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婚約破棄

「おい聞いたか!庶民がこの学校に入学してくるんだって!!」

 雑踏。新しい制服。落ちた教科書。

 全てを悟った。


 また戻っている。


「マチルダ様!どうしましたんです」

 クラリスが拾い上げるより早く。教科書を拾う。

「クラリス。行くわよ」

「えっ……いや。はい?どこに……」

 戸惑うクラリスを連れて私はフィリップの元へ向かった。

 フィリップは中庭の真ん中でアニカと話していた。嗚呼、こんなに早く二人は出会っていたのね。

 二人に向かってまっすぐ進む。

「やぁ、マチルダどうしたんだい……ああこちらはアニカ嬢……特待生で……」

 笑顔のフィリップに私は思いっきり平手打ちをした。彼はバランスを崩してその場に倒れこむ。そばにいた従者も呆気に取られて対応できていない。王勅命の騎士団員が情けない。クラリスだけが「ひぇえ」と声を上げて私の体にしがみついているが。造作もない。

 頬を押さえてフィリップは呆然と私を見上げている。

「マチルダ……?何を?」

「この場にいる紳士淑女の皆様に証言者になっていただきたいのですが。よろしいですか?」

 しんと静まり返った中庭にむかい、私は一礼する。

「私、マチルダ•デイヴィースはフィリップ・マクレーン殿下との婚約を破棄することをここに宣言します」

 ざわざわと中庭が喧騒を取り戻す。

「おおお嬢さまぁー!!マチルダさまぁ!!??」

 狼狽えるクラリスを押さえつけて、私は中庭を後にした。一度だけ振り返ると、呆然したフィリップをアニカが献身的に世話をしているようだった。

 三年間。次期王を引っ叩いた暴力女として私は爪弾きものにされた。別によかった。もう2回も学生生活は満喫させていただいている。王にも両親にも婚約破棄については話した。お願いをした。両者とも大層ご立腹のようだったが、死ぬよりずっとマシだった。


 それでも


「マチルダ•デイヴィース!アニカ嬢への残虐非道な嫌がらせの数々。許すわけにはいかない。俺はお前との婚約を破棄する!」  

 嗚呼、あなたとはとっくに婚約破棄してるじゃない。それなのになんで皆んな驚いているの?あはは。あはははは。

「あははははははは」

 声を上げて笑っているのは。誰?

 ああなんだ。私か

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