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今日から学校と仕事、始まります。①莞

守り勝つ野球

作者: 孤独

某プロ野球チームのミーディング。


「えー、昨年の我がチームはリーグ最多失点、最低防御率、最多失策という不名誉三冠王を記録した。これを踏まえて今季は守り勝つ野球を提唱する」


このチームは昨年、4位とBクラス入り。打撃自慢の選手が揃っている反面、守備や投手力では非常に不快な成績を収めていた。


「キャッチャー、河合。ファースト、嵐出琉ランデル。サード、尾波。センター、友田。セカンド、新藤。お前等、五人は覚悟しろ!」

「ええぇー」

「それはちょっとないっすよ!」

「五月蝿い!貴様等、打撃は4番クラスのくせに守備面で不安がありすぎる!今季は定位置がないと思え!以上!」



問題の選手である五人。

キャッチャーのベストナインにも選ばれた河合は、本塁打王、打点王の2冠に耀くチームの大砲であり4番。反面、リード面やキャッチング、態度に難あり。送球だけは荒れるが速い。

大型外国人。ファースト。嵐出琉。登録名を漢字にし、日本に馴染んでいることをアピール。通常の守備面は特に問題ないが、ピンチでのエラーが目立つ。しかし、チャンスには滅法強い5番打者。

サード、尾波。一度はトレードで退団するも、今年のトレードでチームが取り返す。昨年からブレイクし、どんな状況にも応じる打撃が魅力。反面、どんな状況でもクソな守備をする。自称、サードとファースト、レフトは任せろ。(守れるとは言ってない)

セカンド、新藤。内野陣のリーダー兼選手会長キャプテン兼、古傷持ち。エラーこそ少ないが守備範囲がとても狭く、送球もあまり上手くない。身体も弱い。単打長打、引っ張り、右打ちの打ち分け。バントからエンドラン、バスター。殊勲打からチャンスメイクまで可能な3番打者。

センター、友田。やる気がない俊足2年目センター。チーム最速の足を持つが、疲れるのが嫌いなのでボールをあまり追わない。スイッチヒッターかつ1番打者であるが、走りたくないので先頭打者ホームランも打つ畜生。盗塁はチーム最多(14)かつ成功率100%。




打線はリーグ最強である。同時に守備はリーグ最弱。

特訓をしても直らないような始末なため、首脳陣が5人を根本から改革しようと争いを起こしたのであった。競争をより白熱させ、一歩前に出てくれる選手達を望んだ。春季キャンプを経て昨年より守備が良くなった。



「では、発表する!まず、サードは嵐出琉!ファーストは新藤!センターは友田!この3人は今日のスタメンだ!」

「はあぁっ!?なんで俺を外すんだテメェ!?あー?ぶっ飛ばされてねぇのか!?俺はホームランキングだぞ!?」

「黙れ!お前を嫌っているピッチャーも監督もコーチも沢山いるんだよ!打てるがなんちゃって捕手め!」

「俺を干すってのか!?分かった、FAを取得したら速攻使ってやるよ!」



オープン戦、初戦から首脳陣と抗争を起こす河合。捕手としては非常に未熟である。大砲捕手という名は日本中の期待であるが、監督達から言わせれば捕手というポジションにいるだけに過ぎない男だ。



「いやー。なんで俺、戻されたんだろうか?」


スタメンから外された尾波。

嵐出琉が地味にサードの守備がよく。古傷持ちの新藤にとっては丁度良い、ファースト。センターが友田だとレフトとライトには守備ができる奴を置くという理由で、尾波もベンチスタート。昨年のトレードでは居場所がなかったという理由で出されたのである。



「そして、セカンドは旗野上。ショートは我がチーム唯一のゴールデングラブ賞、林を起用!捕手は即戦力ドラフト1位、福岡だ!さぁ!新生チームの守り勝つ野球をみせるぞ!」



こうして始まるオープン戦。

守備を第一に考えた我がチームは確かに去年よりも、なかなかいける守備であった。格段に減ったエラー数と失点。キャンプの成果は確かに現れていた。



「よーし!理想的な野球!いや、理想通りの野球だ!」



しかし、その理想の野球を続けていても。なぜか不思議なことに勝てない。それも僅差の勝負で敗れていく。


「ぐあー!また負けたー!」

「今日は珍しくノーエラーだったというのになぜ勝てないのか?」



疑問を感じる者はそう多くなかった。むしろ、選手とファンの間では正解を訴えていた。特に干されていた河合が切り込み隊長となって訴える。



「当たり前だ!試合終盤の代打で俺や尾波が出て、ほぼそのまま守備に付いて。内野に旗野上と林さんが抜ければボロボロな守備になるわ!!」

「大ベテラン外野手の木野内さんが、7年ぶりにショートをするとか信じられん」

「ひ、ひーーっ。た、確かにそうかもしれないが、仕方ないだろ!ショートを守れる人ってそんなにいないし、守備がまともにできるのって旗野上と林、福岡しかいないんだから!」

「こーゆう時は若手でも使えー!有望なショートは育ててこそだろうが!30過ぎのおっさん達にやらせんな!」



一番の敗因はそれであるが、まだ他にも色々とあった。三流捕手であるが、野球の目はそれなりにある河合はキレながらさらなる指摘を監督に伝える。


「コンバートの件でもそうだが、嵐出琉はファーストの方が守備範囲は広い!あと、ショートの林さんはな!安定した捕球と送球を持っているだけで、決して守備範囲が広いわけじゃねぇーんだ!連携も得意じゃない!サード向きだ!打者ではほぼ自動アウトの旗野上をスタメンにするな!新藤はどこ守っても守備範囲が狭いんだから、セカンドもファーストも変わらねぇよ!エラーが少ないんじゃない!全体的に守備範囲が狭くなったんだ!」



守備を提唱している監督を相手にほとんど守備の指摘をつける河合。さすが、嫌な奴。ドンドン周囲から冷たく扱われていく。


「つーか、負けてる試合はぜーんぶ!点がとれてねぇんだよ!俺と尾波が2打席しか立てないんじゃ、ロクに点もとれねぇよ!」

「代打で打てないお前のせいだ!!河合!!」

「あーっ!?スタメンマスクを被らせろ!ホームランを2本くらい打ってやるよ!」



揉めて揉めて、大乱闘に発展する始末。

果たして、このチームワークがまるでないチームに守り勝つ野球はできるのだろうか?



「あー、だるぅ。俺、帰っていいっすか?河合さんの話、長いっす」

「友田!テメェの怠慢守備をベンチで見てるといらつく!態度うぜぇ!」



ミーティング中にアクビをしながら、携帯ゲームを始める友田。本気でやる気のない男であるが、この試合唯一の打点を挙げており、あまり怠慢なプレイを指摘されない。今日は面倒なので、ソロホームランを2本放った。


「オー、マタ次回デース。ガンバリマショー。ゲンキゲンキー」

「嵐出琉。次回もこのままでは負けてしまうよ。守備をなんとかしないと」



嵐出琉は楽しそうにしている河合を見て、このチームは頑張れると思っている。目の前で喧嘩をしているとは分からなかった。日本語はそんなに上手くない。一方で、新藤はキャプテンなりにこの壊れそうなチーム状況を改善しようと頭を使うも、実際は馬鹿なので良い案が浮かばない。



「すまんが、ベテランの1人として一つ言って良いか?」



そんな中。意見を出したのはベテランかつ名手の1人、林。


「俺達には0点で守り勝つという野球は難しい。だが、10点を守り勝つ野球をすると考えたらどうだ?」

「?それは一体?」

「言葉通り、10点差がつくまで超攻撃重視の打線だよ。俺はスタメンじゃなくてもいいよ。もう歳だ」


彼の言葉をきっかけに、生まれた作戦はこうであった。



1番、友田。2番、尾波。3番、新藤。4番、河合。5番、嵐出琉。

打線が完全に線となり、相手チームにはとても気が抜けないものとなっている。5連打なんて当たり前のように飛び出て、2者連続ホームランも珍しくなかった。昨年よりもグレードアップしている。



「それって、去年の5点差つけて守り勝つ野球と変わりねぇじゃん!?尾波の打順が変わっただけ!」

「じゃあ、初回から10点差つけて相手の戦意を折ろう作戦で!」

「名前変えてもやってることが変わっていない!?」



10点差つけて相手の戦意を折ろう作戦。不思議なことなのか、それとも当たり前なのか。次々と敵の戦意を折る攻撃的かつ守備的な野球によってチームは連勝街道に突入したのである。打線は昨年以上に機能している。


「あー、中継ぎの吉沢!これで7連投目だー!見るからにキツそうな表情だ!!」



代償に投手陣がこの酷すぎる守備に連投が増えていき、夏場には失速を始めた。


「10点とっても、15点取られちゃ意味ねぇよ」

「じゃあ、来季は20点取る打線になろう。20点を守り勝つ野球だ」

「言ってるだけで変わらねぇな」


何事も言い方次第だった。


パワ○ロで彼等を作りペナントで遊んでいますが、CPUはどうして河合、尾波、嵐出琉を外すのだろうか?

昨年、3人で300打点を挙げているのに……設定が上手くいかない。


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