第6話 Fクラスの日常
「なんだ、君たちは?」
「俺達は二年Bクラスだ。貴様は?」
「俺は、昨日から新しくこの学校に来た、ノア・クレイシスだ。よろしく」
俺は、すっと手を差し出した。ただ、仲良くしようと言いたいだけだった。
「......ふっ、ふははっ!」
...しかし、そうはいかなかった。
「そうか、貴様が新しいFクラスの担任か! いや、一度会ってみたいと思っていたんだよ!」
「俺もだ。これから、よろしーー」
パンッ
「えっ?」
「お前如きが、ガイルさんに触るんじゃねぇ!」
...その時、横にいた男が、俺の手を弾いたのだ。
思いもよらないことに、俺は少し動揺してしまった。
「さすが、いきなりFクラスを待たされるだけある。どんな奴かと思ったら、ちゃんとFにふさわしいマヌケ面だなぁ、おい」
「......は?」
意味がわからん。俺は今、煽られているのか? 挑発されているのか? 会ったこともない奴らに? 大体、なんでこいつらはタメ口なんだ?
そして、後ろの俺の生徒たちも、何も言わない。顔をうつ伏せたまま、立ち尽くしている。
俺は、まだ状況を理解できずにいる。
「まあいい。貴様には興味もない。どうせ、教えてもらう価値すらない。早くどけ」
「...なぜ?」
「それは、俺らがこれから授業だからだ。その前の自主練習のために、早くどけ」
「...本当に意味が分からない。君たちは何を言っているんだ? 別に、周りでやっておけばいいだろう」
すると、男は'ふっ'と笑いをこぼした。
その顔には、不気味な笑みを浮かべていた。
「貴様らはな、目障りなんだよ。クソ雑魚が練習中の視界に入ってくるなんて、不快で仕方がない。グラウンドで持久走でもしてればいいんじゃないか?」
その周りからも、大きな笑い声が聞こえてくる。
...俺は、一瞬なにかを思い出してしまった。思い出したくなんてない、あの時の光景を。
一瞬なぜか怒りが込み上げてきた。しかし、それを見せることはしない。
「それは、俺らがここから退く理由にはならないだろう。ここは訓練場、公共の場だ。大体、君たちがーー
「先生!」
リンが、後ろから突然俺の腕を掴む。
咄嗟に振り返ると、リンの様子が何かおかしいことに気づいた。
何かに、怯えてるような...
「もう、いい、です。早く、戻りましょう」
「いや、だってこいつらは...」
「早く戻りましょう!!」
「...えっ」
その声は、なぜか震えていて。
その目は、なぜか焦点が合っていないようで。
さすがの俺でも、なんとなく分かった。
「やはり、貴様は物分かりがいいな。分かったら早くどけ。それともなんだ、次はその"せんせー!"とやらと一緒に俺らとやるか? 勝てるもんならな」
その自信に満ち溢れた顔に、腹が立つ。
「...いや、それはやめておこう。君たちが恥をかくのは、かわいそうだからな。では」
「てんめっ」
「ふっ、まあ良い。俺は貴様の遠吠えに構ってあげられるほど暇ではない。早くどけ」
「...あと、敬語を忘れるなよ!」
去り際、顔は見えなかったけど、やっぱり不気味な笑みだったと思う。
それよりも、俺は自分の教え子と、向き合わなければならない。
安心できるように、頭にポンポンと手を乗せていた。セクハラとかは...あんまり、考えていなかった。




