最後の恋=LOVE?
「ひろ…」
背中越しに声をかけた。でも彼は、もう振り向いてくれなかった。
―――――
学生だった私と、社会人だった彼。
異動の辞令でオーストラリアへ最短で3年間、行くことが決まったと話してくれた。
すぐに一緒にいけないけど、聞いたときには「パスポート取って、英語の勉強して」と考えていたのに。
彼の口から出てきた言葉に、すぐに反応が出来なかった。
「これから先、未来ある君を縛り付けることは出来ない。帰ってくるのを待たなくて良い。別れよう。」
※
あれから5年。社会人になった私は地元の企業へ就職した。
今日は同期の子達と合コンに行く。
恋愛から、遠ざかっているけど。いつまでも連絡先も知らない彼をのことを考えていても仕方ないってやっと前を向いて言えるようになった。
なのに、神様は残酷。
合コンするお店について、顔を上げた瞬間。
「ひろ…」
「紗枝?何でここに……」
回りの子達から、知り合いー?なんて声をかけられたけど。その声に反応出来る余裕なんてない。
「ごめん。私、帰るね。」
お店から、走って飛び出した。
あてもなく走ってから、同期の子に謝りの連絡をしようと携帯電話を出そうとした瞬間。
右腕を引っ張られて振り返る。
そこには彼がいた。
「何で逃げるの?」
「別れた彼氏のいる合コンほど、無意味なものはないでしょ。離して。」そっけなく答えた私。
「それでも。俺は紗枝に会えて嬉しいよ。」
返答に困った私を見て、彼は目を伏せてしまった。
「あれ?これ…」
彼が目線を下げた先には私の首筋。
そこには、彼が誕生日にくれたネックレス。
さらに目線を下げた彼は、私の右腕にある腕時計を見つめている。この腕時計もクリスマスに彼から貰ったもの。
顔を上げた彼の顔はまっすぐに私を見た。
「紗枝。あの時は待っててくれ何て言えなかったけど。待ってて欲しいと思ってた。俺はあの時から少しも気持ちは変わってない。もう一度、やり直してもらえないかな?」
「今更何言ってるの?私は、日本で待ってる事なんて考えてなかった。」
「…ごめん。」
「オーストラリアに着いていく事しか考えてなかった…」
そう言葉にした瞬間、彼に抱き締められた。
「そっか。ごめん。紗枝好きだ。結婚しよう。」
涙が溢れてきて、ちゃんと言葉に出来ていたかわからないけど。
「はい。お願いします。私もひろが好き。」
そう答えたんだ。