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苦手な方はご注意ください。

そして鳥になった 【不問2】

作者: まなお


〈注意事項〉


過度なアドリブはお控えください


台本を使用する際は、タイトルと作者名を記載の上で上演お願いします。

課金制・無課金制問わず自由に使用してもらって結構です。


使用の際の連絡は不要ですが、作者にDMを送ってくだされば、聴きにいけたら行きます!

アーカイブも残っていたら、送ってくだされば聴きます!

Twitter:manaosoda_





ーーーーーー

佐藤(不問)

潮田(不問)

ーーーーーー


ーーーーーー


約35分


ーーーーーー

ーーーーーー




潮田「(息を吸って)なぞなぞです。」



佐藤「急だなw」



潮田「2人の超能力者が争っています。1人は空を飛べて、もう1人は透明人間。どちらが勝ったでしょうか?」





潮田M「世界はいつも2種類に分けられる」






佐藤「うーん、あ!わかった!どちらでもない。」





潮田M「正義と悪」





潮田「その心は?」





潮田M「勝者と敗者」





佐藤「透明人間は、透明になって攻撃を防ぐことも、見られずに攻撃をすることもできるけど、相手が空を飛べちゃったら、攻撃しようがないから、どちらも攻撃できないし、攻撃されない。だから勝ち負けなんかなくて、勝者はいない。」





潮田M「光と闇」





潮田「面白い推理だね。でももし透明人間が銃みたいな武器を持っていたら空を飛んでても撃たれちゃうよ?」




潮田M「生と死」




佐藤「え、透明人間って自分のことは透明にできても、物を透明化することはできないんじゃないの?」




潮田M「あるか、ないか」




潮田「物も透明化出来なかったら、服はどうすんのさ?」




潮田M「世界はいつも2種類に分けられる。でもその2種類のどちらにも当てはまらない者はどこに行くのか」




佐藤「それは…まあ、裸ってことですね」





潮田M「当てはまらないものに居場所はあるのか」




潮田「裸って…佐藤の変態」





潮田M「居場所など、ない。」









佐藤「潮田!今帰り?」



潮田「あーうん」



佐藤「一緒に帰ろ」



潮田「いいけど」



佐藤「あはは!めっちゃ塩対応w」



潮田「…」



佐藤「潮田だけに!」



潮田「それもう面白くないから」



佐藤「えー」



潮田「48回も言っててまだ面白いと思えてる佐藤が謎すぎる」



佐藤「それって最初は面白いと思ったってこと?」



潮田「っ…帰る」



佐藤「うん、知ってるよ!」



潮田「ひとりで、帰る。」



佐藤「ううん」



潮田「…帰る」



佐藤「一緒にね」



潮田「1人で」



佐藤「ダメです」



潮田「…」



佐藤「あ!!歩くの早めた!!…。ふっあははは!」



潮田「うるさい」



佐藤「わっはっはっはっは!!」



潮田「…置いてくよ」



佐藤「ふふん」



潮田「気持ち悪いから2メートルは距離あけて」



佐藤「潮田ったらツンデレなんだから〜」



潮田「…帰る」






佐藤M「空飛び人間と透明人間が戦っても敗者はいない。

空飛び人間には攻撃なんか当たらず、透明人間が仮に死んでも透明化して死体は見つからない。死体が見つからなければ死んでいない。見つからなければ、負けていない。

空飛び人間と透明人間が戦っても敗者はいない

そして、勝者もいない。」





佐藤「飛行か透明化。どっちの超能力が欲しい?」



潮田「なんでその2つ?」



佐藤「いいから!」



潮田「透明化」



佐藤「なんで?」



潮田「目立ちたくないから」



佐藤「でもさ、でもさ、空を飛べる方がかっこいいよ!」



潮田「かっこよくなったら目立つじゃん。だからやだ」



佐藤「でもさ、でもさ、目立つの楽しいよ!」



潮田「話聞いてる?」



佐藤「一言一句!!」



潮田「…」



佐藤「ねえねえ!なにその目?!ねえねえ!!」



潮田「…はぁ。じゃあ佐藤は飛びたいわけだ」



佐藤「なんでわかったの?!」



潮田「…はぁ」



佐藤「重力に縛られないってどういう感じなんだろう」



潮田「さあ。宇宙に行ったらわかるんじゃない?」



佐藤「宇宙か…」



潮田「宇宙飛行士にでもなればいいじゃん」



佐藤「なれるかな?」



潮田「さあ」



佐藤「潮田はなにになりたい?」



潮田「…秘密」



佐藤「本当に秘密主義な塩対応さんだなー」



潮田「潮田だけに?」



佐藤「……んふふふ」



潮田「言うんじゃなかった」



佐藤「潮田だけに!!」





佐藤M「珍しい組み合わせだと周りからよく言われる。対照的だと、どうして一緒にいるのかがわからないと。」





佐藤M「潮田は」



潮田M「佐藤としか」



佐藤M「話さない。」



潮田M「周りが」



佐藤M「潮田の」



潮田M「声を聞くのは、佐藤と話してる時だけだ。


二人はできてるんじゃないかって噂もあるけど、そんなことはなく、佐藤は」



佐藤M「潮田の」



潮田M「友達だ。」



佐藤M「潮田は」



潮田M「佐藤の」



佐藤M「友達だ。


世界はいつも2種類に分かれている。」



潮田M「そうである者と、そうでない者。」



佐藤M「ふたつがひとつになって初めて完全になるのではないだろうか」



潮田M「ふたつがひとつになって初めて相殺するのではないだろうか」



佐藤M「潮田のことが」



潮田M「佐藤のことが」



↓同時に↓



佐藤「好きだ」

潮田「嫌いだ」









佐藤「あちーー」



潮田「夏だからね」



佐藤「死ぬー」



潮田「脱水さえしなければ死なないよ」



佐藤「燃えるー」



潮田「わー佐藤の体から炎がー大変だー」



佐藤「…なに読んでんの?」



潮田「本」



佐藤「なんの本?」



潮田「…」



佐藤「ねえなんの本?!」



潮田「佐藤、本読まないじゃん」



佐藤「でも気になるの」



潮田「見る?」



佐藤「見る!!」



潮田「はい」



佐藤「どれどれ〜、ってノートじゃん。しかも白紙!潮田、なんでこんなもの見てんの?」



潮田「え、佐藤、読めないの?」



佐藤「読めるもなにも、読む文字なんかないじゃん」



潮田「そっか、佐藤には見えないんだ」



佐藤「え、なに?どういうこと?!」



潮田「佐藤は見えない側の民だったか」



佐藤「えーまって説明してよ!どういうこと?白紙じゃんか!」



潮田「そっかそっか、佐藤は違ったか」



佐藤「ねえ意味深やめてー」



潮田「冗談冗談。白紙のノートを見てるだけだよ」



佐藤「なにそれ、面白いの?」



潮田「面白い」



佐藤「なんで?」



潮田「どんな物語でも想像できるから」



佐藤「それってノート必要なの?」



潮田「必要だよ」



佐藤「ふーん」



潮田「…」



佐藤「ねえ、暑いからアイス買ってきて」



潮田「(立ち上がる)」



佐藤「サンキュー」



潮田「(立ち止まる)」



佐藤「ん?どした?」



潮田「コンビニ、行く準備して」



佐藤「え」



潮田「一緒に行くでしょ?」



佐藤「あ…」



潮田「行くでしょ?コンビニ」



佐藤「…んあーもう!わかったよ!」






SE:コンビニの入店音






佐藤「潮田!潮田!!新商品ある!!」



潮田「…ピザコンソメのり塩ポテチって、味がうるさそう」



佐藤「あ!ここにも新商品!!」



潮田「卵味の飴…」



佐藤「美味しいのかな?」



潮田「絶対腐った味しかしない」



佐藤「やっぱりそう思う?」



潮田「ねえ佐藤、アイスは?」



佐藤「コンビニエアコン効いてて涼しいからもうアイスはいいや」



潮田「佐藤…」



佐藤「あ!肉まん食べたい!肉まん!」



潮田「好きにすれば」




SE:小銭音




佐藤「暑い。こんな暑さで肉まんなんか食べれない」



潮田「こうなると思った」



佐藤「思ったなら阻止してよ〜」



潮田「アイスのことはもう忘れちゃったみたいだったし



佐藤「アイスを過去の恋人のように例えないで!

あー暑い〜暑すぎる〜暑いよ〜アイス〜」



潮田「はい」



佐藤「…これって」



潮田「半分あげる」



佐藤「潮田…!」



潮田「欲しい?」



佐藤「欲しい!」



潮田「仕方ないな〜じゃあ『ありがとうございます潮田様。これからは潮田様の献身的な犬になります』って言ったらあげてもいいよ」



佐藤「ありがとうございます潮田様!これからは潮田様の献身的な犬になります!」



潮田「躊躇ひとつしなかったな…ひくわ」



佐藤「ええええええ?!ひかないでよ!!」



潮田「冗談。」



潮田テレビをつける。



佐藤「あ、ロケットだ!」



潮田「これから発車するのかな?」



佐藤「宇宙か〜行きたいな〜」



潮田「宇宙飛行士になりたいんだもんね」



佐藤「うん!無重力生活をしたい!」



潮田「なんでそんなに無重力に固執するの?」



佐藤「えーだって」



潮田M「飛びたい人は、何かから解放されたい人。何かが足枷になってる人。」



潮田「佐藤はさ、一緒にいてめんどくさいとか嫌だなって思ったことある?」



佐藤「え?誰と?」



潮田「…」



佐藤「…潮田と?」



潮田「(頷く)」



佐藤「ふっ、ないよ!逆に潮田の方こそ思ったことないの?こんなうるさい人間と一緒にいて鬱陶しいな〜とかウザイな〜とか」



潮田「ない」



佐藤「即答嬉しいな!潮田ってさ変だよね」



潮田「変?」



佐藤「自分がもうひとりいたら絶対に関わりたくない」



潮田「そうかな?佐藤は意外といいやつだよ」



佐藤「ありがとうだよ?」



潮田「どういたしましてだよ」



佐藤「でも意外となんだ」



潮田「意外と」



佐藤「なんでだよ!」



潮田「(笑う)」



佐藤「ふっ、潮田もいいやつだよ。意外と」



潮田「ありがとう」



佐藤「どういたしまして」



潮田「でももし、足枷になってると思ったら突き放していいからね」



佐藤「潮田が足枷?ないない!1番背中を押してくれる人!足枷の正反対!!」



潮田「…そっか」



佐藤「どうしたの?いきなり」



潮田「いや、なんでもない。」



佐藤「変な潮田。」



潮田「どうせ変ですよ。」



佐藤「うーん、潮田はどちらかというと、足かな?」



潮田「足?」



佐藤「潮田がいるから前に進めるし、潮田がいるから立ち上がれる。


潮田がいないと何もできないかも!


あ、もしかして今度は私の方が潮田の足枷になってるくない?!」



潮田「実にその通り。佐藤という足枷は本当に重くて重くて、

愛情も図体もこれはまた重いんですわ」



佐藤「図体は余計だろ!!」



潮田「佐藤、ありがとう。」



佐藤「…いつでも。」






SE:何かが落ちる物音とたくさんの皿が割れる音


SE:救急車






佐藤「潮田!!」



潮田「よう。」



佐藤「っ…」



潮田「生きてるから。」



佐藤「…え?」



潮田「まるで幽霊を見たかのような顔してたからさ、

生きてるよって。」



佐藤「あ、うん」



潮田「人生何が起きるかわからないよね。1秒前まで普通に立って歩けてたのに、

階段から滑って尻餅つくだけで、もう何も感じなくなっちゃうなんてさ」



佐藤「…」



潮田「いやー、我ながら史上最上級のミス。

お皿も大量に割っちゃったし、弁償しないといけないだろうな。

あ、でもマネージャーがあんなに深刻そうな顔したの初めて見た。

すごい大きな音だったしさ、お客さんからもすごく見られちゃったし、

目立つの嫌いなのに、人生で一番視線浴びたよ。」



佐藤「潮田…」



潮田「それにしても皮肉だよね。佐藤の足であるはずの私が、立てない身体になっちゃうなんてさ。

流石に笑えてきちゃうよ。

笑わないけど」



佐藤「潮田!!」



間。



潮田「なんで、佐藤が泣くの?」



佐藤「っ…」



潮田「佐藤も、階段降りる時は気をつけなね」



佐藤「…」







佐藤「起きろー!潮田ー!」



潮田「んんん…まぶしっ」



佐藤「朝だよ!空が真っ青だ!!雲ひとつない晴天だ!!」



潮田「朝からうるさっ」



佐藤「今朝はパンかご飯どっちにする?」



潮田「ん〜パン…」



佐藤「おお!なんと珍しい!何枚にいたしますかご主人様」



潮田「6枚…」



佐藤「了解しました!

ではまだ寝ぼけているうちに焼いて参ります!」



潮田「んー、(寝る)」





潮田「何、このパンの量」



佐藤「潮田が6枚って言ったんだよ〜」



潮田「え、言ってないけど」



佐藤「言ったよ。寝ぼけてたけど」



潮田「ええー」



佐藤「もう焼いちゃったんだからちゃんと食べてよね〜」



潮田「ご飯がよかった。」



佐藤「寝ぼけてた15分前の自分を恨むがよい」



潮田「佐藤を恨む」



佐藤「それは理不尽というものだよ」



潮田「はぁ…バターとジャムください。」



佐藤「はいよ!」



潮田「何これ、手作り?」



佐藤「そう!手作りトマトジャム!」



潮田「トマトか…」



佐藤「トマト嫌いは小学生までしか許されないんだぞ〜」



潮田「っ…」



佐藤「せっかく佐藤ちゃんが愛情込めて育てたミニトマトを、愛情込めて煮詰めたんだから、騙されたと思って食べてみてよ」



潮田「ええーでもトマトじゃん」



佐藤「いいから」



潮田「(味見する)…」



佐藤「どう?」



潮田「不覚にも、美味しい」



佐藤「これで潮田もトマト克服だ!」



潮田「生はまだ無理」



佐藤「はい、あーん」



潮田「だから無理だって」



佐藤「はい、あーん」



潮田「無理」



佐藤「あーん」



潮田「っ…あー、っ、ゲホッ、ベーッ」



佐藤「うわっ!きったねえな!」



潮田「まずいまずい無理無理無理」



佐藤「そんな〜こんなにも美味しいのにね〜トマトさん」



潮田「ジャムとしてだけなら、食べれる。」



佐藤「そう?それはよかった!!5瓶くらい作れたから!」



潮田「え。。」



佐藤「売りに出してもいいな〜」



潮田「いつそんな時間あるの?」



佐藤「(イケボで)時間は使い方次第で永遠にあるのである。」



潮田「あ、そうですか」



佐藤「またまた出ました塩対応!潮田だけに!」



潮田「本当に飽きないね、それ」



佐藤「一生飽きない自信しかない」



潮田「それはよかったです。」



佐藤「あ、そうだ。来月同窓会があるらしいんだけどさ、潮田どうする?」



潮田「…同窓会」



佐藤「そう。まあ同窓会って言っても10人程度でしょ。」



潮田「…佐藤は行きたいの?」



佐藤「まあ行ったら楽しいと思うけど、潮田が行きたくないなら行かないよ?」



潮田「…」



佐藤「でも去年も一昨年も行かなかったからな〜、今年は顔出しにでも行くか。

潮田どうする?」



潮田「…行く。」



佐藤「お。」



潮田「なに。」



佐藤「楽しみだね。」



潮田「別に。」






SE:居酒屋の環境音




佐藤「よっすーきたよー!」



潮田M「佐藤は人気者で、クラスのムードメーカー的存在で、潮田はその人気者になぜか絡まれてた根暗ぼっち。周りから見たこの関係性は、何年経っても変わらなかった。」



佐藤M「同級生に聞かれた。『2人って付き合ってるの?』と。潮田は答えた」



潮田「私がこんなだから、よくお世話してもらってるだけ。佐藤はいい友達だ」



佐藤M「と。それがどこか悲しくて、痛かった。」





佐藤「たっだいまー!楽しかったね〜潮田〜」



潮田「佐藤は飲み過ぎだよ」



佐藤「ええーそんなことないよー」



潮田「ほら、早くお風呂入っちゃいな」



佐藤「その前にゴロゴロするー」



潮田「そしたらそのまま寝落ちするじゃん。早く風呂に入れ。」



佐藤「ゴロゴロ〜ゴロゴロ〜」



潮田「ああ、もう」



佐藤「へへへ〜久しぶりにこんなにハメはずした〜


やっぱ楽しいね〜飲み会って。


また皆で遊ぼうよ〜ねえ〜潮田〜」



潮田「…」



佐藤「次はいつ遊べるかな〜」



潮田「…いいからお風呂に入ったら?」



佐藤「あれーなんか潮田暗いじゃん〜どうしたのさ、楽しくなかった?

ねえ〜スリスリ〜楽しくなかったの〜潮田〜?」



潮田「ほら、早く行きなって」



佐藤「えーじゃあ一緒に入る〜?」



潮田「バカじゃないの。早く入れよ。」



佐藤「潮田の背中流してあげるよ〜!」



潮田「あ、ちょっ、引っ張るなって!」



SE:潮田、車椅子から落ちる。



潮田「っっ!」



佐藤「っ!ごめん潮田!!本当にごめん!!大丈夫?!」



潮田「うん、」



佐藤「ごめん…っしょ。本当にごめんね」



潮田「大丈夫だって。」



佐藤「どこも打ってない?」



潮田「大丈夫です。よくあることじゃん」



佐藤「はぁ…酔いすぎてたわ。シャワーだけサッと入ってくるね。」



潮田「うん。」



佐藤「本当にごめん!」



潮田「…いいから。行っておいでって」



佐藤「10分で戻ってくる!10分ね!」



潮田「はいはい。」



佐藤「いや、5分、いや、4分!」



潮田「早く行けよっ」



佐藤「行ってくる!」



潮田「…」




SE:シャワー


(水の音に混じって佐藤の歌声も聞こえてくる)




佐藤「ただいま戻りました!タイムは?!」



潮田「5分28秒」



佐藤「うそ?!3分ちょうどの歌に合わせたのに!」



潮田「3分のポップ曲をバラード調に歌うからじゃない?」



佐藤「あー感情込めすぎちゃったか〜それは汚点だったな。


一応お風呂沸かしてる最中だけど、潮田はどうする?シャワーだけ?お風呂にもつかる?」



潮田「うーん、つかろうかな」



佐藤「潮田あんま飲んでないしね」



潮田「うん」



佐藤「じゃあ今のうちに潮田セット用意しておくわ。」



潮田「あのさ、」



佐藤「ん?」



潮田「佐藤はなんで私の面倒を見てくれるの?」



佐藤「え、」



潮田「私がかわいそうだから?車椅子で不自由な潮田さんがかわいそうで、介護が必要だから?」



佐藤「なにいきなり」



潮田「同情で一緒にいるなら、もうやめていいよ。」



佐藤「同情じゃないよ」



潮田「同情だよ!!最初っから佐藤は同情で近づいてきたじゃん。

いつもクラスで1人の潮田がかわいそうだから友達になってあげよう。

放課後一緒に帰る人がいない潮田がかわいそうだから一緒に帰ってあげよう。

バイト先で階段からこけて歩けなくなった間抜けな潮田がかわいそうだから面倒を見てあげよう。

車椅子で簡単に遊びに行けない潮田を1人にするのがかわいそうだから、自分も遊びに行くのを我慢しよう。

宇宙飛行士になる夢も、潮田を1人にしちゃうから、それはかわいそうだから諦めよう。」



佐藤「っ…」



潮田「もううんざりなんだよ!!こんな同情窮屈なんだよ!!」



佐藤「…同情なんかじゃないよ。」



潮田「だったらなに」



佐藤「……。そっか…ずっと同情で一緒にいると思われてたんだ。


でもそうだな。最初は少しだけ同情もあったのかもしれない。」


潮田「ほらね、やっぱり」



佐藤「でも近づいた本当の理由は同情よりも最低だよ。」



潮田「…」



佐藤「最初は自分のために近付いたんだよ。


図体でかいし、普通に目立つし、クラスではムードメーカーとか言われてたから、明るく振る舞ってたし。明るくいる方が楽しかったから。

でも、たまにわちゃわちゃしすぎるのも疲れちゃってさ、

消えたい時もあって。そんな時に潮田を見つけて、潮田といたら目立たずに過ごせるかなとか思ったんだけど、私バカだからさ、めちゃくちゃ逆効果で(笑)

でも、潮田といる時は目立っても全然気にならなくて、

潮田といるときの自分が一番楽で、だから、

同情とかじゃなくて、自分のために潮田に近付いたんだよ。」



潮田「そんなの勝手だ」



佐藤「そうだよ、勝手だよ。すごく自分勝手だってわかってる。

でも、私だって透明化の能力が欲しいと思うことだってあるんだよ。」



潮田「それなら勝手に透明人間になりなよ!私を巻き込まないでよ!!」



佐藤「巻き込んだつもりない」



潮田「佐藤にそのつもりはなくても、私にとっては大巻き添いだよ!」



佐藤「だったら最初っからそう言ってよ!そうしたら近付いたりなんてしなかった!」



潮田「言いたかったよ!でも言い出す機会がわからなかった!」



佐藤「じゃあ潮田は1人の方がよかったの?ひとりでいる方が幸せなの?!」



潮田「そうだよ!」



佐藤「そうしたらずっとひとりだよ!死ぬ時もひとりだよ!!ずっとずっとひとりだよ!!!」



潮田「それでいい!そっちの方がいい!!

同情で一緒にいられるくらいなら、1人で消える方が何百倍もマシだ!!」




間。




佐藤「塩と対になるのは胡椒だし、塩ラーメンの隣には醤油ラーメンだ。」



潮田「…いきなりなんの話」



佐藤「甘みの反対は苦味とか酸味だし、誰も「しょっぱさ」とは言わないよ」



潮田「話を脱線させないでよ」



佐藤「でも砂糖と塩は、味はすごく違うかもしれないけど、両方とも白くて細かくて、似てるんだよ。」



潮田「だからなんだよ!」



佐藤「だから!!…」



潮田「(荒い息)」



佐藤「…潮田セット、お風呂場に置いておくから、今日はネカフェにでも行く」



潮田「…」



佐藤「おやすみ。」







佐藤M「人はいつだってポッカリとあいた穴を埋めてくれる人を探してる。

佐藤にとってそれは潮田でも、潮田にとってその相手は佐藤じゃない」



潮田M「人はパズルだ。穴があってそれを埋めてくれる人を求めてる。


穴を埋める側に回っちゃったら、誰が自分の穴を埋めてくれるんだろう?

穴しかないパズルピースは、いつ、完全になるのだろう?」




潮田M「佐藤は、1週間帰ってこなかった。」




SE:電話の呼び出し音



佐藤「(留守番電話)はい!こちら佐藤ちゃんの番号だよ!!佐藤ってどの佐藤だよ!佐藤さんは多いんだよ!って思ったそこの君。とりあえずどの佐藤にでもいいから用件を言いた前!」



潮田「…。佐藤、この間は…ごめん…、、、やっぱ削除。はぁー…」





潮田「飛行か透明化。今は、飛行、かな」




SE:ピンポーン




潮田「はーい!」




SE:ドアが開く




佐藤「…」



潮田「…佐藤」



佐藤「ただいま」



潮田「…。生きてるよ」



佐藤「見たらわかるよ。霊感ないもん、私」



潮田「なんで帰ってきたの?」



佐藤「思ってたよりもちゃんと生活できてるね」



潮田「っ…」



佐藤「なんか、悔しいな」



潮田「…」



佐藤「ネカフェも飽きたし、いろいろ泊まってみたけど、どこも窮屈だったから戻ってきた。やっぱり潮田の隣にいる自分が一番楽で好きだし」



潮田「…」



佐藤「だから、同情とかじゃなくて、自分勝手な理由で潮田の隣にいる。

潮田がいくら同情だと思って迷惑とか窮屈とか思っても、潮田の足枷になったとしても、隣にいる。」



潮田「もう身体という枷がある」



佐藤「だったらそれをさらに重くさせるよ。」



潮田「迷惑なやつ」



佐藤「知ってる」



潮田「…この間は感情的になってごめん」



佐藤「…こちらこそ。お酒も入ってたから余計にいらんこと言った。」



潮田「あんまり飲んでないはずだったんだけどな」



佐藤「この間さ、砂糖がどうとか、塩がどうとか言ったじゃん」



潮田「言ってた。佐藤の考えたわけのわからない比喩でしょ、どうせ」



佐藤「うん。聞いてくれる?」



潮田「うん。」



佐藤「甘みの対義語は苦味とか酸味とか言うのに、砂糖は苦味でも酸味でもない塩と組まれることが多い。でも塩は胡椒とも組まれるし、塩ラーメンだったら醤油ラーメンとかと組まれるでしょ?」



潮田「もうすでに話がどこに向かってるかわからないけど、どうぞ続けて」



佐藤「でも塩って胡椒とか唐辛子とかと違って別に辛い!!って感じの味じゃなくて、しょっぱさって砂糖を加えたらかき消されるんじゃなくて、あまじょっぱいって言う味覚にグレードアップされるんだと思うの。」



潮田「お、おう」



佐藤「例えば、甘すぎるところには酸味で中和するし、辛すぎるところにも甘さで中和する。でも塩+砂糖は1にならない。2になるんだ。

味はこんなにも違うのに、見た目はそっくりで、たまに間違われて料理に使われてしまったりする。個性が強いんだよ、二つとも。」



潮田「結局なにが言いたいの?」



佐藤「世界はいつも2種類に分けられるとか言うけどさ、砂糖と塩は2種類の1つじゃないんだよ。半分じゃないんだよ。それぞれが1なんだよ。私たちもそうなんだよ。飛行と透明化とかどちらかを選べじゃないんだよ。両方選びたい時もあるんだよ。だから、だから」



潮田「だから?」



佐藤「結局なにが言いたいんだっけ?」



潮田「知らないよ!」



佐藤「つまり、佐藤は潮田といる時の佐藤が好きで、潮田も佐藤といる時の潮田を好きと思ってもらえるように佐藤も努力するということで。

別に2種類に当てはまらなかったら3種類目を作ればいいし、

居場所なんて自分がここだって思ったところにできるんだ。

佐藤の居場所は潮田の隣なんだ。」



潮田「そう。」



佐藤「そう。」



潮田「…佐藤は私の足枷になるって言ったじゃん」



佐藤「言った。」



潮田「だったら私も佐藤の枷にならないとフェアじゃないよね」



佐藤「そうだね。え?」



潮田「結婚してよ佐藤。潮田と結婚して、指に枷をかけさせてよ。

潮田が、佐藤の枷になるように。」



佐藤「っ…うん」




潮田M「世界はいつも2種類に分けられる」



佐藤M「正義と悪」



潮田M「勝者と敗者」



佐藤M「光と闇」



潮田M「生と死」



佐藤M「あるか、ないか」



潮田M「でも空飛び人間と透明人間が戦っても勝敗がないように、

2種類にはまらない時もある」



佐藤M「パズルピースの穴は複数ある時もあるし、

2ピースで完成するわけでもない」



潮田M「でもやっぱり、2って強くて、1よりも強くて」



佐藤M「やっぱり大富豪で一番強い数字だけあって」



潮田M「話が脱線しちゃったけど、


ふたつがひとつになって初めて完全になったり」



佐藤M「ふたつがひとつになって初めて相殺したりもするから」



潮田M「私たちの世界の2種類は砂糖と塩で」



佐藤M「佐藤と潮田で」



潮田M「透明人間の如く姿を消せれば」



佐藤M「枷があるからこそ自由で、自由に鳥のように大空だって飛べちゃうし」



潮田M「結論から言うと、佐藤は」



佐藤M「潮田は」



潮田M「潮田を」



佐藤「佐藤を」



↓同時に↓



佐藤「愛してる」

潮田「愛してる」



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