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パーティーを追放された俺は勇者学院の教師になったのだが、教え子達が一向に俺を離そうとしない件  作者: しに


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第4話 実力 ①

 次の日、俺はクラス全員を訓練場に集めた。


「ちょっとあんたね、流石に早すぎるんじゃないの? まだ朝の7時よ7時! 分かってんの?」


 当たり前だが、こんな朝早くに生徒はいない。ラナの声が、声が透き通るように場内に響いた。


「しょうがないだろ、だって訓練場は早いクラス勝ちって、お前らが言ったんだから。早くとっとかないと」


「そんなこと言ったって...上位クラスがきちゃったら、結局場所取られちゃうんだから」


「そっ、そうなのか?!」


 そんなルール、俺の時はなかったと思うんだが。


 それでは、いつまで経っても下位クラスは上位クラスに勝てないんじゃないか? 上層部の奴らは、本当にコイツらをFクラスから脱却させる気はあるのだろうか。


「それじゃ、早く始めないとな。では、まずはお前らの実力を見ることから。リン、こっちに来い!」


「私? まあ、いいけれど」


 リン、彼女は剣士を目指しているという。


 剣術は、俺の中でも得意分野の一つだ。それに、剣術は教えるのが簡単だ。

 見ればすぐに問題点がわかるからな。


「ほれっ」


 俺は、一本の木刀を放り投げた。


「何をすればいいの? 素振り、とかですか?」


「いや、違う。それを使って、俺に当ててみろ。一発でも当てられたら、この一週間でもう教えることはない」


「......はい? ごめんなさい、言っていることがよくわからないのだけれど」


「だから、俺に一回でもその剣を当てられたらーー」


「それが舐めてんのかって言ってるのよ!」


 驚くほど喧嘩腰だな。

 昨日ちょっと見た感じ、ラナは教師に対してはいっつもこんな感じらしい。反抗期かな?


「ラナ、今はお前の出る幕じゃないだろう。それに、別に舐めてなどいない。俺に当てるのがほぼ不可能なのは、当たり前だろ?」


「なっ...」


「いいわよ、ラナ。そこまで言われたらやってやろうじゃないかしら。Fクラスだからって、舐められちゃ困るわね」


「ちなみに、強化魔術はなしな」


「分かっています」


 リンは即座に戦闘態勢に入った。


 姿勢は自然体で安定を保ち、隙も少ない。構えは、まあいいだろう。

 そして、目もいい。相手に物怖じしない、威嚇的な目。私は引かないという意思の象徴でもある。


 そんな感じで観察していると、隣から開始の合図が出される。


「それではっ。はじめっ!」


「はっ!」


 ...おい、なんだこれ。


「はっ、せいっ!」


 手を抜いているのか? いや、目を見た感じそれはない。目だけは嘘をつけない、はず。


 重心ブレブレ、型も見たことがない、パワーがない、スピードがカス、肩上がりすぎ、次の攻撃が分かりやすい、そして突きの途中は、隙がありすぎてカウンターには対応できないだろう。


「おい、これが本気か?」


「はぁ、はぁ、はぁ...何です、喧嘩売ってるんですか」


「いや、まあ、うん。これはちょっと...」


 疲れた顔を見ると、まあ本気なんだろ。頑張ってるのはいいが、一年学院にいてこれは、流石にひどいな...。

 これが、Fクラスってわけか。


「ーー隙ありっ!」


「うわっ」


 急にリンが斬りかかってきた。


 これはちょっと...人の心とか、ないんかな? とか思いつつ、軽く避ける。


「なっ、なんで当たらないのっ...?」


「嘘、今のに反応なんて、できるはずが...」


「いや、バレバレだし」


 そう言って、剣を受け流してそのまま剣を奪った。


「きゃっ...」


「これで終わりだな。悪いが、ダメダメだ。改善点しかない。これから一週間、しごきまくってやる。じゃあ、次! ハイナ!」


「わかった」


 呆然としたリンを置いて、次はハイナが俺の前に立った。


 ハイナは支援魔術師志望。前の俺と同じ役職だけど、正直一番教えるのが難しい分野でもある。


 特に、調整がクソむずい。全体にバフをかける時なんて、神経がすり減らされてキツい。

 ただ、その分やりがいもあると思う。結構面白かったし。


「私は、何をすればいい?」


「そうだな...それじゃ、俺に身体強化魔術を付与してみてくれ。俺も支援魔術師の端くれだ、感覚でなんとなくわかる」


 そう言うと、周りの奴ら含め全員が目を丸くしてしまった。

 何か、変なこと言っただろうか? そんなことを思いつつ、とりあえず話を進めた。


「それじゃ、今からーー


「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ。あんた、今なんて言った? 自分が、支援魔術師だって? バカ言いなさいよ、あんたは剣士でしょうが。嘘つかないでもらえる?」


「はぇ?」


 ラナの思いもよらない言葉に、つい変な声が出てしまった。


 しかし、ラナはそれが当たり前であるかのような顔をしている。

 俺が剣士なんてやったら、きっと出過ぎてすぐに死んでしまうだろう。剣士としての立ち回りなんて、勉強したこともない。

 こいつは、何を言ってるんだ?


「いやいや、俺は支援魔術師だぞ?」


「嘘言いなさいよ! だって、さっきリンの剣を軽々しく避けてたじゃない! そんなの、同じ剣士にしかできないでしょ!」


「それくらい、別に剣士じゃなくたってできるさ」


「できるわけないでしょ!! 喧嘩売ってんの?!」


 どうやら、こいつらの常識では支援魔術師は動けないものだと思われてるらしい。


 学院では、一二年で満遍なくいろんな技術を学び、三年生からは専門役職についてのみ勉強する。そういう制度だ。

 だから、ちゃんと履修している筈なのだが。

 確かに、俺は三年からも幾度となく専門役職を変えてはいたが。


「じゃあ、これを見たら納得できる?」


 そう言ってポケットから取り出したのは、俺のパーティー時代の冒険者カードだ。パーティー欄は空白になり、個人情報と役職のみしか表示されていない。

 そこには、支援魔術師とはっきり刻印されている。


 それを前に差し出すと、リンの顔が一気に青ざめてゆく。


「これ、本物、なの?」


「あったりまえだ。偽造は犯罪だぞ!」


 生徒たちがわらわらとカードに集まる。こんなにじろじろと観察されると、なんだかこっぱずかしい気がしてならないが。


「.........うそーん......」


 これは...どう言う反応だ?


 みんな固まっちゃった。リンなんて、後ろですごい顔しながらなんかぶつぶつ呟いてるぞ。


「いいから、早くやろう。実践を意識してな」


「......わかった」


 そう言うと、ハイナはすぐに詠唱に取り掛かった。目を瞑り、手を差し出す。


接続(アクセス)- 界域画定(リアクター・セット)ーー『アクセラレート・レイ』」


 魔術というのは、簡単に言うと魔素を、化学反応させることだ。

 『アクセラレート・レイ』の魔導化学式はMaSl。SlセレニウムMaマナは結合しやすく、魔術の展開が速い。


 だんだんと、淡い光が俺を包んだ。


 ふむふむ。なんか、ハイナの魔術って感じだなぁ。うん。


 体は比較的軽いけど、ちょっと物足りない気もする...まあいつもは自分で魔術をかけてるし、比べちゃ悪いかな。


「ど、どう...」


「なかなか悪くはない。でも、すっごい教科書通りだな。それもハイナらしいが。...では、一つ問うとしよう。なぜ、三つの速度強化魔術の中で、『アクセラレート・レイ』を使った?」


 指を顎に当て、少し思案した。そして、何かを思いついたかのように話し始めた。


「...一番、展開が速いから」


「今、なんで即答せずに考えた? それは後付けの理由だろう」


「ゔっ」


「考えなしはよくないな。魔術ってのは、ほとんどが頭の中で完結する。だから、考えるのをやめちゃダメだ」


「うぅ...はい」


 俺に言われると、また顔が沈んでしまった。


 教えるのはやっぱりむずいっ。俺的には、みんな笑顔で授業を受けてもらえると嬉しいんだけど。

読んで頂き本当にありがとうございました。


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