第1話 勇者追放
「ノア・クレイシス。お前には、今日をもってこのパーティーをやめてもらう事になった」
「...は?」
それは、突然のことだった。
全ての志す者が阻まれるという屈指の階層ボスを倒し、人類史上最深の階層まで後一歩。そんなどんちゃん騒ぎだった日の夜、俺はレイに追放を言い渡された。
「お前みたいな奴はな、このパーティーに相応しくないんだよっ! 俺らから金だけをむしりとって来た傲慢男が!」
ザインが俺に向かって叫んでくる。
このパーティーは、とてつもないスピードで力を上げ、数十人パーティーでようやく到達したという霊大迷宮の人類最深98階層にたった五人で今にも追いつこうとしており、いつしか歴代最強の勇者パーティーと噂されるようになった。
高レベルダンジョンも数々踏破し、着実に全員のレベルも上がってきた。
「でもっ、お前ら俺に結構助けられてきただろ? なんでーー
「はぁぁ? 舐めてんじゃないわよ、ノア。私達があなたごときに助けられる? 冗談はよしなさいよね。見苦しいわよ?」
ニニアが、とてつもなく睨みを利かせ、口を挟んでくる。
「お前ら、だって俺の支援魔術がないとこれからの攻略は難しくなるだろ? そんな冗談を言ってる場合じゃないだろ!」
「それは全くもって問題ない」
「...どういうことだ?」
「これまで、俺らにはお前しか支援魔術師がいなかった。だから、仕方がなく雇っていた。だがな、今回新たに支援魔術師を雇うことになった。ーー入ってくれ」
ゆっくりとドアが開き、外から入ってきたのは麗しき一人の女性だった。
「紹介しよう! 今回新たに支援魔術師として私達のパーティーに加わることになった、アリアだ」
「ご紹介に預かりました、支援魔術師のアリア・アストリアと申します。四人方、これからよろしくお願い致します」
四人と周りの冒険者達から、大きな拍手と歓声が湧き上がる。
「彼女は、勇者学院を主席で合格し、最年少でS級へ昇格した現代最高の支援魔術師だ。お前みたいな能無しとは格が違う」
「能、無し...?」
「大体な、お前は俺らのレベルに合ってなさすぎたんだよ! 俺らと一緒に始めたのに、お前だけ実力の上がり方が異常に低かったよな。討伐にずっと貢献しないお前なんか、最初っから切り捨てるべきだった!!」
ザインは、あたかも当然のように話す。
「な、なんか勘違いしてないか? 元々俺は支援魔術師じゃないし、特に戦術とか、みんなの実力を上げるのに多く貢献してきたつもりだ。上がるのが遅いのだって、お前らのためにーー
「ぷっ、ぷははっ!! 勘違いしてるのはお前のほうだろ? お前らの為とか、調子のいいこと言ってんじゃねぇよ。クソ雑魚はな、いちいちキモい言い訳をするな!!」
ザインが、声高らかに笑いながら俺に言う。
「俺が、クソ雑魚......」
確かに、俺は魔術の効果を調整することも多かった。でも、それにはちゃんと理由があった。
俺は、お前らに本気で貢献してきたつもりなのだが。
なんで、そんなことを言われなければならない。
「分かっていないのか? 雑魚に雑魚と言って何がおかしい? お前みたいなクソ雑魚はな、いるだけで迷惑なんだよ。分かったら早く出て行ったらどうだ」
「...ふざけるな!」
どうして、どうしてだよ、お前らはそんな奴らじゃなかっただろ。
素直で、優しくて、楽しくて、かっこよくて。そんなお前らだったから、俺は、お前らの夢を一緒に叶えようと... なのに、どうして......
「お前、本当に自覚がないのか? この前の戦い、お前が弱かったせいでギリギリだった。対して、アリアはすごかった。本当に、世界が変わったと思ったんだ!」
ザインがみんなと相槌を打ちながら笑顔で話す。
この前ギリギリだったのは、俺が弱いからじゃない。みんなが、できるだけ実力をアップできるようにする為だ。
別に、俺一人だったらもっとずっと楽に倒せる。でも、それじゃ意味がない。俺は約束したんだ、"全員で"魔王を滅ぼすと。
全員が最適な動きをできるようにしたり、俺は"みんなが"強くなる道を、常に選んできた。
それに、一人の力ではクリアできないことは、目に見えていたから。
「それは、お前らのためを思って!」
「自分の弱さを俺らのせいにするな! そういうところも、本っ当に気に食わない! お前の声も、行動も、全部耳障りだ! 目障りだ! お前といると、吐き気がするんだよ!!」
その言葉に、俺は絶句した。
初めて、出したくても、声が、出なかった。
...そう、だよな。俺を追い出そうとしてる時点で、"全員で"なんて、もう誰も覚えちゃいないんだよな。
「同じく。ここからも、さっさと出ていってよね」
「これが、俺らの総意だ。消えろ」
「・・・」
ーープツンッと、何かが切れる音がした。
アリアは、後ろで不気味な笑みを浮かべている。
ここに、俺の居場所はもうない。そう、頭で、理解してしまったのだった。
「......分かった。それじゃあな、お前ら...」
「やっと、やっとだ! 邪魔者が、ようやくいなくなったぞ!!」
みんなでタッチを交わし、再び騒ぎだすのが後ろから聞こえる。
...本当に、これまでのことは、無意味だったんだな。みんなといれて楽しいと思っていたのは、俺だけ、だったんだな。
もう、呆れて何も考えられない。
最後に見た景色は、全員が嘲笑っている。今日も無言で、俺の前では一度たりと笑うことのなかったニコでさえ、少し、笑っている気がする。
ノアは、そんな奴らを背に、静かにギルドを後にしたのだった。
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