100人目のアニカ
「おい聞いたか!庶民がこの学校に入学してくるんだって!!」
それからも私は何度もループを繰り返した。
何人ものアニカと対峙し、何回もフィリップに断罪されてきた。
慣れないと思ってた首吊りもさすがに100回近くループをすれば慣れるものだ。
もはや全ては流作業だった。
たまに戯れに何人のアニカと交流持ってみたけどアヤではないその人たちとは関係は続かなかった。
アヤのように「いじめられてない」「処刑はひどい」とフィリップに言ってくれる人もいたようだが、彼が聞き入れるはずもなく。また、彼を愛していたり王妃の座に目が眩んだりする者がほとんどだったので私の処刑は毎回つつがなく行われた。
今回のアニカももれなく。今日も今日とてフィリップに擦り寄って仲睦まじくしている。
私には関係ないが。
そう思っていたやさき、私は彼女に中庭に呼び出された。
「貴方も転生者?」
そのアニカは恐ろしい形相で私を睨みつけた。
「いえ……えっと」
瞬間ばちりと頬を平手打ちされた。
「あんた悪役令嬢でしょ。なんで私のこといじめないのよ。これじゃあ断罪イベントが成立しないじゃない。あんた自分の役割わかってんの?」
それは、ゲーム補正で何があってもなされるのだが、どうやらこの娘はそれを知らないらしい。
「それは……」
「きゃああ!マチルダ様なにを」
説明してあげようとした瞬間。アニカは悲鳴を上げてうずくまった。
呆気に取られていると物陰からフィリップが現れた。
「どうしたんだアニカ!!」
「マチルダ様が急に叩いてきて…」
フィリップは驚いた顔をしてから私を睨みつける。
「きっと、マチルダ様は私を妬んでいるんです……フィリップ様と仲良しだから」
「マチルダ。彼女は学友だ! 仮令婚約者といえども私の交友関係を責められる筋合いはない。それもか弱いアニカを狙うなんて……」
呆けたままの私をよそに、二人は仲睦まじく中庭を後にした。