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イミルデ・ルシアの夜  作者: Sarah Bun
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4. パターンKF7変異体

グロいかもしれません。

ーーー日本諸島…じゃねえな。どこだここ。まあいいや。探索82日目--グレン・コーナミーーー


視界良好。いい朝だ。

どうやらヴァイタルAIは汚染源を別の物質に切り替えることによって体の出力を保ったらしい。

今、私の眼下には見たことも無い大地が広がっている。


あ、信じられないかもしれないが、私は未だ落下中だ。

私も何が起こっているかはわからない。


現在位置は、目測で約上空3,4kmと言ったところだろうか。


着地(激突?)予定地点はどうやら森林のようだ。

これは期待できそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は一応学者でもあるので少し物理の話をしようと思う。


とはいえ、それほど難しくはない。

今どきの小学生なら、みんな知っていることだ。


惑星上で生活している以上、人間は重力という力から逃れることはできない。



重力とは、力だ。


力とは、簡単に言えば、モノを『加速』させる現象だ。

であるからして、何の支えも持たない私のような者は、惑星に惹き付けられるように『加速』する。


しかし、惑星には大気というものが存在する。

普段日常生活を送る時は、気にも留めないこの空気だが、高速で動くモノに対してはこの上ない障害物に成り代わる。


もちろん、高速で下向きに動く私にも空気抵抗はかかる。


式にすると


重力は、 F=mg (m 私の体重 g 重力加速度)

空気抵抗は、 F=kv (k 空気抵抗係数 v 落下速度)

(Fとは、forceの頭文字で、「力」という意味だ!)


ここで押さえておいて欲しいのは、モノにかかる力が釣り合うと(足してゼロになると)、そのモノは静止、若しくは等速運動するという事だ。(加速させる力が無くなったからだ!)


また、私の体重は短時間では変わらない、惑星が変わらない限り重力加速度は変わらない、体勢を変えない限り空気抵抗係数は変わらない、ということも頭に入れておいた上で、もう一度式について考えてみよう。




私 というモノについて運動方程式(私にかかる全ての力を足し合わせるのだ!)を書くと、


mg - kv=ma (aとは最終的に私にかかる力を表している!)(重力mgは下向き、空気抵抗kvは上向きにかかっているのだ!)


さっき言ったようにmは、私の体重を表していて変わらない数字だから、この中でコロコロと大きさが変わるのは落下速度vだけなのだ。


つまりこの式は、重力によって私の落下速度が上がるにつれて、空気抵抗による力kvが強力になっていくということを表している。


そして、私の体がある一定の速度に達すると重力と空気抵抗の力が釣り合う(aがゼロになる瞬間だ!)ようになるのだ。


力が釣り合うということは、加速しないということ。 つまり、同じスピードで落ち続けるという事だ。(これを終端速度というのだ!)













おい、読み飛ばしてただろ。



私が言いたかったのは、今私は上空3,4kmのところにいて、現在時速160kmで落下しているという事だ。






あと、1分も無い。



「ヴァイタルAI! ジャンプキットにエネルギーをチャージ! 30秒後に起動準備!」


[了解

チャージエネルギー予定量…………2.5MJ]


「十分だ!]



まさか、空挺訓練の成果が試される時が来るとは思っていなかったが、準備はバッチリだ。


[ジャンプキット利用可能]


コツとしては、真下に噴射しないこと、下半身全体を使って降りること。


エネルギーはケチらず斜め上向きに噴射し、速度に応じて角度をつける。


エネルギーが足りない分は風に乗ってグライドする。


そして、適度に力を抜いた状態で両足から滑り込むように地面に着地。




……ん?



「ちょっと待て、森はどうやって降りるん ぶぉ」






枝はかなり硬かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




どうやら、この森林は針葉樹林なようだ。


下草は少なく、所々に淡く発光する花が生えている。


今のところ動物の姿は見られないが、耳を澄ませば甲高い野鳥の声が聞こえてくる。


木々どうしの間隔は広く、そこらじゅうに木の実が落ちている。


気候としては我が故郷イギリスに似ているだろうか。




しばらく太陽の方向に歩き続けた。

ここは針葉樹林帯。

現在の温度はセ氏13度で、日は傾き出している。

つまり、冬になると急激に冷え込む可能性は非常に高い。

少しでも南下し、早めに人が住む場所にたどり着きたい。


30分程歩き続けると、緩やかな下向きの傾斜地にたどり着いた。

これは、運が良いかもしれない。

そんな事を考えている時だった。




「なあスローウ。そろそろ村に帰った方がいいんじゃないか。 今日の成果は悪くないし、それに最近は野党が近くに住みだしたかも知れない。」


「確かに……そうだな。 暗い森で魔狼から逃げるのも嫌だしな。 よし、帰るぞ。 エヴィ、大丈か。」


「大丈夫。まだいけるよ。 兎、持とうか?」


「いや、俺は大丈夫だ。 狩人は常に身軽な状態でいることが大切だ。 それ以上持つといざと言う時に置いて行っちまうぞ、エヴィ」



見たところ狩人のようだ。


茶色の布の服の上に、動物の皮で急所を補強している。 小さめのバックパックに木の枝を括りつけてカモフラージュにしている。

肩に短弓と矢筒を固定していて、手には抜き身の鉈が握られているが、四人のうち二人が槍を持っている。

この森の動物は随分と好戦的らしい。


咄嗟に木の根で隆起した所に隠れたが、どうやらアウトローの類では無いらしい。


これなら、話しかけても大丈夫そうだ。


そう判断し、姿を見せようと影から出ようとした瞬間。



_____wwWOOOOOOOOOOOooooonn


数匹、否、十数匹の狼の鳴き声が森中に響き渡り、幾重にも反響した。



「しまった! 魔狼だ! さあ、包囲される前に行くぞ!」


そう言って、狩人4人組は下の方に走って行ってしまった。




どうやら、獣は私の事を1人はぐれたカモだと判断したらしい。



「「「uuuuwwwwuu」」」


あっという間に四方八方を狼に包囲されてしまった。



毛色は黒から茶色まで様々。 先頭は、一際大きい赤い狼が私の正面で牙を剥き出しに威嚇している。


どうやら、毛が赤いのではなく灰色の毛が血で染まって赤色になっているらしい。



「手厚い歓迎だな。 野党ってのはお前らか?」


「UWWWーVoW!!」


「あー違うな、わかったわかった」


違うらしい。


しかし、困った。 先程の落下で槍はどこかへ行ってしまった。


武器は、SAA5発と……作業用のナイフくらいだ。


思い出したように腰のナイフを抜き、腰を落とす。



そうこうしているうちにあちら側も逃げ場を塞ぎ終えたらしい。


唸り声をあげながら、ジリジリと距離を詰めてくる。








湿った土と石が弾ける音。


8時方向。







「ハッ!!」


咽袋目掛けて迫る狼頭を振り向きざまに殴りつけ、同時に襲いかかる赤狼の胸を後ろ蹴りで遠ざける。


しなやかなステップ、堅実な重心移動。


息をつく暇はない。


3時の狼を受け流し、

足首を狙う9時の狼の攻撃をステップでいなす。




肉一片、血一滴もくれてやるつもりは無い。


退避が遅れた狼から、捕まえて胸にナイフを突き立ててやる。




一匹殺るごとに身を刺す敵意が増していく。


すると必然的に、動きの速い狼だけが生き残る。

狼の数が半減した時、急に狼による連携同時攻撃の精度、密度、頻度が増加した。





「くッ! 弱肉強食ってか!」



3時から脚狙いの噛みつき。

避けると同時に、3時を踏み台に3時から咽袋狙い。

同時に12時からは、腰部への体当たり。


それら全てを竜巻のように体を捻って受け流し、7時から飛びかかる狼の胸元にナイフを突き出す。


と同時に、周りの狼が今まで以上に身を引いた瞬間、







赤狼の口からファイアーブレス。




咄嗟に縦にした狼の死体は所々が炭化していた。






「……ハァッ!? 新手の変異体か!?」


今まで、数え切れない程の変異体を相手してきたが、ここまで非常識な奴はいなかった。

精々、80ミリ榴弾砲が効かないほど皮膚が硬かったり、悪臭漂う体液を垂れ流し触れた人間を問答無用で病室送りにするくらいだ。

……ん?




まあ、とにかく神話に出てくる類の変な奴はいなかった。





炎を吐き終わった赤狼は口から煙を吐き出し、また大きく息を吸い込んだ。


また、吐くつもりか!!


咄嗟に哀れな焦げ狼を盾に熱気に向かって突進した。


炎を吐き終わった赤狼の前に踊り出し、そのまま赤狼の首目掛けてナイフを一閃。


赤狼は咄嗟に仰け反ったが、振り向いたナイフを返し更に一閃。

毛皮を僅かに引き裂く。





「kwwoッ!」




身を捩って逃げようとするが、遅い。

1歩踏み込み、首に組み付いて右手のナイフを6度突き立てる。




赤狼はくぐもった声をあげながら血を撒き散らして死んだ。



「……さらば。」


読みやすくなっているといいのですが。

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