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小さき魔女と失われた記憶  作者: 沼に堕ちた円周率
ハーダル村編
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第八話『事件の後』

 シーナは朝、目を覚ますと村が騒がしいことに気がつく。一体何が起こっているのか。そう思い布団から出た時


「あら、シーナ起きたのね。ご飯できてるわよ」


 シーラの優しい声が聞こえ、安心する。昨日の一件でまたあの仮面が襲いにきたのではないかなどと考えてしまう。昨日は確実にシーナの中で一番のトラウマ、そして恐怖になっていた。


「お母様、外が騒がしいのはどうしてですか?」


 ノストラル、ヒューズを加えた四人での食事をしながらシーナは朝から気になっていた事を尋ねた。返事はシーラからではなくノストラルから返ってくる。


「昨日、ワグルテを狩りすぎてしまったからのぉ。村のみんなでワグルテ肉を食べておるんじゃよ」


 その返答がシーナに昨日のことを思い出させた。まさにあの恐ろしい光景。何体ものワグルテの頭が横になり、池が血の色で染まっていた光景だった。それが頭の中でフラッシュバックし、食べていたものを全て吐き出してしまった。


「すまん、すまん。食事中に言う事じゃなかった」


 ノストラルの謝罪も聞こえないほどにシーナは気分が悪くなっていた。口が嘔吐で変な味がし、頭がくらくらする。シーラが吐き出したものを片付けている間にシーナは口を濯ぎながら


「今日は少し横になっておきます」


と三人に告げてまた布団に入った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アーザル国の首都ヘンリル。そこの転移屋に二人の騎士がいた。


「ハーダル村までよろしく」

「かしこまりました」


 柄の悪い男が店の者に行き先を伝える。店員は柄の悪い騎士とそれにつきそう女騎士を案内し、転移陣を発動。二人をハーダル村へ送るのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アーザル国騎士部隊には第十部隊までの隊があり、その内第二騎士部隊までは国王直々の部隊。第三騎士部隊以降はアーザル国元老直々の部隊となっている。


 そしてアーザル国騎士部隊の中で基本的に都市の整備治安維持を担当している第三騎士部隊ーーその隊長イラマス・ティンゼルはハーダル村に到着した。


「なんで騎士部隊隊長がこんな田舎に来なきゃならないんだよ。俺が暇してるからって。おかしいだろ。上の奴らめ」

「そもそも騎士部隊隊長が暇してるのがおかしいの。他の騎士部隊は遠征だのなんだので忙しくしているのに」


 イラマスは文句を垂れ流し歩いていると横から最もな意見が飛んでくる。第三騎士部隊副隊長モール・ティンゼルだ。イラマスの妹である。


「あのなぁ。みんながみんな遠征してたらまずいだろ。こうやって待機して治安維持する奴がいないと国は終わりだぜ」

「あれが待機だったんですねぇ。へぇ。朝から晩までくっちゃねしてるのが。騎士部隊はアーザルの最高戦力。他の国からも注目されてるんだからね」


 ため息をつきながらモールはイラマスに説教を続ける。


「騎士部隊なんてもうお飾りだろ。魔法学が進歩して騎士なんて治安維持か森の調査くらいしか役に立たない。戦争が起こったとしても魔法士部隊の魔法戦だ。今のアーザルで戦争に参加して役に立つ騎士なんて第一とその他の隊長格くらいだろ」

「それは戦い方にもよるよ。魔術師は近距離では騎士に勝てないから」

「そんなちまちま距離詰めて戦うなんてしてたら負ける。アーザルが人族領最大の国を維持できてるのも同盟国のタリムやハヤメサが魔術士を派遣してくれるからだ。今の時代遅れアーザル国の戦力だけじゃ隣国のマリス帝国から攻められれば、すぐやられる」

「そんな事言ってたらいつか解任されるからね。本当に。その時は私が騎士部隊隊長引き継ぐよ」

「なんなら今すぐ変わってくれ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「派遣されてきた第三騎士部隊隊長イラマスです」


 イラマスはノストラルの家へ着くやいなや、敬礼し自分の所属をノストラルにつげる。モールはいつもと全く違う兄に驚きつつノストラルへ敬礼する。


「よくわしの家が分かったな」

「俺は『探し物の才』を持っていますから。自分が探しているものの位置がなんとなくわかるんです」

「そういうことじゃったか。仮面の奴らの位置もその才で分からんのか?」

「俺の才は見たもので、なおかつ本気で見つけたいと思うもののみですので」

「残念じゃ。今回の件を話そう。家へ上がれ」


 ノストラルから招かれるままにイラマスとモールは家へ入っていく。


「モールさん!」


 ヒューズはモールの顔を見て彼女の名を呼んだ。ヒューズは父に連れられ何度か王宮に赴いているためモールのことを知っている。


「ヒューズくん今回は大変だったね」

「はい。担当なんですね」

「私たちが犯人を捕まえるから安心してね」

「ありがとうございます」


 そんなモールとヒューズの話を横目で見ながらイラマスとノストラルは本題に入っていた。


「その謎の仮面の子供らが急に襲って来たと……」

「ただの子供ではない。明らかに特殊な訓練を受けていた」

「はっはー。特殊な訓練ならあなたのお孫さんも受けているでしょう」


 ヒューズは小さい頃からサナスから地獄のような訓練をさせられている。普通の家庭では家業の手伝いなどをしている年齢だ。


「それとは全く違う。ヒューズは剣術の訓練だが彼らは生き物を殺す訓練を受けていた。それに戦闘にもなれている節がある」

「そんな謎の子供たちがなぜ?」


 イラマスはもっともな疑問を持つ。そんなよくも分からない子供がなぜ四人を襲ったのか。もちろんノストラルは世界的に有名であり命を狙われる可能性がある。だがノストラルの返事はそれとは違うものだった。


「推測でしかないがシーナを狙っておるかもしれん」

「なんかあるんですか?」

「魔法は?」

「まったくできません」


 イラマスがそう言うとモールは一度兄のことを睨み、ヒューズとの話を再開する。


「わしはある宮廷魔術師から魔力感知の仕方を習ったことがある。シーナの魔力は異常じゃ」

「異常とは?」

「多すぎる」

「剣の家系でも突然魔力が増えたりなんてことはありますよ」


 魔力は基本遺伝によるものだが突然増えたり、減ったりといった例外も起こることは多くある。シーナもその例外にはまったのだろうと皆が思うのも自然だ。だが


「底が見えないのじゃ。わしに教えた宮廷魔術師は極級上の魔術師じゃ。この世界でも数えるほどしかいない。その魔術師の数万倍、数億倍は魔力がある。もしかするとそれ以上の可能性も。とにかく底が見えないのじゃ」

「つまり、その魔力量が原因でお孫さんが狙われたと。まぁ敵国に強い魔術師が生まれるのは隣国も避けたいところでしょうが。正直信用に欠けます。ですが、お孫さんを狙っている者の可能性も視野に入れて捜査をします。あなたもお孫さんから目を離さないように。つってもまあ王都内にいる分にはそいつらも手は出せないでしょうけど」

「調査は任せた」


ハーダル村編は終わりです。次から祭編。ここからが本番と言った感じです。その後、師匠編に魔獣災害編と続きます。

作者が本当に書きたいのは魔法学院編なのです。まだまだ道のりは長い。

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