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イミルデ・ルシアの夜  作者: Sarah Bun
3/13

1.富士登山

文字数は安定しません。

ーーー日本諸島探索81日目--グレン・コーナミーーー


フジ山を登り始めてから四日が経った。


大学に残っていた最新の書類ではフジ山の推定高度は3835Mだと記されていたが、私の感覚では4000Mはゆうに超えていると思う。


まだ半分を超えたところであるにも関わらず、目に見えて木本植物の量が減っている。

気圧も下がっているように感じる。

まるでエベレストだ。


おそらく何らかの幻惑効果が山全体を覆っているのだろう。山を登れば登るほど体内の変異物質の巡りが悪くなっている。

今のところ変異体との戦闘に支障は出ていないが、これ以上悪くなるようなら、一時的に体内の核物質濃度を高く保たなければならないだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






朝起きる。



洞窟の壁が太陽光を反射し、視界に困らない程度にぼんやり光っている。

季節はもう夏だが、まだ朝なのに加えて洞窟の中に居たので少し肌寒さを感じる。


柔らかく、ゆったりとした服を脱ぎ、肌触りのいい小さめの服を体にはめて、鋭く固い鱗で補強された皮の鎧を服の上からきつく巻いて、固定した。

左腕の部分に穴が空いていて、そこからは金属と人口樹脂の複合体が無機質な光を反射させていた 。


左腕の尺骨があるべき場所には体内の状態を観測し、必要があれば外部から物質を取り込めるAIコンピューターが埋め込まれている。



ーーーーバイタルチェックーーーー


[体温 血圧 心拍数 ストレス 伝達 : 正常]

[汚染 変異 出力 : 不安定]



[血中汚染濃度 : 欠乏]

***原因 : パターン(KF7)に類似する波による妨害



[バイタルスコア : 89 ]



時間は有限だ。

対変異体軍に所属していた時、怖かったものは3つしかなかった。


1 は死。 2 は渇き。

そして、汚染だ。


第4次世界大戦に、N.G.P.Mという大規模破壊兵器が使われた。 今現存している当時の記録によると、それは恐ろしい威力だったそうだ。

その「死神」が着弾したのは、大モンゴル帝国、枢軸交易都市ベルリン、南極軍事観測基地 、 の三ヶ所で、半径1,000km圏内が灰も残さず消えたらしい。


さらに悪いことに、それは深刻な汚染を引き起こし、十数年後には変異し、容易に踏み入ることの出来ない魔境を形成するようになった。

その地区を調査し、凶暴化した変異体から都市を守るために結成されたのが対変異体特別対策軍なのだ。


対変異軍は自身の体を変異させて戦う。

そしてそれは進み過ぎても不足しても致命的になりうるのだ。




[ 幻惑波の発生地点まで 約50M ]



荷物をたたみ、槍を片手に洞窟を出て、崖を登り始める。

この上に特異現象の源がある。

未知への恐怖も勿論あるが、こうやって冒険をしていると子供に若返ったかのようにワクワクしてくるのである。


もう180年も生きているのに少しみっともない感はする。


苔が生えている岩が多くなってきた。

N.G.P.Mはこの土地を汚染し、生き物の住めない場所になったはずだ。

しかし、まるで戦前に遡ったかのようにあちらこちらに苔が生えている。

その分手元が滑りやすくなったが、変異によって強化された握力で岩をも砕かん、としがみついているので落ちることはないだろう。 おそらく。


そんなことを考えているうちに、崖の上にたどり着いたようだ。

よじ登った私の目に飛び込んできたのは巨大な竹林。大竹林だ。



「こいつぁ……すごいな。」


竹の密度は高く、5メートル先は見えない。

あたかも緑の防壁がそびえ立っているかのように崖にそって生えている。

何故か私の前方だけまるで誰かが切り開いたかのように竹が生えておらず、山の上に向かってくねくねと道ができていた。

道の先は雲と雪に覆われたフジ山の山頂が見える。


私は誘い込まれるようにその道を登って行った。






二、三度 ヘビのような道を曲がると、

そこには神社があった。



赤、紅、緋のどれでもないニホン的な色でムラなく塗られた巨大な鳥居が建ち、向こうには石畳によって綺麗に舗装された広場が広がっていた。

鳥居をくぐると、広場の向こうの端にぽつんと社が建っているのが見える。


神気に当てられるとはまさにこの事だろうか。

恐怖とも言えない、圧倒された気分だった。



「あんた……誰だ?」


広場の真ん中には、笠を深くかぶった女性が佇んでいた。



『ようこそ。……旅の御方。』


N.G.P.M

Nuclear Genocide Positron Missile

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