第十話「薔薇の小道で」
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薔薇が、また咲いていた。
一年が、巡っていた。
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ミナリアは、薔薇の小道にいた。
ハルヴィンが来た。
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「話があります」とハルヴィンは言った。
「聞きます」とミナリアは言った。
「正式に、申し込みたいのですが」とハルヴィンは言った。
「申し込みとは」
「結婚の申し込みです」とハルヴィンは言った。「不器用なので、直接言います。俺の妻になってください」
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ミナリアは、ハルヴィンを見た。
「不器用ですね」と言った。
「そう言われます」
「薔薇の一本も持ってこなかったんですか」とミナリアは言った。
「……忘れました」とハルヴィンは言った。
「薔薇の小道に立っているのに」
「気が動転していました」
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ミナリアは、小道の薔薇を一本、手折った。
ハルヴィンに渡した。
「どうぞ」と言った。
ハルヴィンは、薔薇を受け取った。
「……ありがとうございます」と言った。
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「はい」とミナリアは言った。
「はい?」
「返事です。はい、と言いました」
「聞き逃しました、もう一度」
「聞き逃していません」とミナリアは言った。「はい、です」
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ハルヴィンは、ミナリアを見た。
灰色の目が、静かに温かかった。
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「良かった」とハルヴィンは言った。
「良かったですね」とミナリアは言った。
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薔薇が、風に揺れた。
赤かった。
鮮やかだった。
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宮廷は、今日も動いていた。
噂があり、陰謀があり、華やかさと影が入り混じっていた。
しかし薔薇の小道には、二人がいた。
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それで、十分だった。
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(第十話 了)
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# 薔薇と剣と、あなたのこと――ある宮廷の恋、ハルヴィン卿とミナリアの場合 完
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