攻防戦
アビラン都市と対峙するラカン連合国の砦が見えてきた。
拡声器を使って小隊長は、「諸君らは、自由だ。あの砦に帰っていいぞ」
1人が降りだすと、徐々に降りる人が増えだして「あ!わが国の旗だ」を切っ掛けに走りだす者が現れた。
しかし大半が気だるそうに、砦に歩いている。
その顔には、帰ると叱責されてなんらかの罰が待つ、そんな諦めムードで重い足取りであった。
そんな兵を見送ると、輸送トラックとバイク隊は急いで引き返した。
海からの補給路が絶たれたと知ったら、奪還に出てくるのは分かっていた。
ラビンの港町では、侵攻してくるだろうラカン連合国の進攻ルートに、隠しカメラを幾つも設置していた。
そのカメラに撮られたポイントをG1からG10まで、その名で決められルート監視班の連絡を待って。
火砲隊がそのポイントに【火砲】を設定して、撃ち込まれる作戦になっている。
そんな芸当が出来るのも、射程距離が伸びたせいだ。
魔術士の集団がいようと、こちらが見えない所から攻撃されるとは思ってもいないだろう。
総合管理室のすみでルート監視班が振向き、「輸送トラックとバイク隊が戻って来ました」
「分かった、そのまま監視を続けてくれ。正門の第3小隊に輸送トラックとバイク隊が戻ったと伝えてくれ」
「了解しました」
それは夕暮れ時にG10を監視していた監視者が、「敵兵を発見、ぞくぞくと進攻してます」
「G3まで引き込めろ、そして火砲隊にも準備するよう伝えろ」
「G3に敵兵が現れました」
「火砲隊にG3からG10まで攻撃開始と伝えろ」
「了解。火砲隊、火砲隊、G3からG10まで攻撃開始。もう一度言う。G3からG10まで攻撃開始」
遠くの方で爆発音が聞こえだした。その数は次第に増していき、覗き窓から森方面に赤く照らされている。
もう外は暗くなったが火事が発生したせいか、空も赤く照らされている。
防衛ラインの近くの木は伐採されて、港町に火事が広がらないだろう。
しかし山まで広がると被害もそれなりに大きくなる。
「消火ドローン隊に山に広がるのを阻止するよう伝えてくれ」
「了解しました」
「ポイントに敵兵が動く気配がありません」
「火砲隊に中止命令をだして、ドローン隊に防衛エリアの探索を、見つけ次第攻撃をしろと伝えてくれ」
防衛エリアに居れば敵対心があると思っていいだろう。
防衛エリア外ならそのまま見逃す。これも煉り込まれた作戦の一部だ。
夜が明けたあとに、バラン帝国の兵が外にでて凄まじい惨状に驚いていた。
そしてバラン帝国の兵の仕事は、死者を運びだすこと。
輸送トラックの荷台に、死体が無造作に放り込まれる。
そしてオーランド王国の兵は、負傷者を手当てして聞き取り調査をしている。
俺は戦闘が激しくなった時に、建築重機班に港町から離れた場所に大きな穴を掘るよう命じた。
なのででかい穴に、次々に死体が投げ込まれている。
そして、今回の戦いに並行してもう1つの作戦が実行されている。
バラン帝都の港と羅漢大陸の間の海で輸送船は拿捕して我が領土までえい航。
ドッグに入れて魔改造して、商船として使う予定。
軍船も同じく拿捕して、バラン帝国に引き渡す。
この一連の作戦は彼女ら4人が陣頭指揮に立って、ドローン機を使って例の睡眠弾で制圧している。
我が領土は商船と物資が増え、バラン帝国は軍船と武器が増える。
そして彼女らには、シランを中心にバラン帝国の民の脱出計画に加担させている。
農民が多いが、船と大型ドローン機を使って脱出が順調に進んでいる。
そして第2陣の建設重機がバラン帝国に入って行った。
未開の土地が短時間で開拓が進み、我が領土が主導をにぎって新しい栽培方法が始まっている。
未開の土地を開拓する為に、バラン帝国は借金を我が領土にすることも承諾済み。
書類にも正式に皇太子のサインされて、開拓された土地は皇太子の直轄地になる予定。
その土地に脱出民が送られる仕組みにもなっている。
既に先行した民の農業が始まってる。
・ ・ ・ ・ ・
「何故こうなった。食料は1週間しかもたないぞ」
「サラン商業連合国は物資の横流しでもしてるのか?」
「なに言うのですか?失敬な、ターラ国も船が全然来てませんぞ」
「それにしても忌々しい事に、人質をすぐに帰して来る。帰って来た兵は毎晩うなされて使いものになりもしない」
「あの時に10億トルクで手を打っていれば、こうも惨めなことにはならなかった」
「あの時に、はした金だとあなたも笑って居ましたよね」
「そうだったか、覚えておらんな」
2人は取っ組み合いのケンカをする始末だった。
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