わる最後の週。
「ことね、早くしなさい。みどりくん来てるわよ。」
「え!?」
(階段を駆け下りる音)
「あっおはよ。みどりくん」
「おせーよ。」
よい天気の日、ことねとみどりは、二人で遊園地に行く約束をしていた。
母親にあいさつをすると出かけた。
夏休みも終わりに近づいてきた。
みどりはまだこの時はあの出来事がすぐそこまで来ていることを知らなかった。
二人は、駅へと向かった。
そのとき、後ろから自動車がブレーキとアクセルを間違え二人に突進してきた。
(車のぶつかる音)
周りにいた大人たちが二人のところに駆け寄ってきて、みどりの方は意識はあったが、ことねの方は意識がない状態であった。
みどりは足を引きずりながら、ことねの近くに。
「ことね、ことね、俺の声聞こえるか?おい!!」
(みどり泣き出す)
みどりはその場で泣き崩れてしまった。
しばらくして救急車が到着した。
救急隊員がまずはじめに急いでことねを運んだ。
そのあとに、みどりも一緒に病院についていくことに。
町中に救急車のサイレンが鳴り響いた。
一方、二人をひいた犯人は無事逮捕された。
自宅では、みどりとことねのことで電話をしているところだった。
電話を切ると二人の母親はパニックを起こしそれぞれの父親にも話をし、四人は病院に飛び込んだ。
息を切らしながら受付にいき、「私たちの娘や息子はどこに」とお姉さんに問いかけると、奥の部屋から医者が出てきた。
「赤間ことねさんのご両親と石間みどりさんのご両親ですね。こちらへ」
医者に案内されるととある部屋の前に止まった。
名前を見ると、二人の名前が書いてあった。
二組の両親は病室へ入るとまずはみどりの姿があった。
右足と右腕を骨折していて意識はある。
だが、みどりが左のほうに目を静かに顔を向け涙を流していた。
ことねの両親は恐る恐る隣のカーテンを開けてみた。
(カーテンをあける音)
両親は、目から涙を流した。
そこには変わり果てた娘の姿だった。
ことねの両親が泣いていると隣で寝ていたみどりも泣いていた。
頭にはぐるぐると包帯が巻きつかれ、頬にはガーゼが貼っており、今までは異常な状態であり、いつ亡くなってもおかしくない。
だが、両親はことねには死んでほしくないという理由から先生にお願いします。といった。
先生はがんばりますと答えた。
この日をさかいにことねは目を開くことはなかった。
みどりは無事退院し、夏休みが終わり学校に一人で登校した。
いつもならことねも一緒なのだが。
ことねの姿がなかった。
みどりが教室に入ると周りのクラスメートたちが近寄ってきた。
みどりはすぐに分かった。
どうしてみんなが近寄ってきたのか。
それはことねのことだった。
「おはよ。みどり」
「おう、おはよ」
声をかけてきたのは親友の柊かなと。
彼は静かにみどりに話しかけてきた。
彼は一応ことねの親友でもある。
「なぁみどり」
「なに?」
「あいつは?」
「ことねのこと?」
「そうことねちゃんのこと」
しばらく短い会話が続いた。
彼はみどりの顔と態度で何かあったことを感じた。
みどりの腕を掴むと屋上へ連れて行った。
ドアをあけ、近くのベンチに座らせ質問をした。
その質問にみどりは答えた。
あの時、何が起きたのかすべて何もかも。
何もかもすべて聞いたかなと。
彼は目から涙を流した。
みどりは彼が涙を流すのを見るのは久しぶりだった。
みどりは、かなとの顔を見た。
これほどの目を赤くした彼を見たのはあの日以来であった。
「みどり、どうして直ぐに連絡してくれなかったんだよ。」
「俺も骨折してて、かなとに連絡することが出来なかった。ごめん」
「そうだったのか、今日ことねちゃんに会いにいけるのか?」
「一応行けるけど、でもことねまだ目あけてないぞ?それでもいくのか?」
彼は静かにうなずいた。
そして二人は放課後、病院へ向かった。
みどりたちが通う学校から病院までは少し遠い。
電車に乗り、病院へ向かい到着した。
扉の前に立ち、彼は名前を見た。
そこには「赤間ことね様」と書いてあった。
彼は一呼吸おいてから病室へ入った。
扉をあけ、部屋に入り、そのまま進んだ。
ことねの姿を見て、目をそらした。
あまりのひどさに言葉を失った。
みどりは静かにかなとの肩に手をおいた。
肩に手をおくとかなとは目から涙を流した。
みどりがぽんぽんしているとそこにことねの両親がきた。
彼女が好きな花を持って病室へ入ってきた。
二人は両親に礼をすると向こうも同じように礼をした。
「はじめまして、柊かなとです。みどりとことねちゃんの友達です。」
「はじめまして、ことねの母と父です。いつもことねがお世話になってます。ごめんなさいね。こんなことになってしまって。」
「いいえ!大丈夫です。ですが、彼女が入院していると聞いたとき正直驚きました。」
「そうよね。来てくれてありがとう。柊くん」
しばらくして両親は自宅に帰った。
そのあと、みどりはかなとに帰ると伝えると彼はまだ帰らないといった。
しかし明日は学校がある。
みどりはまた明日こようと言った。
かなとはうなずくと二人は病院を後にした。
帰り道、みどりはラインに一通きた。
相手は、ことねの兄。
ことねは二人の兄がいる。
名前はゆうやとなおや。
ラインがきたのはなおやの方だった。
内容はもちろん妹のことだった。
仕事が忙しくて病院に行けていないのだ。
「みどり、ことねの調子はどうだ?」
「はい・・・。まだ回復は見られません」
「そか・・・。ことねのことよろしくな」
「はい!わかりました!」
ことねが目を開かないまま一週間が経とうとしている。
いつになったら、いつになったら、開いてくれるのだろうか。
みどりはそんなことを考えながら家へ帰った。
部屋に戻ったあとも二時間ほど考えていた。
彼女が元気になったらなにをしてあげよう。
逆に何をしたいかな・・・。
そんなことばかり考えてしまう。
医者にはいつ開くか分からないといわれている。
みどりは、事故があった日のことをもう一度確認してみた。
あの日、二人は遊園地へ向かっていた。
だが、後ろから自動車が二人にめがけてつっこんできた。
みどりは道路側、ことねが内側を歩いてた。
自動車が二人を飛ばした後自動車は数メートル逃げた。
がその近くにいた警察に身柄を確保された。
みどりは目に焼きついたことねの姿はずっと忘れない。
ある日突然起きた事件は明るい二人を暗くさせてしまった。
思い出すたびに目に浮かぶ。
みどりも驚いたし両親も驚いた。
考えずにみどりは今日は早く寝てまた明日、かなとと一緒に病院へ行こうと思った。
行ったとしても彼女は目を開けてはいないけど、顔を見に行くだけでもいいからとにかく行きたいと思った。
かなともみどりと同じことを考えていた。
今も彼とラインで会話をしている。
もちろん内容はことねのこと。
彼も相当心配していた。
事故があった日、かなとは他の子と遊んでいた。
二人が遊園地に行くことは知っていた。
その日もみどりと会話をしていたのだが、途中で途切れた。
途切れた瞬間事件は起きた。
夜の二十四時を過ぎようとしていた。
「そろそろ寝よう。また起きたらラインすればいいや」
みどりはそんなこと言いながら深い眠りについた。
その頃、かなとも深い眠りについた。