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イミルデ・ルシアの夜  作者: Sarah Bun
8/13

6. 初っ端不穏。

野盗と野党って全然意味変わってきますよね。

ーーーKF7汚染地域α 野盗の拠点 探索83日目--グレン・コーナミーーー


野盗の拠点を発見。

規模は凡そ50~60人。 防衛設備は粗末な防壁と門だけだ。

防壁に多数の穴を確認。 潜入した。

潜入したのは雑用係の作業場だった。

この野盗らは数々の略奪、殺害行為を繰り返しているようだ。

拠点の中央部には巨大な自然岩があり、その穴に中枢部があるようだ。

門番を二人排除。 岩への潜入を開始する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「 !? 敵d___ッ!」


敵、KIA。


門番は槍と剣を持っていたが、中は狭そうだったので剣しか持ってきていない。


この剣はどうやら片手剣なようで、いつもは両手で持つ武器しか使わないので不安だったが、油断し切った敵の首をへし折る程度なら余裕だった。


「おーいぃ ジャック。 さっさと持ってコッ!?」


それにしても弱い。 中枢部にいる奴らなら精鋭だと思ったのだが……。


岩の中の空間は想像以上に広く、人が4人ほど並んで歩けるほどだった。

アリの巣のように通路と部屋に別れており、略奪したものがたくさん置かれていた。


何処かに略奪した「ヒト」も閉じ込められているのだろうか。



酒臭いアホ2人の死体を鎧板の山に放り込んで哀れな奴隷達を救出するか、と思った矢先、


岩の外から大きな爆発音が聞こえた。


直後、外から男達の怒鳴り声が聞こえてくる。


「傭兵だ!! 傭兵が攻めてきたぞ!」





傭兵。 主に金を対価にクライアントの要求を叶える、武装集団。

この中世ヨーロッパに似た場所ではやはり戦争の主力は貴族に雇われた傭兵団なのだろうか。

だが、先程聞こえた爆発音は今までに聞いた事のあるどの爆発音とも一致しない。

あまり先入観に囚われていると、致命的な踏み間違いをしてしまう可能性は高い。



「おい、行くぞ! 下の奴らに全部取られちまう!」


これにはさすがに精鋭(?)達も異常を感じたのか、速やかに各々の武器を持って外に走って行った。



そして、岩の中は空っぽになったという事だ。






これ幸いと虱潰しに調べてみたがどうやら「戦利品」は1番中央の宴会場の隣にあるらしい。


他の部屋は皆、武器庫やら居住地スペースだった。

それらの保管部屋は他の部屋と違って、扉がついており、鍵がかかっていた。


いつもならSAAで撃ち壊すが、弾は5発しかないのでピッキングすることにした。


因みに、電子ロックが発達していたイギリスでは一時期物理的な錠の方が安全であるというのが話題になり、その関係で私はピッキングができる。


子供だましのような錠を13秒で開けると、中には予想通り、いくつかの檻が置かれていた。


どれも若い女だ。

ひどい顔をしている。

私を見て怯える者、泣き出す者、一切動かない者。


「おい、傭兵が助けに来た。 いつでも出れるようにしておけ。」


希望を抱く者は、まだここに連れてこられてから日が浅いのだろうか。

一切反応しない者もいる。


檻の中からひとりが話しかけてきた。


「……貴方は傭兵さんなの?」


歳は10代後半ぐらいだろうか。 ブロンドの長い髪はすっかりボサボサで、汚れている。


「いや。 通りすがりの軍人だ。 遠い国のな。」


「軍人さん? 私ここから出れるの?」


「待て、静かに。 まだ敵が残ってるかもしれない。」


「ご、ごめんなさい。 あの、傭兵さんはいつ来るの? 」


良く考えれば、傭兵が勝てると決まっているわけでは無かった。

私にしては少し迂闊な発言だった。


いや……でもあいつら明らかに弱いし、酔っ払ってたしな。

む! 油断大敵油断大敵。


「確かではないが、時間の問題だろう。 私は、少し加勢してこようと思う。 また会おう。」


逃げるように部屋を出ようとしたが、女はまだ用があるようだ。


「あの、最後にその……布を取ってくれませんか。」


確かに、皆裸だ。


「わかった。気づかなくて申し訳ない。」


「いえ、お気になさらず……ッ!危ない!!」





女の注意喚起が無ければ一撃喰らっているところだった。


いつの間にか後ろに立っていた奴から剣戟が飛んできた。



「…ック! あぶねえ。 いつからいやがった。」


咄嗟にサイドロール。 敵は頭から大きな布を被っており顔がわからない。


「……グズばっかりかと思ったが…ッフッフ…これは楽しめそうだ。」


声は、中性的だが、男である事を伺わせる。


男は、ッフッフと笑いながら両手に持った片手直剣2本をクルクルと弄んだ。


「お前は野盗の一味では無いな。誰だ。」


「誰だろうなぁ~?」


野党ではないな。

だとしたら、随分と臭いな。


「参ったな。まだまだよく分からん事ばかりなのにもう陰謀に巻き込まれるのか。」


「安心しろよ。 お前、死ぬから。」


そういうと、男は直剣を下に鋭く振り払いこちらに飛びかかってきた。


「ッ!なん、だそれ!!」


どこぞの皇帝のようにバレルロールしながら、胴体を切断しようとしてきた。


下を転がることで何とか回避したが、男は止まらない。

振り向きざまに、飛び上がりながらコマのようにこちらに3連撃。


まるで、自分の都合で重力を弄ってるかのような動きだ。


もしかして、ここの敵は皆こんな動きをするのか!?



だが、度肝を抜かれたのは最初だけで、しばらく攻撃を弾くと相手の動きがそこそこ直線的である事に気づいた。

見覚えがある。

まるで、ジャンプキットだ。


ただ、この男はそこそこの手練なのか、稀にイレギュラーな動きを入れて対応できないようにしている。


「なかなかやるな! だが遅すぎるぜ!」


「抜かせ。 叩っ斬ってくれる。」


だが、落ちて来る前に戦った女と比べればかなり楽な戦いだ。

あれが、桜の花びらだとすれば、この男はたんぽぽだ。


「ッッハァッッ!!」


だとすれば女には通用しなかった技が通用するはず。


「オラッ グッ!?」


上段と見せかけての突進入り込みはもう見切った。

男は懐に入り込んで、胸を突き刺そうとする。


そこであえて踏み込み、肩を突き飛ばす。


確実な重心移動。 しなやかに転回。


そして、


「ラッァァァ!!!!ッッ」


兜割るッ!!


「ァァアアアクソッ!! あぶネェッ!!」


惜しい。

まるで、逆噴射したかのように無理やり後退して逃れた。


だが、振り下ろしの剣は次を持つ。

故にバックステップは隙になる。


「ッシィ!!」


外した剣の勢いそのまま剣をまっすぐに、前へと踏み込む。

串刺だ。


「ンナァアァァ!! くそガぁ!?」


それすらも、体を横向きに弾き飛ばして避けた。


それと同時に、聞きなれない甲冑が擦れる音が入口から大量に近づいてくるのが聞こえてきた。


どうやら、傭兵が勝ったらしい。


負けを悟った男は地面転がり、距離を取った。


「はぁッ。 お、お前なかなか強いな。 今日はこれぐらいで許してやる。」


そういうと、懐から赤い石を取り出し握り潰そうとした。


「逃がすか!」


咄嗟に、腰から抜いたSAAの一撃が命中したかどうかは、突然現れた赤い雷光に潰され、わからなかった。


「全く。無茶苦茶に小型化しやがって。 ちっこい石でテレポートなんぞ…。」



とにかく、男は逃げ仰せてしまった。


「あ、あの、大丈夫でしたか?」


そういえば、今の戦闘は全部女達に見られていたのか。

いつの間にか、女が皆こちらを向いている。

目をキラキラさせながら。


別に、ヒーローになりたい訳では無いのだが。


「あーまあ、大丈夫だ、お蔭さまでな。 ありがとう」


現に彼女の注意喚起がなければ傷を負っているところだった。


「いえ、間に合って良かったです。 軍人さん、お強いんですね!」


「あーまあな。 軍人になって結構長いしな。 ほら、布だ。」


部屋の隅に積まれていた戦利品から布を何十枚か引っ張り出して檻の中に入れた。


「あー、ここで傭兵たちと出くわしたらめんどくさくなりそうだから、私はそろそろお暇するよ。 一応鍵を開けておくが、念の為中にいておけ。」


「ありがとうございます。また、お礼をさせて欲しいのですが、お名前は? 」


「……貴族のご令嬢様に名乗る程のものでは無いよ。 今はな。」


そう言って、部屋をあとにした。

そういえば、まだ野盗のボスとやらを見かけていないな。


魔法。

銃よりも低コストだが、魔法使いの養成には時間がかかる。

しかし、一騎当千の技、という訳でもない。

興味深い。

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