第四十八話『再会』
「ヒューズ様!」
ヒーラはボロボロになったヒューズを見て回復魔獣をすかさずかける。
「大丈夫だ。ヒーラ。頼むミオの方を見てくれ。重症なんだ」
「でも……」
「頼む」
「分かりました……」
ヒーラはヒューズに従い、ミオへ回復魔術を施す。
「ありがとうございます」
「ヒューズ様とはどういった関係で?」
「……え?ヒューズ君とは同じ騎士学校で……友達?です…」
「ヒューズ君!君!く…くん!私もそう呼ぼうかな……。その後ヒューズって呼び捨てしちゃって!」
「あの……ヒーラさん?」
「応急処置は終わりました。後は奥の宮廷魔術師の人に看てもらって」
「あ……ありがとうございます」
ヒーラはそうミオに告げるとヒューズの方へ駆け寄り、ニコニコしながら話しかけ始めた。
「ヒューズ、いつもこうなのか?」
「あぁヒーラはずっとこうだよ」
ナギとメリはベールの遺体を抱え、その場を後にする。
「ヒューズ様!シーナは南区後方の避難所で元気にしているそうですよ。シーラさんもカーラさんも」
「そうか。それはよかった。安心したよ。ありがとう。ヒーラお願いがあるんだけど」
「なんなりと!」
「僕らは治療を受けるからここの警備任せていい?」
「了解しました!ヒューズ様!」
ヒーラはヒューズのお願いを聞き、その場に残る。ヒューズは重症のミオを担いでその場を後にした。
「え?ヒューズ君私歩けるけど……」
「傷が広がったらまずい」
その光景をヒーラは見て、ミオという女をブラックリストに入れるのだった。
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「おい、ガキ。ガキ起きろ」
シーナは目を覚ますとヤスとエドの2人がいた。いつのまにか寝てしまっていたようだ。
「もうすぐ日も暮れる。起きて配給貰いに行くぞ」
「まだ和国の話聞きたいのに……」
「おまえが寝たのが悪いだろ」
「飯食ったらまたしてやるよ」
エド、ヤス、シーナが立ち上がった時、すぐ近くの所から爆音と砂煙が上がる。
「なんですか?」
「分からんがあっちは南区の入り口の方だな」
「騎士たちが防衛してんだろ。気にすんなのよ」
ヤスはそのまま配給場所まで移動しようとした時、また爆音と砂煙が上がる。今度は少しシーナたちのいる場所に近い。
「ヤスさん!」
「なんだってんだ。一旦離れるぞ」
「おまえら俺の後ろにいろ。原因はあいつだ」
エドは腰に下げてた2本の刀のうち1本を抜く。
「まだ日は沈まねぇか」
「エドさん何を?」
シーナはヤスと共にエドの後ろに隠れつつ、エドの目線の先を見る。
「あれは……」
そこには少女の形をした魔獣がいた。体の中心くらいの位置に魔石があるのをシーナは確認する。
「魔石持ち。これってドルトさんの言ってた魔術型の」
「エド、剣で戦うおまえには武が悪いぞ。逃げよう」
「魔獣は待ってくれねぇよ。それに騎士が防衛してたのを突破してきたんだろ。あそこの防衛にあたってた騎士は全員やられたってことだ。ここで止めないと死人がもっとでる」
少女型の魔獣は右手をゆっくりとあげだした。
「あの魔獣何しようってんだ」
シーナはここでドルトの言っていたあることを思い出した。「魔術型は小さな子供のような形をしている。魔法の放ち方が独特だ。右手を上げると前方を破壊していく魔法を放つ。そして左手を上げると前方に盾のような魔法を発現させる」ドルトはそう言っていた。それなら……
「魔法がきます!」
「「え?!」」
ヤスとエドは驚いた表情でシーナを見た。魔獣の右腕はゆっくりと上がっていく。範囲はどのくらいか分からないがさっきの砂煙と爆発音を考慮すると、辺りを吹き飛ばしかねないかもしれない。もう逃げるのは遅かった。全身から血の気が引く。
だがそんな時、シーナはエドの前に立ち、右腕を魔獣に向ける。そしてこう唱えた。
「エペラル・シーム!!」
魔法の発動は一瞬だけシーナが遅かった。だがシーナの放った爆裂魔法と魔獣の魔法はぶつかり相殺される。
シーナは衝撃で後方に吹き飛び、それをヤスはキャッチした。
「無茶しやがって……」
砂煙が晴れる。すると魔獣の姿がよく見えるようになった。また右腕を少しずつ上げていく。
「やばい。もう一発くるぞ」
「私がもう一回相殺します。エドさん隙をついて倒してください」
「了解した」
シーナはもう一度エドの前に立ち、呪文を唱えようとした時、魔獣が吹き飛んだ。
「え……?」
「何したんだシーナ?」
「私は何もしてません。これは……」
魔獣はまだ生きており、起き上がって右腕を上げようとした。今度はシーナたちとは逆の方を向いている。すると次の瞬間魔獣の右腕は切断される。魔獣が今度は左手を動かそうとした時、左腕が焦げて炭になった。最後、魔獣の首は刎ねられ、体は力無く倒れる。
誰かが助けてくれた。シーナは砂煙で見えにくいが人のシルエットを見つける。おそらく魔術師だった。
「あの!ありがとうございます」
そのシルエットに向かってお礼を言った。少しずつ砂煙が晴れていく。そしてその人の姿が見え始めた時、シーナは懐かしさを覚えた。長く伸びきった髪と髭、汚らしい服装。そこにいたのは約一年前まで自分が魔法を習っていた師匠の姿だった。




