表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イミルデ・ルシアの夜  作者: Sarah Bun
5/13

3.I am going down.

注意: ちょっと刺激的な描写


ーーー日本諸島探索81日目--グレン・コーナミーーー


メーデー、メーデー、メーデー!

メーデー、こちらラッド・クロ……グレン・コーナミ!

場所は不明!

人型のヘンな奴と交戦後、地面が消滅し現在落下中。

至急救援をーなんか来ねえよクソが!

メーデー、こちらグレン!

オーヴァー!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんて言って見たはいいが、実際の所ちっとも底が見えない。

周りは漆黒で、最初のうちは上から太陽の光が見えていたがそれもあっという間に消えてしまった。

今じゃ、自分の体すら暗くてよく見えない。

ただ、ごうごうと体が風を切る音しか聞こえない。


実際、これぐらいの速度なら針山にでも落ちない限り死ぬことはない。



いや……。


多分大丈夫だ。


とにかく、全身を使って風を受けて速度を抑えて、いざと言う時はジャンプキット(切り札)で逆噴射すればいい。


それより、今差し迫った危機は……


[警告 血中汚染濃度が著しく低下 低体位状態移行プロトコル実行まで……………30秒]



汚染だ。


正確に言うと汚染不足だ。


対変異軍は自身の体を変異させて戦う。


そしてそれは進み過ぎても不足しても致命的になりうるのだ。


あの神社から放射線を減退させる電磁波(?)が発生していたことは確かだろう。

とはいえ、体は別に放射能によって動いている訳ではなくあくまで変質しているだけなので、体に直接影響を及ぼした訳では無い。


が、どうやら長居しすぎたらしい。


ヴァイタルAIは身体変異の平衡状態が維持出来ないと判断すると、一時的に体の機能を制限するプロセスを実行する。

その状態を低体位状態と呼び、激しい頭痛や眩暈、吐き気、倦怠感、その他数々の悪影響を及ぼし、そのショックは高確率で対象を気絶させる。


あまり好きではない。 当然か。全員嫌いだ。


[通知 低体位状態に移行します]


うぇ
















『そう。グレンは兵隊さんになりたいの。』


母はそう言ってポテトを頬張った。

私は、ただの兵士ではない。人間を辞めるのと同義だ、と言った。


すると母はこういった。


『興味無いわ。 貴方が早死にしちゃおうが、長生きしようが。

私にとって重要なのは、グレン、貴方が幸せになれるのかどうかよ。』


なかなか他の人間には言えないことを飄々と言ってのけた。





その母は、父は、妹は、兄は、変異体に殺された。


母は、喰われた。

父は、ちぎられた。

妹は、焼かれた。

兄は、潰された。


全員、苦しんで死んだ。



その変異体は私が殺した。

近くに居た変異体も全員殺した。


仲間が大勢死んだが、私は生き残った。



避難所に身を寄せた人々は全員テロリストに殺された。


そのテロリスト達も私が殺した。

ついでに、近くの隠れ家を見つけ出してそこにいたテロリストも全員殺した。


仲間が大勢死んだが、私は生き残った。


生き残りが復讐してきたが、全員殺し返してやった。


仲間が大勢死に、私は気を失った。




[警告 パターン(KF7)に類似するエネルギーによる汚染を検知]




『おい!ラッド・クロウ! しっかりしろ! クソ!

衛生兵! 除細動機もってこい!さっさとしろマヌケ!

ラッド・クロウ!誰がお前を訓練してやったと思ってる! 死ぬのは許さんからな! おいお前!他はKIAだ!こいつを運ぶのを手伝え! 早くしろ、ノロマ!』



『信じられない……。 まるで、統率の取れた癌細胞のように傷口が治っている……。これなら、助かるかも知れない。』

『なら、何を用意すればいいんだ!』

『人口血漿があれば、十分でしょう。あとは、抗生物質ぐらいです。』

『聞いたか、ラッド・クロウ! お前は助かるかもしれんぞ!おい、聞いてるのか!』



最早、憎しみも復讐心もなかった。



[通知 パターン(KF7)による変異のパターンが解析完了

変異体基幹システムを再構成中

アンカーマック輸液:30ミリグラム を投与

造血幹細胞:5ミリグラム を投与

エチルアルコール:80ミリグラム を投与

パターン(KF7)を導入中……………失敗

上プロトコル再試行……………失敗

上プロトコル再試行……………成功

ーープロトコル・レポートーー

基幹システムーー成功

出力システムーー成功

生命維持補助システムーー喪失

未知の神経経路ーー獲得(5)

ーー終了ーー

パターン(KF7)変異システム最適化を開始]




では、何の為に戦うのだろうか。

愛国心?プライド?猟奇趣味?



わからない。



強いて言うなら、自身の過去と、


仲間だろうか。




『いい加減起きろ、ラッド・クロウ! シリアスは終わりだ!』



[通知 最適化完了

ーーーーヴァイタルチェックーーーー


ヴァイタルオールグリーン


*休眠状態

[ヴァイタルスコア : 100 ]


……………モーニングショックを起動]



突然、体に衝撃が走る。

それと同時に、身体が、頭が、意識が、視界が、リセットされたかのようにクリーンに、広がっていく。


「………視界良好。 いい朝だ。」


貴方は今の地位に誇りを持ちますか?





いいと思いますよ。

貴方の人生ですから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ