1話
イラストを変えました!
四月――――
ピピピピピ チチチチチ
小鳥のさえずりの音が、辺りに響き渡る。その音で、一人の少女が目覚めた。
「う、う~ん。」
強い日光の光がまぶしく、少女はカーテンを閉めた。
今日も、一日が始まったのだ――――。
「いってきます。」
少女は、いつもどおり学校へ向かった。近々、起こることを全く知らずに。
そう、全く――――。
キーンコーンカーンコーン
「じゃあ~、駅前のドーナツショップ行かない?」
「いこ~、あき!」
「おい、祐也! 早くしろよ。」
一‐一の、放課後はいつもさわがしい。
「ふう。」
ため息をついたのは、『柳葉ちひろ』。美少女だ。しかも、勉強もスポーツもできるというのだからみんなの憧れのような存在である。だが、憧れでありすぎて、男子も女子も特定の人しか近づいては来ない。
ちひろが教室を出ようと思ったそのとき、
「わっ。」
「きゃあっ!」
「やっと、驚いたな。ちひろ。」
この少年は、『倉本蓮』。ちひろのおさななじみである。こっちも美少年で、同年代の女子だけでは無く近所のオバサンたちにまで、支持を受けている。
「倉本~ぉ! ちーちゃをイジめちゃだめだよっ。」
「別に、いじめてなんかねーし!」
この少女は『雪野葉月』というショートカットのボーイッシュガール。ちひろの一番の親友なのだ。葉月は、明るく元気な女の子なので、男女わず友達が多い。
「ちひろ、あのさぁ~、昼休みにどっかの学校の男子と女子が俺んとこに来て、俺とちひろにって。ほれっ。」
蓮がちひろに向かって、桃色の封筒を投げわたす。
「おっと。ありがと。」
「おう!」
綺麗な文字で、“柳葉ちひろ様”と書いてある。しかも、とても綺麗に飾られていて、どこかのパーティの招待状の様だ。蓮の封筒は水色で、これも同様に綺麗な文字と装飾品で飾られていた。
「あっ、ウチもそろそろ行くね~。バイバイちーちゃ、倉本ぉ( ´ ▽ ` )ノ」
葉月が、カバンを背負い、急いで教室を出て行った。
気が付けば、ちひろと蓮のほかにはあと二、三人しか残っていなかった。
ちひろは、さっき蓮にもらった封筒を開けて中身の便箋を読んだ。
「えっとぉ~、なになに……“突然すみません。本日、午後五時に奈月公園のタコの足のところへ来てください。”だって。なんか告白する前に出すloveレターに似てると思わない? ふふふっ。」
ちひろが笑いながら言うと、蓮が否定した。
「う~ん。それは違うと俺は思う。顔や、体つきが俺らと同じぐらいったから。」
が書いてあるし、俺は男から、お前のは女からもらったからな。第一、loveレター自体見たことな――――」
「じょ、冗談だって~。あはは~。で、その人たちってどんな人だった?分かんないと、探せないじゃん!タコの足って八つもあるし。」
そう言ったとたん、ちひろと蓮は笑いがこみ上げてきた。(どんなセレクトだよ…… タコの足って……)
笑いながら、蓮が言った。
「ぷっ。そういえば、うちの制服じゃあなかったな~。この辺りの中学の制服でもなかったし……。」
蓮が考え込む。
すると、ちひろがひらめいた。
「あっ、高校生――――とか。」
ちひろが言うと、蓮が否定した。
「ん~、もう!! なんで、あたしが言うこと全部否定するのぉ~!」
ちひろが、怒る。
蓮は、それを華麗に無視する。
そして蓮は、「こんな感じだったな」と黒板に書き始めた。
蓮は、すごくというわけではないが、絵がうまい。
すると、その絵を見たちひろが言った。
「お嬢様のような制服ね。どこかの私立中学なのかな?」
「そうかもしれないな。」
蓮がそういったとき、ちひろはふと時計を見つめた。四時四十八分を指していた。
「蓮! ここから奈月公園までって、何分かかる?」
ちひろがあわてた様子で蓮に尋ねた。
蓮は驚いた顔で、ちひろを見つめた。
「ん~っと、歩けば二十分、走れば十五分ってところだろうけど……それが、どうか――――」
「それじゃあ、やばいよ! あと十二分で、手紙に書いてあった五時になっちゃう!!」
蓮の言葉をちひろがさえぎる。
時計の針は四十九分を指そうとしていた。
蓮は一刻、ちひろの焦っている様子に戸惑っていたが、ちひろが言った“手紙に書いてあった五時”という言葉で、ちひろが示していたことがようやくはっきりした。
二人は走って教室を出た。