壊れていく心
それから私は何度も繰り返した。三年間の学生生活を。
時には善良な人格者を演じて教師や生徒の全てを掌握してみたこともあった。
学校に行くのをやめて引きこもってみたこともあった。
それでもダメだった。
あの卒業パーティーになるとあんなに仲良くしていた人々は誰もが、私を悪女として疑わなかった。
一度だって学校に行ってないのに卒業パーティーだけ引きずられるように参加させられ、やっぱり私がアニカをいじめたことかになっていた。そこには道理も倫理も存在しない。マチルダはアニカをいじめる。それが神によって定められている秩序のようだった。
だから私は一度。フィリップとアニカを殺してみた。ナイフで一刺し。
その瞬間。私はまた入学初日に戻っていた。
今度は自分を刺してみた。
それも同様で。教科書を落とすところから私の学生生活がスタートする。
もう限界だった。
ループが50回を超えた頃だった。
落ちた教科書を誰かが拾っている。
クラリスか。差し出された教科書を空な目で見つめてみる。受け取らなければクラリスはそのまま持ってくれる。しかし教科書はぐいっと私に押し付けられた。
それでも受け取られることことのない教科書はクラリスに渡る。クラリスがクラリスに教科書を渡した?何その状況。
「大丈夫?」
クラリスの声ではない。ちらりと顔をあげるとそこにはアニカが立っていた。
思わず後退りをして身構える。
しかしアニカはきらきらとした瞳でずいっと歩み寄り、私の両手を包み込んだ。
「あなた!悪役令嬢のマチルダよね!私あなたの大ファンなの!!!!」




