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パーティーを追放された俺は勇者学院の教師になったのだが、教え子達が一向に俺を離そうとしない件  作者: しに


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第5話 実力②

「でも、その答えは悪くないぞ。さすがハイナだな」


「...ふっ」


 そんな俺の言葉に、ハイナは鼻で笑いながらも自分の訓練を始めた。


「ハイナは、まあ色々言いたいことはあったけど、後でだ。次、ルイ」


「やっとボクか。はいよっ」


「そういえば、ルイも剣士だったな」


「そういえばって、ちょっとひどくない?」


 その顔は、ずっとニヤニヤしつつもこちらを見ている。


 何考えてんのかが全くわからん。思考を読み取らせないみたいな意図でもあるのか、それともいつもこんな表情をしているのか。


「ほれ、じゃあルイも木刀を持て」


 木刀を手に取ると、ルイは早速構えた。


「ルールは、さっき聞いてたよな」


「うん。早くやろっ」


「そう焦るなよ」


 それでも、ルイは俺を急かすように小刻みにステップする。それとも、煽っているのか。


 見た目的には、パワーはなさそう。その分、構えが軽い。ここはスピード勝負になりそうだ。


「それじゃ。...よーい、始めっ!」


 ――瞬間、風が俺に吹きつけた。


「うわっ?!」


 途端に俺の視界から消えたと思えば、横から大きな違和感を感じる。


 それを、なんとか剣で()なせたものの...速い。初動の速度が尋常ではない。

 油断していたせいで、本気で当てられるところだった。


「はっ...はっ!」


 ...でも、素でこんな速度が出るものだろうか。

 見た目で判断するのは良くないけど、魔術なしでこんなに速いってのは、どうなんだ?


「ちょちょちょ、ちょっと待って」


 その声に、ルイは一時動きを止める。


「どしたの、先生?」


「俺のルールは聞いてたよな、魔術禁止ってやつ」


「?? もちろん」


 首を大きく傾げながらも答えた。さも当然のことのように。


「本当に魔術を使ってないのか? 生徒を疑うようなことは嫌だけどさ、リンと比べてもさすがに速すぎる気がするんだけど...」


「速すぎ? まあ、確かにリンちゃんのあとで見ると速く見えるかもしれないけど。でも、ボク魔術なんて使ってないよ。それにね、リンちゃんは剣士なのに、支援魔術の適性が高いんだよ。だから、支援魔術を使わないリンちゃんは、正直あんまり強くないし」


「まあ、使ってないんならいいが...。でも、お前が支援魔術を使ったら、もっと強いんじゃないか?」


 そう言うと、ルイは大きくため息をつきつつ、肩を落として答えた。


「ボク、魔術の適性がとんでもなく低いんだよ。それで、体に魔素が馴染まないし、全然支援魔術が効かない。だからね、その分速くなって、魔術を使った奴にも負けないくらいになれるまで、頑張ってるんだ。リンにはまだ負けないよー」


 その顔は、もうニヤニヤしてはいないけど...ふっと笑いつつも、なんとも暗い顔してる。


 正直、驚きだ。魔術無しで、これほどの速さを出せる。それは、ただの努力じゃ辿り着けない。素の俺にも引けを取らないんじゃないか?


 とんでもない逸材が、こんなところに隠れていたとは。


「そうか。悪かったな、魔術使ったなんて言って」


「いいよ、ボク、別に気にしてないし。それよりもさ、早く続きやろうっ」


「分かった。それじゃ、こいっ」


「はっ!」


 さすがだ。初速だけじゃない。この速度を常に保っているせいで、手数で押されている。

 まあ、でも...


「お前、速さに頼って色々サボったろ」


「ゔっ...」


 こいつの一瞬動きが止まった。


 リンよりかは筋がしっかりしてはいるが、それでも全く足りない。要するに、速さにあぐらをかいていたってとこだろう。


 速さのままぶん回してるって感じがするし...実際、この様子だと腕がキツくなってきてるんだろ。


「まあ、速いのはいいけど......よっ」


 ーーカランカランッ


「うがっ...!」


 軽く添えるように当てるだけで、その速さのまま剣は吹っ飛んでいく。


「手首の返しが緩すぎだ。こんな風に、すぐに吹っ飛ばされるぞ」


 これは、あれだ。鍛えがいがあるってやつだ、な。いや、楽しみだ!


「...なんで、ボクを見て笑ってるの? Sなの?」


「違うわ!」


 いったい何を言い出すんだよ...。


 両腕で自分を抱きしめながら、やはり意味深な顔でしりぞく。その目は、なぜか変態を見るような目で...


「いや、本当に違うから!」


 こいつは、後でちゃんと説得しておかないとな...。


 そんなやり取りをしていると、ラナは大きな足取りで俺の前に立った。


「や、やっと私の番ね。何をすればいいわけ?」


 ラナが、自ら名乗り出たのだ。彼女は攻撃魔術師。火力だけで言えば、全職の中でもトップ級である。


「あー、ラナか。そうだな」


 ...俺は、昨日この教室に来てから、ずっと考えていた。魔術を使ったラナに、どうやって教えようかと。


 勇者に一番大切なのは、その人の心だと勝手に思っている。

 だから、人相手に躊躇なく魔術を使うなんて、絶対にダメだ。と、教える方法をだ。

 人は、簡単には信念を曲げないからな。


 そして、今決めた。


「お前は、ーーこれから一週間、魔術を使うことを禁じる」


 大体、反応は想像がついていた。ラナは、俺の顔をポカーンと見つめる。


「...ち、ちょっと、冗談、よね? 私にも、みんなみたいに、色々教えてくれるんでしょ?」


「だから、お前は魔術禁止だって」


「......なっ、なんで...なんでぇーーーーっ」


 いまだに誰もいない訓練場には、ラナの声がよく響いた。


「ラナ、お前昨日俺に魔術を使ったよな?」


「何よ、その仕返しとでも言いたいわけ?」


「違うよ。いやまあそれも無くはないけど...ラナに必要なものは、それ以前のものだと気づいた。勇者としての"心"が感じられない。だから、お前は魔術禁止だ!」


「心って何? ふざけてんの?」


 すっごい睨まれてる。「私だって、みんなみたいに教えて欲しいもん!」とでも言いたいのだろうが、そうもいかない。


 ただ、正直禁止にしただけじゃラナの心を変えることはできない。まあ、それはこれから考えればいいだろう。


「それに、お前の魔術は昨日見た。大体は問題も見えたし、それで十分だろ」


「十分って、授業でも魔術が使えないのよ? ふざけんじゃないわよ」


「あれぇ、昨日約束しなかったっけか。"一週間だけは、俺の言うことを聞く"と。ラナは嘘つきなのか?」


「なっ」


 すると、さらにムッとした顔になった。頬を膨らませて...なんかちょっとかわいいとか思ってしまった。


 ......いやいや、教え子にかわいいとか流石に御法度だろう。

 ここに来た俺は教師なんだ、その辺はわきまえないといけないよな。


「はいはい、ラナはこれで終わりなー。じゃあ、最後。エーレ」


「はっ、ひゃいっ」


 声が裏返って、エーレは顔を手で覆ってしまった。


 なんだか、エーレだけは他の生徒とは違うものを感じる。

 単純に性格がみんなと全然違うってのもあるけど、なんか変な感じ。俺の話に、毎回メモを取るところとか。


 ...まあ、その理由も名簿を見たらすぐに分かった。


「エーレは......無適性者(アンフィット)、か」


「・・・」


 無適性者。それは、検査で役職の適性が出なかった者の総称だ。なんだかかっこいいだろ?


 でも、それは無能の烙印だ。無適性だと、自分の道を選ぶのも歩むのもめっちゃ難しい。それは、勇者に向いていないという、通告でもあった。


「...べっ、別に、私には、無理して教えなくても、いいですよ。どうせ、何やっても、無駄ですから」


 俯いて、小さく言った。

 その言葉に、俺はやはり、ちょっと共感してしまう。


 だって、だって...


「エーレ、そんなことは絶対にない。だってーー」



「ーーおい、貴様ら。そこをどけ」


 その時、急に話しかけてきたのは、...上位クラスの、連中だった。

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