2話:この世界について 地図あり
「起きていらしたのですね!」
俺がこの世界で空を飛ぶ夢をかなえられることに胸を躍らせていたらいつの間にかメイドのサラが部屋に入ってきていた。
「丘の上で気を失っていたのでびっくりしましたよ!もうお加減は大丈夫ですか?」
そういって心配そうな顔で近づいてくる。
「うん、もう大丈夫そう」
「それは良かったです!」心配そうな顔が安心したものになる。
「でもまだどこか悪いかもしれませんから今日は安静にしておいてくださいね」
そう有無を言わさぬ笑顔でこちらを見てくる。
このサラは俺の二つ上の8歳のメイドで俺が3歳のころから付き添いとして一緒にいる、気心の知れた相手だ。金髪碧眼で見た目はかなり可愛く、将来が楽しみである。性格はしっかり者で頼りになるが俺のこととなると少しどこか怖い雰囲気を出すほどこだわる子だ。
「わかった」
逆らうと怖い笑顔でお説教されそうだしこの世界のことについて考えたいから素直に了承した。
「あれ、てっきりいつもみたいに外に遊びに行きたいとか飛空艇の工房に行きたいと言い出すと思っていましたが、今日はなんだか素直ですねシエル様もしかしてまだどこか調子が悪いのですか?」
とまた心配そうな顔に戻る。
「いや、ほんとに大丈夫だよ。いつもわがままばっかり言って迷惑かけてるからたまには言うこと聞いとこうと思っただけ」とはぐらかす
「ふふ、迷惑だなんて思ってませんよ。では私はほかのお仕事をしに行きますので何かありましたらお呼びくださいね」
そういってサラは部屋の外に出ていく。うまくはぐらかすことができたようだ。
さて、一人になれたしいろいろ考えてみるか。まずこの体のシエルについてだ。部屋にある鏡で自分を見るとそこには黒髪黒目の子供が写っていた。容姿としては整ってはいるが平凡な子供といえるだろう。これからに期待だ。
ちなみにこの世界の髪色は様々で金髪から赤髪、青髪もちろん黒髪もいてどの色もそこまで珍しいということはない。しかし目の色に関しては碧眼などのほうが一般的で、黒目はいないことはないがかなり珍しい部類に入る。といってもそれが理由で迫害されたりなどはないのでそこは安心できる。
次に家での立場としては兄が二人、姉が一人で末っ子ということもあって家族からは可愛がられている。我がアドラク家はかなり昔から飛行艇の開発、販売を行っている一族でそこそこ大きな財力を持った家である。三男だから家は継げないが将来は安泰だろう。
次にこの世界についてこの世界の呼び名はなどはないが、日本の感覚からすれば基本的には中世ヨーロッパで、魔法技術によって魔導銃や魔導列車、飛空艇などところどころ近世やそれ以上の文明にも達しているような世界でかなり戦争が絶えないならしい。
俺が今いる国はかなり前の大戦ででかくなった国の一つで、ホルス共和国という。この世界には珍しい共和制を敷いている国で(といっても貴族たちによる寡頭制だが)周りには、東に不毛な砂漠地帯を挟んでグリム帝国という巨大な帝国を、北には大ハべニアと呼ばれる元は一つの国だったが、今は3国の緩い共同体となっているハべニア王国と、アレクシア公国、ラグーン公国が、北西には昔の大戦時に小国が多かったこの辺りの小国が一つになってできたミスト連合国が、南西にはネウディア王国があり四方を国に囲まれた内陸国となっている。
ホルス共和国は飛空艇などの高い技術力を武器に前回の大戦時に大きく領土を拡大しておりその技術力は現在も健在で自国で作成した製品などを輸出している。特に魔導技術が高く、その軍事転用も盛んにおこなわれている。ここ30年近くはホルス共和国は戦争を行っていないが、最近ミスト連合国と緊張状態であり、近いうちに戦争になると噂されている。