7話
放課後、すぐに麗香は道路を歩き始めていた。
今日は、母から買い物を頼まれていたため早めに学校を出たのだった。
「えっと……人参、大根、鶏肉に、みそ。」
麗香が通っている中学から約五百メートルほど離れたところに、小さなスーパーマーケットがある。
今日は、母親が仕事の都合で帰りがいつもより遅くなるため、麗香が買い物に行くことになっている。
こういうことはよくあるため、そのスーパーの店長さんとも顔なじみである。
――ガラガラガラ
扉を開けるといつもの店長が、倉庫の近くに立っていた。
「こんにちは。」
「いらっしゃい。おや、麗香ちゃんじゃあないか。もう中学生になったんだなあ。どうりでわしも年とったわけだ。ハッハッハッ。」
「ごぶさたしております。」
麗香がそう返すと、店長のおじさんはまた笑った。
「はっはっはっ。麗香ちゃんはしっかりしてるなあ。わしは倉庫に行ってくるから、何かあれば呼んでくれ。」
そう言って、店長は倉庫の方へ入っていった。
「はい。」
(人参は、袋で買った方が安いかなぁ。大根は……この大根は、ちょっと形が悪いけど、調理すれば同じだもんね。だったら、こっちの形が良くない大根の方が安いから経済的にいいし、こっちにしよう。えっと、鶏肉、鶏肉……。)
鶏肉を見ようと思ったそのとき、ガラガラっと店の扉が開いた。
そして、帽子を深くかぶり、不思議な笑みを浮かベた少年が店内に入ってきた。
身長も低く、小柄な少年だった。
麗香がその少年を見ていると、すっと少年は麗番の目の前を通った。
麗香はなぜだか知らない少年に対し、複雑な感情を抱いた。
「……あっ。」
少年は、麗香の足元に小さく折り畳んだメモを落としていった。
「……あ、あのっ……。」
麗香は、少年に声をかけたが、少年はこちらを向くことさえなかった。
そして、少年は消しゴムを買い、店を出ていった。
麗香は、そのメモを拾いポケットに入れた。そして、麗香は鶏肉選びを再開した。
しかし、考えることは変わらなかった。
(――誰だったんだろう……。始めて会った人に、こんな感情を抱くなんて……。きっと、昨日のことで少し気を張りすぎていただけだよね……。)
そう思い、麗香は残りの鶏肉とみそをカゴに入れ、店長さんに一声かけてからレジへと向かった。
そして「また来ます。」と言い、スーパーマーケットを出た。
外の風は暖かった。
(まだ時間もあるし、久しぶりにあの川原に行ってみようかな……。)
そう考えた麗香は、川原ヘと向かうことにした。