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40代から始める異世界RTA

作者: 吉都 五日

「貴方は神に選ばれました。なにとぞこの世界に平和をもたらしてください」


子供たちが見ていたアニメに出てきたような真っ白い部屋で、美人の若い娘さんがそんなことを言う。

えーとこれはつまりあれか。


「異世界…?」

「そうです。昨今の地球人は察しが良いですね。私の世界を…」

「いえ、結構です。私は家に妻と子供が待っています。5つ下の可愛い妻と3人の子供たちです。帰りたいのです。何年も知らない世界で暮らすなんて無理です」

「こちらにも若い女の子はたくさんいます。英雄になってハーレムを作るというのはどうですか?」


何をバカなことを。

そういうのはもっと若くてギラギラした子たちにさせるべきだ。

そこそこ人生に満足している40代を呼びつけて如何しようというのだ。

そもそも…


「もうアレの反応も悪くなってきています。時折尿漏れもするし、目も最近悪くなってきたと感じます。子供に付き合って少し運動をすると2日遅れで筋肉痛になるし、お腹の脂肪もなかなか減りません。失礼ですが人選を間違えています。5年くらいしたら息子を呼んでやってくれれば喜ぶかと思いますが…」


3人の子供の真ん中、女男女と姉妹に囲まれた長男は今年小学校を卒業する。

高校生や大学生くらいの男の子を呼ぶべきだろう。そうすればハーレムに釣られもするし、おだてられればやる気にもなろうというもので…ああ、でも息子に危険な思いをさせるのは忍びないな…


「若返らせることも出来ますが」

「それは魅力的ですが、どちらでもよい事です。それに、急に若返ると帰った時に困ります」

「そうですか…ですがこのままでは帰れません。貴方はアチラで瀕死の重傷を負っています。魔力を得て、傷を治す術を覚えてからでなければ…それにどちらにしても、魔王を倒さないと元の世界には帰れないのです」

「なんてこった/(^o^)\」


大昔に使っていた頭の悪い顔文字が出て来るほどのなんてこったである。


「貴方を選んだ理由もあります。それは……という訳です」

「成程。受け賜りました。私が何としても攻略しましょう」


女神が言うには、この世界は俺が大昔にやり込んだゲームの世界だと。

子供が生まれる前、独身時代に必死になって毎日同じゲームを攻略した。


システムの穴を突き、最低レベルでクリアしたこともある。

出来るだけイベントをスキップ、レベル上げは最低限で通常戦闘は逃げまくり…様々な方法で最短時間でクリアした。

RTA(リアルタイムアタック)と呼ばれる短時間クリアの記録も作っていた。

最近その記録は破られたが…なんだ〇トのホットプレートって…


だが、私のやり込みを神が知っていて、そして俺を頼ったというのなら…俺は1人のゲーマーとして何としてもクリアしなければならない。


「では、逝ってまいります」

「何卒よろしくお願いします」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「坊や、起きて私のかわ…「起きた」」

「今日は「城に行くぞ」…はい」


母を引きずり、城へ。

若い体には体力がある。途中でおんぶして走っても平気だった。

王の話は長かったので「スキップ」の呪文を唱え、大臣から支度金とゴミ装備を受け取る。


酒場で戦士、僧侶、魔法使いを仲間にする。

薬草と翼をあるだけ買い込み、塔に昇ってカギを受け取り魔法のタマタマをゲットして扉へGO


ゲームならここまで20分もかからずに来れるはずだが、さすがに現実だと時間がかかる。

仲間を殺さないように加減してレベル上げながらの攻略だからな。仕方ない。


「おい、こんなにきついとは聞いてないぞ」

「俺もだ。もうこんなつらいパーティーに居られない」

「儂はもうジジイじゃぞ…」

「俺は…そうだな、あと20日ほどで世界を救って見せる。そうすれば酒池肉林、金もいくらでも手に入る。そのくらい辛抱しろ」

「20日で世界を…?」「カネ!?」「酒!金!」


まさに現金な奴らだ。

明日は魔法のカギを…いや、塔で半裸男と戦わなければならない方のバージョンかもしれん。旧式は半裸男をスキップできるのだが…どちらか確認しておけばよかったな


翌日、ピラミッドを盗掘してカギを入手。王に手紙を書かせ、おっさんにトンネルをウホらせた。

たったこれだけの事しかしていないのに1日が経ってしまった。

子供たちは元気にしているだろうか。妻は寂しがっていないだろうか。

もう2日も家族の顔を見ていない…畜生!!!


3日目は半裸男に鬱憤をぶつけた。

半裸男との戦いは1度目をスルーしてもいいタイプだったようだ。成程。

お花畑なカップルから胡椒を奪い取り、王から船をもらった。

胡椒なんかが欲しいなら元の世界から㌧単位で持ってくることも出来るというのに。度し難い。


4日目からはオーブ集めも後半に入った。

3日目の段階で商人を骨にするために連行し、滅ぼされた町を漁った。

滅ぼされた町で手に入った宝を使い、朝になった所で海賊共の拠点からオーブを盗る。

消える草を買ってツボを盗り、カギをゲットする。

毒針やらを駆使して金属スライムを狩る。


これだけのことで2日が過ぎた。

6日目、一人で洞窟に入る。

金属スライム狩りでレベル上げをしたので楽勝だ。


7日目、王に化けたボスを狩る。かなり強く、魔法使いが一度死んだが問題ない。

教会に連れて行けば生き返った。仲間の脳筋共は神の奇跡だなどと言っていたが当たり前の事じゃないか。だが、もし全員死んでもデスルーラが使えるならその手もアリだが…いや、危険が危ない。やめておこう。

わらしべ長者ゲームをクリアし、大地の剣をゲット。


8日目、首が八つあるバケモノを狩り、一番長い洞窟へ向かう。

だが、そろそろ仲間からの不平不満が多くなってきた。無理もない。疲労の限界だ。


ゲームじゃないから仕方ないかと諦め、洞窟に一番近い町で仲間を放流する。

彼らは娼館へ一直線だ。

私も疲労が限界なのでオジさんにマッサージしてもらって寝る。最高によく眠れた。


9日目、この世界で一番長いダンジョンへ。

疲れが取れた我々にとって一番長いダンジョンは…きつい。

道中雷の剣を拾う。

防具が心もとないが、ココの敵は一度防御薄構えをすれば殴ってもダメージが半減するという頭のおかしい仕様だ。そのおかげで色々捗る。


10日目の朝、銀色のオーブをゲット。町を出たり入ったりしたら勝手に町が発展するので黄色もゲット。

商人は骨になっていた。軍資金を置いて死ぬくらいの事をしろ


11日目、光のタマタマをゲットしたらついに地上のボス戦だ。

そこそこ事故ることがあるが、上手く寝てくれたおかげで何とか撃破。

道中で孤独金属を狩ったのも大きかった。


12日目、凱旋からのラスボス自己紹介。話が長いのでカット。

そのまま闇の世界へ。

フラグを頑張って立てるのに一苦労。

敵も強い。癒しはオレンジスライムくらいだ。


13、14日目は拾える武器防具は出来るだけ回収してフラグを立てる。

温泉宿で仲間がキャッキャウフフしているのを尻目にどっぷり温泉につかって寝た。

きつすぎる。40代の体力を舐めすぎだろう。ああ、妻が恋しい。


15日目、温泉でリフレッシュした俺たちは魔王のお城へ。

門番に2コンの一撃を喰らい、全滅の危機が訪れるも何とか蘇生。

ようやくラスボスさんの出番だ。


初手光のタマタマから倍殺すを掛けてもらってぶん殴る。

常に防御の構えをさせてから殴ることを忘れてはいけない。

道中で拾った賢人の石を全力で味方に使わせながらぶん殴りまくる。


自動回復を乗り越え、無事撃破。

当初の予定より5日も早く世界を救った。

だがもう半月も経っている。妻は、子供らは寂しがっていないだろうか。




「ただいま!!!」

「お帰り。遅かったわね」

「今日のカレーすっごくおいしいよ!なんでだと思う?ねえ?」


女神は15日の時間のズレを上手く修正してくれたようだ。

少し遅めの帰宅、という事でカタが付いた。


半月ほど運命を共にした仲間は元・闇の世界でウハウハらしい。

あんまり調子に乗って10年後に殺されたりしなければいいが…まあ15日頑張って10年間ウハウハの思いが出来るなら悪くないだろう。


俺はそんな事よりこの疲れた体を癒してほしい。

今夜は妻と久しぶりに燃え上がりそうだ。


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