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なるほど課長  作者: MMPP.K


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案件5「最適化のその先」(最終話)

案件5「最適化のその先」

― 継続運用について ―

 

 あの日から。会議は、すべて滞りなく進むようになった。


 発言は整理され、判断は迅速になり、迷いは消えた。


 課長は、うなずくだけでいい。


「なるほど」


 その一言で、すべてが進む。


 会議が終わる。


 画面が光る。

「会議内容を要約します」


 本日の議題は三点。売上進捗の確認、改善施策の実行、次期計画の方向性。


 課題は二点。対応遅延と情報共有の不足。


 会議決定内容はすでに各担当へ共有済み。指示もすべて完了しています。


 本会議は事後報告として記録されました。


 会議時間:5分15秒

 前回よりも2秒短縮


「以上で、本会議は最適に終了しています」


 やがて。


 社内に、新たな通知が届いた。

「管理職アップデート Phase2 を開始します」


 画面が光る。

「最適化は、継続されます」


 一人の部下が、肩をすくめる。

「これ以上、何削るんですかね」


 別の部下が笑う。

「雑談とかですかね。もう無いですけど」


「そのうち、“お疲れさまです”も禁止になるかも」


「それ言う時間、0.3秒くらいありますしね」


 小さな笑いが起きる。


 課長は、その様子を見て、わずかに口を開く。

「いや、でも――」


 画面が光る。

「不要な前置きを検知しました」


 一瞬、間があく。


 誰かが、吹き出す。

「前置きって怒られるんですね」

「課長の“いや、でも”は高コストなんや」


 また、笑いが起きる。


 課長は、少しだけ困ったように笑う。


 そして、言い直す。

「……なるほど」


 画面が光る。

「承認を確認しました」


 別の日。


 会議が始まる。


 誰も迷わない。誰も言い淀まない。


 発言は短く、判断は速く、すべてが、少しずつ削ぎ落とされていく。


 課長は、いつものようにうなずく。

「なるほど」


 画面が、わずかに間を置いて光る。

「承認を確認しました」


 ほんのわずかに、以前よりも反応が早い。


 会議が終わる。


 画面が光る。

「会議時間:5分13秒

 前回よりも2秒短縮」


 誰も、それを気にしない。


 課長は、画面を見つめる。


 あの日、最初に通知を見たときのことを、ほんの一瞬だけ思い出す。

「……そこまで見るんか」


 画面が光る。

「発言を最適化しました」


 課長は、わずかに黙る。


 何も言わないほうが、早い。


 そのことを、もう理解している。


 それでも。


 ほんのわずかに。


 人間の癖のように。


 ゆっくりと、うなずいた。


「うむ」


 画面が光る。

「改善を確認しました」

 


あとがき


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


 この物語は、「効率」と「最適化」が進んだ先に、何が残るのかを少しだけ覗いてみた話です。

 無駄が削られ、言葉が削られ、やがて、人間らしさも削られていく。

 それでも、誰かがうなずくことで、物事は進んでいくのかもしれません。


 もし、この物語を読んで、少しでも何かを感じていただけたなら、それはきっと、まだ削られていない部分です。

 ……たぶん。

 大事にしてくださいね。


 さて、このあとがきは、適切だったでしょうか。


「……」

  画面が光る。


                               MMPP.K

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