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03

 山や森に籠もることが多くなった。

 数日――といっても1日2日程度であるが山で過ごす事もあった。比較的居心地の良い木の洞を見つけることが出来たのでそこで過ごした。とは言え雨を防げるほどでは無いし吹きさらしだ。特に夜は冷えた。





 その日もネリネは山に向かった。昨日は久しぶりの大雨で家にいたため父親に暴言を吐かれ叩かれた。母親はそれを冷めた目で見ていた。

 昨日叩かれた腕が腫れてジクジクと痛む。それでも食べるものが無いので行くしか無かった。


「あった……」


 今日は思いのほか運が良いのか早々に食べられる野草を大量に確保できた。ただ昨日の雨により地面がぬかるんでいて非常に歩きにくい。

 家からくすねてきた塩と魔法で出した水を持ってきた小鍋に入れ火にかける。そして十分に茹でて食す。


「不味い……青臭い……」


 下処理も調理法もお粗末なものなので美味しくは無い。ただ今までの経験から食べられることは分かっているのでお腹を膨らませるために食べる。

 食べ終えるとまた食料探しを再開する。


 その後食料を探して歩いていると、茂みが揺れたことに気付いたネリネであるが、この辺りの森には肉食性の大型獣などはいないこともあり特に注意せずに近づいていく。

 茂みから出てきたのは一匹のウサギであった。そのウサギはネリネの方を見るとじっと視線を動かそうとしなかった。それを見てネリネは少し考えた。


(もしかしたら捕まえられるかな? スキルは軍人関係だといっていたし、もしかしたら出来るかも……)


 そのウサギをネリネはスキルを使用して捕まえてみようと思った。

 「スキルは神の恩恵であり一部を除き適切な条件や状況下にて使用方法が持ち主に理解できるようになっている」というのが常識だった(その一部のスキルに『錬金術師』があるのだが)。そのためネリネは見よう見まねで構えをして兎に近づいた。「捕まえるぞ」という意識で近づけば何かしら理解できるかもしれないと思って。

 しかし、近づいたことに気付いたのかウサギは逃げ出してしまった。


「あ、待って!」


 急に逃げ出した対象を慌てて追いかけるネリネ。もしスキルを使用すれば何かが変わるのでは無いか。村での扱いなどが良くなるのでは無いかと言った思いがネリネの中にはあったため、何も考えずにすぐに追いかけると行った行動を取らせた。


 結果として見失っただけで無く、道を確認せずに追跡したため迷ってしまった。しばらくしてそのことに気付いたネリネは追跡を止めて現在位置の把握をはじめた。しかしここは森の中であり見えるのは木や草ばかり。木々の間隔は広めで、日本の森林に比べれば遠くまで見えるが、それでも限度がある。

 現在時刻と太陽の位置からおおよその方角は分かるものの完全に迷子になってしまった。


「少しでも木の少ないところがあれば……」


 木の少ないところまたは高台から村の位置を確認しようとした。

 よく、遭難したらその場から動くなと聞くが、あれは救助が来ることを前提としたものである。勿論ネリネが居なくなったからと言って救助など来ないので自力で村に戻る必要がある。


 そうして歩いていると少し開けた場所に出ることが出来たのだが、そこはネリネの期待とは少し違う場所であった。

 そこは、昨日の大雨で地滑りが起きたのであろう、狭い範囲ではあるが一面木々が倒れ土砂に埋まっていた。崩れた土砂は既に固まりつつある。


「何だろう?」


 むき出しになった地面に妙なものが見えた。土で汚れているが何か人工物のようなものが崩れた地面から顔を覗かせていた。

 本来こういった所には近づくべきでは無いのだろうが、興味の方が勝ったネリネはそれに近づいていった。

 表面に付いた土を手で拭うとやはり人工物――葉っぱのように緑に塗装された金属のようであった。

 何かが書いてあるようだがネリネは農民の子であり学がなく文字は読めなかった。ただ矢印のようなものの存在は認識できたそしてそこに取っ手がある事も。


(これは触らない方が良いよね……)


 そうは思ったもののなぜか触ろうとしている。ネリネの内にあるスキルが反応しているのだと言うことは本人も分かっていない。

 そうして理性的な部分とスキルとがせめぎ合い手を伸ばしては引っ込めると言うことを数回繰り返す。

 ふとした拍子に足場の悪いところでかがんでいたせいで足を滑らせてしまう。とっさに手をつくが昨日父親に叩かれた痛みで踏ん張ることが出来ず倒れ込んでしまった。


「痛っ! ――あっ!」


 ネリネは転んだ拍子にもう片方の手で取っ手を思いっきり動かしてしまった。ただ、こんな所に埋まっていたものだ。どうせ壊れていたのだろうと思ったがすぐにその認識を改めることになった。


「――えっ!?」


 その取っ手のあったところを含めた四角い部分がガチンと言う音共にせり上がり隙間が開いたのだ。

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