9話
サ―――― サ―――― サ――――
川原に着いた麗香は、心地よい水の音に耳をすましていた。
だんだん、太陽の光の暖たかさが麗香の眠気をおそい、ごろんっと川原の芝生のに寝そベった。
ぽけーっと空を見ていると、ブワッと風が強くなり、桜の花びらが麗香の目の前を通っていった。
「……きれい。」
そう麗香がつぶやくと、どこかから、人の声のようなものが聞こえてきた。
「おばあさん、大丈夫ですか? よかったら、お荷物お持ちしますよ。」
「すまないねぇ。」
「いえいえ。」
「もうこれだから、年を取るのは嫌だねぇ。」
ふと目をやると、あのスーパーマーケットで見かけた少年が、おばあさんに声をかけていた。
同じ人物のはずなのに、麗香は別人のように見えてならなかった。
「気をつけてくださいね。でないと、また転びますよ。」
少年は、おばあさんに優しく声をかける。
「ありがとうねぇ。」
おばあさんは、にこにこしていた。
これを見た麗香は、
(やっぱり、昨日のことがあったから、気を張りすぎていただけなんだ。あの人は、優しい人なんだよ。安易に人を疑っちゃダメなのに!! もうこんなことがないようにしなくちゃ!)
と思った。
ニ人が去っていくと、麗香は再びぼけーっと空を眺めた。
(この川原は落ちつく……)
そう思いながら、心地良い眠気にさそわれて、ウトウトしていたときだった。
「れーちゃん!?」
知っているような声が聞こえ、麗香はあわてて起き上がった。