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小さき魔女と失われた記憶  作者: 沼に堕ちた円周率
師匠編
36/59

第三十一話『魔力操作』

前話から1週間経っています


 シーナが自分の魔力感知ができるようになり、一人で家に帰ることができるようになった日から約一週間。


「少ない。普通。ちょっと多い。かなり少ない。普通くらい。普通。普通。普通。少ない。多い。まあまあ多い。普通。ちょっと少ない」


 シーナは他人の魔力を感じ取れるようになっていた。今は道行く人の魔力量が多いか少ないかを判断する訓練をしている。


「もう完璧だな。すげーよシーナ」

「かなり多い」


 ユーリは未だに自分の魔力を感じ取ることもできていなかった。それが普通なのだ。一週間でここまでできる人はそういない。


「ユーリもセンスはいいと思う。もうすぐ自分の魔力くらいなら分かるようになるだろう」


 師匠はユーリを励まし、持っていたジュースの入ったコップをユーリに渡した。ユーリはそれを一気飲みすると師匠の杖を持ち、目を瞑って練習を再開する。


「……私の魔力量って普通からかけ離れてますよね」

「あぁ。見たやつがみんな驚くのもわかっただろ?」

「まぁ……。正直自分でも引いてます。魔力量誤魔化すとかできないんですか?魔法学院でいじめられたりしませんかね?」


 シーナは魔法学院で自分の魔力量のことでいじめられないか心配するようになっていた。明らかに普通とはかけ離れていることに自分でも気が付いたからだ。普通の人より多いことは長所だがシーナは多すぎる。見た人から引かれたりもするレベルだ。


「大丈夫だろ。魔法ってのは魔力量だけじゃない。魔術師の評価は魔力変換力、魔力変換率、魔力量で決まるんだ。魔力量だけで嫉妬されていじめられるなんてことはない」

「嫉妬というより嫌悪されそうなんですが……」

「そんなことより魔力操作の練習に入るぞ」

「私の学院生活の不安をそんなことと言いましたね……」


 師匠はそんなシーナをよそに魔力操作訓練の準備を始めた。準備といっても自分の服の袖を腕まくりするだけだ。


「よし、手を出せ」

「こうですか?」


 師匠はシーナの手に少し触れる。すると魔力が外に流れていく感覚がある。一度びっくりしてシーナは手を引いた。


「シーナの魔力に干渉した。魔力が外に出ただろ?」

「人の魔力に干渉できるんですか?」

「あぁ。できるやつはできる」


 師匠ができるやつはというのでできない奴もいるのだろう。シーナはこの約一週間で師匠が本当に凄い魔術師だということに気づいている。


「もう一回してください。出ていく感覚を掴むんですよね?」

「あぁ。魔力感知みたいに上手くいくと思うな」


 師匠がもう一度シーナの魔力に干渉して魔力を外に出す。その感覚を必死に捉えようとシーナは集中し続けていた。そして師匠が一度手を離した時、また奇跡は起きてしまう。


「……」

「……」


 二人が沈黙する。ユーリは相変わらず目を瞑って魔力を感じ取ろうとしていた。そんなユーリをよそに師匠とシーナの間では今まさにあり得ない、いや、師匠の方は薄々予測をしていたことが起こる。


「……」

「……」

「……意外と簡単だったりします?」

「そんなわけあるか」

「ですよね……」

「……」

「……」


 シーナの魔力は師匠が干渉せずとも外に出続けていた。


「どうして……」


 師匠は驚きというよりも恐怖に近い感情が湧き出る。師匠からしたら自分の仕事がもう三分のニ終わってしまったのだ。何もしなていないのに。


「シーナたちどうしたんだ?」


 まったく何が起こっているか分からないユーリは呑気なものである。シーナたちが沈黙していることにやっと気づいた。


「もう魔力外に出せるようになっちゃった……」

「シーナって姉ちゃんと一緒で天才じゃん」


 ヒーラと一緒。それは違う。あくまでヒーラは常識の中に生きている。たしかに何事も優秀で魔力感知を二週間、魔力操作を二週間、魔力変換を二週間で一般魔術師程度までできるようになったヒーラは天才だ。だがそれは常識の範疇にある。どの分野も二週間でできるようになる子供は一定数いるのだ。ヒーラはそれを三分野全てで成し得ている。それは天才と言うべきだろう。


 だがシーナのそれは違う。常識の範疇を逸脱している。どんなに才能があろうと二週間はかかる。それが魔法の三分野なのだ。


「もう意味が分からん」


 師匠は考えることをやめ、シーナは人ではないのだろうと思うことにした。


「明日から魔力変換に入るか〜」


 この時、どうせ魔力変換もすぐできるようになるだろうと師匠は思っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シーナ、どうやったらできるようになる?」

「分かりません。なんか……感覚が分かるんですよね。どうしてかは分からないですけど」


 シーナとユーリは帰り道そんなことを話していた。


「七歳で魔法使えるようになるんじゃね?世界最年少魔術師じゃんか」

「魔術師試験受けれるようになるのは九歳の誕生日がある年からです。って私まだ六歳ですよ……あれ?」

「シーナ今日で七歳だろ?」

「あ……」


 シーナは最近魔法のことばかり頭がいっぱいで自分の誕生日を忘れていた。自分でも驚きである。だが一番驚きなのは今日誰からもおめでとうを言われなかったことだ。少し傷つく。


「みんな忘れちゃったのでしょうか……」

「覚えてるって。おめでとう」

「ありがとうございます」


 家に帰りつき、シーラのいる台所に行くとシーラはご馳走をちゃんと作ってくれていた。


「シーナ、誕生日おめでとう」


 母とカーラはちゃんと覚えてくれていたらしい。忘れていたのは自分だけだった。


「ありがとうございます」


 シーナは二人に感謝しながら、夜の誕生日パーティーを楽しみに待つことにした。


シーナの魔力感知と魔力操作の才能?の理由はまだ明かされません。

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