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純が抜かれる…その時

父誠登場!あのアル中の父が。奇跡は起きるか。

その時


『なんだそれは?

ちゃんと走れ!』


という叫び声が聞こえた。


健一は


『ひどいこと言う人だな』


と声の方を見た。


リレーゾーンの方からのような気がしたがよくわからなかった。


だが、純を見ると顔を上げている。


もう一度声がした。


『じゅん、何回言えば分かるんだ!

早く走ろうとしなきゃダメだろ!』


純は声の方をじっと見てる。


そしてつぶやいた。


『パパ…』


今度は大きな声で


『パパー!』


と叫んだ。

目にいっぱい涙を溜めて…。


パパ?といぶかる健一に向かって純が


『私、長野の八百屋の奥さんになるも嫌いじゃないよ!』


と叫んだ。

周りの歓声に消されないように…。


健一は立ちすくんだ。

顔はこの上なくにやけていたが。


その時、木崎の息子が純を追い抜いて行った。


にやけている健一を置きざりにして、純が走り出した。


早くはない、が間違いなく走ってる。

何かに突き動かされているかのように!


『パパ、パパ』


とうわごとのように繰り返しながら純が必死に走っている。

ありったけの力で。


健一は我に返って、純に追いつくと今度は


『がんばれじゅん、がんばれ!』


と声をかけ続けた。

応援席からはいつしか拍手が巻き起こっていた。

リレーゾーンでは純の父誠が、真由美に


『俺が走る』


と言うや真由美からアンカーのタスキを奪い取ると自分の胸にかけた。


『でもあなた…』


という真由美の背中を誠は、応援席の方へ押した。

ふらふらと応援席に入る真由美に小料理屋あかりの夫婦が寄ってきて


『ご主人は大丈夫でさあ。

ご主人はこの1ヶ月一滴もアルコールを飲んじゃいませんぜ。

じゅんに申し訳ない、じゅんに申し訳ないと言って、この体からアルコールを絞り出すんだと毎日、うちの店でジャージに着替えて、走ってんでさあ。

ご主人はきっと大丈夫!』


真由美は純を待つ誠の顔を見た。

遠い昔に誠の同じ顔を見たような気がしたが、いつのことかは思い出せなかった。


そんな光景を木崎の父はにこにこしながら見ていた。

誰が走ろうと関係ないさというように。

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