第7話:デコンパイルできない部品の再作成
午前10時、タカは地下のオフィスに着くと、軽く伸びをして深呼吸する。
今日はテスト自動化ソフトを使い、デコンパイルできない既存部品を一から作り直す作業が待っている。
シンの時代には直接触れていた部品だが、ソースコードは残っておらず、動作を完全に再現するしかない。
タカはデスクに座り、モニターのログを眺める。
「完全に同じ動作を再現できるはず…」
しかし、極稀にしか発生しないレアケースを思い出し、肩に力が入る。
「もし起きたら…原因特定に時間がかかるな」
独り言を呟きながら、注意点をメモに書き込む。
午前中はチームと分担して自動化ソフトの設定を進める。
部品を交換し、動作検証を繰り返すが、想定外の挙動が時折現れる。
「やっぱり、完全に同じにはならないか」
仲間と顔を見合わせ、苦笑する。
小さな失敗を見つけては元に戻し、再作成を繰り返す。
手順を文書化し、チームで共有することで再発時に対応できる体制を整える。
昼、タカはタクシーに乗る。手に持った紙コップのコーヒーを軽く傾ける。
運転手はいつも通り軽く笑いながら話しかける。
「今日は雨が降りそうですね」
「ええ、午後は降るみたいですね」
「最近、渋滞も増えてますよね」
「そうですね、どこ行っても人が多くて」
運転手はラジオに耳を傾け、タカはコーヒーをすすりながら、街の雑音に耳を傾ける。
仕事のことは一切話さず、ただ世間話だけが静かな時間を作る。
帰宅すると妻がリビングで笑顔を見せる。
「まだ作業中?」
「うん、部品を作り直してるんだ。完全再現は大変で」
「そんなことばかりしてないで、今日は晩ごはんくらいちゃんと食べなさいよ」
「安心して、ちゃんと君のおにぎりも持ってきた」
「ふーん、じゃあ夜食もちゃんと食べたの?」
「もちろん、君の作ったサンドイッチも確保済み」
「それならいいけど、でも塩分控えめにね」
二人で笑い合い、日常の安心感を少し取り戻す。
午後、オフィスに戻り、テスト自動化ソフトで再作成した部品の最終チェックを行う。
極稀のレアケースを再現し、原因を特定して修正を加える作業は手間がかかる。
「既存部品を作り直すって、本当に大変だな」
仲間の一人が苦笑し、タカも肩の力を抜く。
文書化とチームでの共有により、再発時にも対処できる体制を確認しながら作業を進める。
夕方、タカは7階の会議室でチームと進捗を確認する。
「今日はここまでにしましょう。細かい問題は明日まとめて対策します」
窓の外に広がる街の灯が、静かに瞬き、タカの心を落ち着かせる。
完全な再現は難しいが、チームの協力で少しずつ安定した状態に近づいていることを実感する。




