第11話:非常訓練とバックアップ確認
午前8時、タカは地下オフィスの扉を開けると、薄暗い照明と静かな空気に包まれた空間を見渡した。今日は年に一度の非常訓練の日。UPS(無停電電源装置)への切り替えとバックアップデータからのリカバリが正常に行えるかを点検する、大切な日だ。
「今日は、エレベーターは使いません」
タカはチームに向かって声を張る。皆がヘルメットを手に取り頷く。階段を駆け下り、地下フロアへ向かうのは少し息が上がるが、それぞれが緊張と責任感を胸に進む。階段の手すりを握り、慎重に足を運ぶ。タカはフロアごとに、順番に社員の安否を確認しながら進む。
「慌てず、順番に。余震や転倒に注意して」
フロアの明かりに社員の顔が映り、互いに目を合わせながら安心させるような微笑みを交わす。
地下に到着すると、UPSへの切り替えとバックアップリカバリの手順を順に確認する。コンピュータの画面を見つめ、タカは慎重にチェックを進める。万が一手順を間違えれば致命的になるが、手際よく進み、全てが正常に完了したことを確認する。
「リカバリ完了、問題なし」
小さな達成感が胸に広がる。チームも安堵し、わずかに笑い合った。
訓練が終わると、タカは階段を上り、オフィスフロアに戻る。ヘルメットを外し、汗を拭いながら息を整える。7階の社員が冗談交じりに声をかける。
「もう少し早くならないか?」
「安全確認は最小限ですよ?」
タカが返すと、オフィス内に笑い声が広がる。
夜、タクシーで帰宅する。街灯に照らされる通りを見つめながら、運転手と世間話を交わす。経済状況やニュースの話題に触れ、少し肩の力を抜く。紙コップのコーヒーを傾け、訓練の達成感をゆっくり味わう。
自宅に着くと、妻が笑顔で迎える。
「夜ご飯、何か食べたの?」
「今日は軽く済ませたから、味噌汁を出してくれる?」
「じゃあ待ってて。温めるわ」
「ありがとう、これで十分だ」
「コーヒーも飲み過ぎないでね」
二人で軽く笑い、タカは一日の緊張から完全に解放される。安堵と達成感を胸に、就寝の準備を進めた。




