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テーマ詩集:昆虫採集

はだかんぼの赤とんぼ

作者: 歌川 詩季

 夕焼け好きです。

 夕焼けを飛ぶ赤とんぼを あたしは見てた


 だけど あたしはあんたのこと

 この夕焼けのしたでしか見てなくて

 赤く染まったそのからだは

 もとから赤いのに 夕焼けの赤を重ね着したのか

 もとはちがう色に 夕焼けの赤を上塗りしたのか

 そこんとこ ちょっとわからないんだ


 まっぴるまのひまわりのよこを

 あんたが何色(なにいろ)で飛んでたのか

 見てなかったもんだからさ

 そいつをたしかめてやろうって

 夕焼けが ほてりをおさめるまで

 あたしまで ほほを赤くして待ってたんだけど

 沈みきるころには 宵闇(よいやみ)に染まってて

 あんたのもとの色をたしかめるまえに

 そのすがたは黒く溶けていった



 あぁ ちくしょう

 これじゃあ もしあした

 まっぴるまのひまわりのよこを

 あんたが飛んでるのを見たって

 もとが何色(なにいろ)かわかんないあたしには

 あのとんぼがあんたかなんて わからないじゃないか


 あんただって

 グレイのスーツに 黒ストッキングで仕事モードの

 まっぴるまのあたしを見たってわかんないだろうから

 そこは それで おあいこかもしれないけど


 だったらいいや

 まっぴるまはおたがい 知らない顔どうしでも

 あんたが夕焼けを飛ぶときだけは

 こうして みじかい逢瀬(おうせ)を楽しめる

 あたしだって 私服で街を歩いてて

 仕事関係の人間にきづかれないこと わりとある


 だから いいんだってば

 まっぴるまはおたがい 知らない顔どうしの

 夕焼けのしたで みじかい逢瀬(おうせ)


 あんたがほんとは何色(なにいろ)なのかなんて

 あたしはちっともかまいやしないし

 その色があってこそ この夕焼けの赤を

 重ね着だか 上塗りだかしたあんたの赤は

 こんなに素敵な赤なんだから



 夕焼けの赤をひっぺがした はだかんぼの赤とんぼ


 興味がないわけじゃないけど

 知らなくちゃいけないってわけでもないし

 興味があるからこそ

 知らなくていいままのものもある


 はだかんぼの赤とんぼ



 あんたは あたしのスーツ姿に興味はないのかしら?

 私服だと気づかない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夕焼け、私も好きです。燃えるような朱。 いつも見せているONの自分と、皆は気付かないOFFの自分。 どちらも知ってほしいのは、きっと相手が気になる存在だから。 色がわからなければもし逢えたと…
[良い点]  はだかんぼの赤とんぼ、語呂がいいですね。  赤とんぼが飛びだすと秋の気配を感じます。    短い逢瀬だからこそ楽しいのかも。 [一言]  確かにいつも制服やスーツ姿の方が私服だと、その…
[良い点]  はだかんぼ→赤とんぼ→夕焼け  この連想からこの詩になるのですかね…。  すごいなぁと思います。 [一言]  ちょっとドライでも気になる関係。  全部知ることがいいとは限りませんよね…
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