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小さき魔女と失われた記憶  作者: 沼に堕ちた円周率
祭編
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第十話『祭ニ』


「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「あ、ありがとうございます」


 シーナは苦笑しながら残念賞の景品をもらい、爆笑しているヒーラのもとへと歩み寄った。


「残念賞って。ははは!せめて五賞か六賞くらい当てなさいよ。ははは!」

「つ、次はあなたの番ですよ」


 ヒーラにムカつきながらそう伝える。


ーー残念賞取ったら笑ってやる。


「まぁ待ってなさい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」


 聞き覚えのあるセリフが屋台の方から聞こえる。そして嫌そうな顔をしたヒーラがシーナのもとへ帰ってきた。


「はははは!!何賞でしたか?まさか残念賞ですかね?あれあれ?」

「黙れ」

「そんな言葉遣いだと兄様のハートを射止められませんよ?ははは!」


 シーナはここぞとばかりにからかっておいた。ヒーラは基本何でもできてボロを出す事が少ない。今は騎士学校に入っているが一年だけ魔法学院に通っており魔法も使うことができるのだ。その魔法学院でもかなりできる方で学院を去るのを教授や校長から何度も引き止められていたほどである。


 だがそんなヒーラも運はどうすることもできないのだろう。とても悔しそうな表情でシーナを睨みつけた。


「でもこれだと勝ち負けつきませんよ」

「ならもう一戦でしょ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」

「残念賞のなんの魔物のものか分からない骨になります。飾りに使ってください」


 四戦中、四引き分け。シーナとヒーラの手元にはどんどんよく分からない骨が増えていた。


「……なんの魔物かくらい分かりなさいよ!」


 痺れをきらしたヒーラが持っていた骨を投げ捨てる。シーナもあの屋台に残念賞以外があるのか怪しくなってきた時。


 カランカラン。


「おめでとうございます。一等の魔水晶です。魔力量を測ることができる水晶です。どうぞ」

「おう。やったぜ〜」


 まさかの一等当選の掛け声と気の抜けた声が聞こえる。背中に長剣をかけた騎士が一等を当てたのだ。街の人もぞろぞろと一等当選者を見に集まってくる。


 その騎士はそんな人に目も暮れずシーナとヒーラの方に向かってくる。そして二人の前に立ち止まった。そうするともう一人同行した騎士が


「イラマス隊長、あんた『探し物の才』使いましたね。卑怯だし、ほぼ犯罪ですよ」


 小声でそう囁き景品を返すようにせがむ。


「いいんだよ。才を使うな、なんて書いてないだろ」


 イラマスという隊長は同行する騎士にそう告げ、シーナとヒーラの方に向きなおりこう続けた。


「ってことで才を使ったことは内緒でな。これやる」


 だいたい子供の手くらいのサイズの青く光る水晶玉をヒーラとシーナに渡そうとする。


「なんか何回もしてたのに骨しか取れてねえから。やるよ」


 シーナとヒーラはあれを見られていたのかと少し顔を赤くしながらお礼を言って受け取った。そうすると騎士たちは何か話しながらまたどこかへ歩いていってしまう。


「あの方は?」

「第三騎士部隊の隊長よ。イラマス・ティンゼル」


 ヒーラは彼のことを知っているようだった。シーナは優しい人もいるものだと思いながらヒーラの手にある水晶が青ではなく黒くなっているのに気がつく。


「その水晶なんなんですか?」

「持つ人の魔力で色が変わるの。結構珍しいのよ」

「黒色ってどのくらいなんです?」

「一番上の色。赤、黄、白、青、紫そして紫以上は測れないから黒くなるの。ちなみに一般人は赤か黄色」

「ヒーラはかなり魔力量があるってことですか。すごいですね」

「なんなの?皮肉?」

「は?」


 シーナ的には褒めたつもりなのにヒーラからまた睨まれる。


「触ってみたら」


 そう言われ、ヒーラから水晶を投げ渡された。シーナは超級の呪文を使える時点で一般人よりははるかに多い。青か紫くらいは出るだろうと思って触る。


「あれ?」


 だがでた色は


「「透明?」」


 ヒーラとシーナの声が重なった。なぜだと思いもう一度水晶を見ると赤、黄、白、青、紫の色が次々と変わるがわるでてくる。水晶が明らかにおかしい挙動を見せている。


「なんですか?これ」

「知らな……」


 バリっ。その音とともに水晶は粉々になった。サラサラとシーナの手から水晶の粉が落ちていく。


「え……。せっかくいただいたのに」

「あんた……」

「私何もしてませんよ!ただ触っただけです!」

「分かってるわよ。私が言いたいのは……」


 ヒーラが何かシーナに伝えようとした時、


「姉ちゃん!シーナ!探したぞ」


 ユーリの声だった。そのユーリと一緒にヒューズがこちらに歩いて来ている。シーナははっと何かに気づきさっきまでヒーラがいたところに目を向けるがそこには何もいない。


「ヒューズ様!」


 そう大声を出しながらヒューズに抱きつき、その勢いでヒューズとともにバタンと倒れる。それに呆れながらシーナも三人のところへ歩き出す。


「よっしゃあ。四人集まったところで祭り回るぞー!」


 ユーリとヒューズと合流し、四人で祭を回ることとなった。


「せっかくですし二人もくじ引きしたらどうですか?」

「そうだな。ヒューズ兄ちゃんくじ引きしに行こうぜ」


 そう言ってあのくじ引き屋に四人で向かう。祭はまだ始まったばかりだ。


IFストーリーを書きたいのですがいい感じの分岐点が魔獣災害編にあるのでそこまでお預けにします。まずは魔獣災害編を完成させます……。

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