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イミルデ・ルシアの夜  作者: Sarah Bun
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8. 英雄 軍人 傭兵

ーーーKF7汚染地域α 野盗の拠点 探索83日目--グレン・コーナミーーー


野盗に囚われていた人間複数名を解放。

安全を確保した。

その時に、正体不明の敵1名と交戦。 撃退した。


隣の宴会場では、傭兵団と野盗の残党が交戦を開始。

傭兵団のリーダーと思しき人物が、野盗の頭を殺害。

戦闘は終了した。


傭兵団のリーダーが交戦中に、かの剣に放電現象が起こったことを確認した。

どうやら、彼の者はパターンKF7の力を利用出来r………!


見つかった。

交渉を開始する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「隠れても無駄だ!! 今のうちに投降しておいた方が身のためだぞ。」


傭兵団のリーダーは金属製の防具に身を包んでいるが、西洋貴族騎士特有のいわゆる、フルプレートメイルではなく、関節部分や末端、顔などは布や革で覆われている。



右手に握られているのは長めの片手直剣。


体重を掛けられるように柄は十分に長く、刀身には殺傷力向上の為にギザギザが彫られている。


何故か刀身は抗菌加工されたように、別の金属粉でコーティングされている。



「…全く。 おい、引き摺りだせ!」


「はい!!」


「待て!! ……私は敵ではない! こいつらの仲間でもない。」


さすがに待たせすぎたようなので、両手を挙げて無手であることを示しながら、隠れていた長机から身を晒した。


「そうか。 なら何故ここにいる?」



「たまたま、ここを見つけたので……潜入しました。」



「話にならんな! 団長、拘束しますか?」



まあそうなるな。

私が逆の立場なら、戦場に紛れ込んだとかいう怪しいヤツは確実に側頭部を殴って捕虜にする。


ただし、善行とはするものである。

思わぬ助けが入ったようだ。


「傭兵団の皆さん。 彼は野盗の一味ではありませんよ。」


私が入ってきた扉はいつの間にか開かれており、そこには先程助けた貴族のお嬢様が立っていた。

渡した布で体の前を隠している。


「誰だお前は!」


もちろん、さっきから団長の横で張り上げている男には知る由もない。


私にも確証は無かったが、ここで助け舟を渡してくれるのを見るに、彼女は本当に貴族か、それに準ずる地位にいる人物らしい。


「彼は先程私たちを解放してくださいましたし、実際に野盗の味方と思しき人物と戦っていました。

彼が少なくとも敵でないことは私、エリーゼ・ルシャトリエが保証します。」



「また見え見えな嘘を……! ルシャトリエ嬢は数ヶ月前から行方不明だ! 今もまだ生きているわけが……」


「……おい、ドール分隊長。 口を慎め。 この方は正真正銘エリーゼ・ルシャトリエ様であられる。」



「……え? でも団長……」



「詳しくはストレミに教えて貰え。」



「……なるほど。 わかりました。 ルシャトリエ様、先程の非礼をお詫び申し上げます。 おい!誰かこの方の服を用意しろ!」



後続の傭兵が慌ただしく用意を始めた。

エリーゼはとんでもない非礼にも関わらず、穏和な顔をしている。


それにしても、彼女は数ヶ月前から行方不明だったのか。

だとすれば何故今までずっとこうやって生きているのだろうか?

女ならとっくに正気を失っていても可笑しくない環境であるにも関わらず。



「それでは、さようなら軍人さん。 またいつか名前を教えて下さいね」


そう言って彼女は傭兵たちに連れられて部屋を出ていった。



「…ほう……軍人か。」


部屋の中は団長と分隊長、そしてその分隊員の数名だけになった。


「最初は命知らずな狩人かと思ったが……。 お前はどこかお抱えの騎士ということか。」



「いや、騎士とかではないな。 強いて言うなら軍人か。」



「エリーゼ様にもそう言った訳か。さしずめ、命知らずの英雄気取りって訳か。 途中で殺られてた野盗も、お前の仕業か。」


団長はひとり納得がいったように剣を腰の留め具に固定した。


「わかってたなら、最初から言ってくれよ……。

傭兵は皆同じことを言うんだな。 そんなに英雄が嫌いか?

まあ、あながち間違った表現でも無いが……。」



「これからは? 何すんだ? 一生慈善事業を続ける気か?」



「いや、何か適当な仕事にでもつきたいな。 出来れば、研究みたいなことがしたい。」



「おいおい……研究者なんか王立学院の教授しか出来ないぜ? 英雄さんは違うだろ。」



ほう……王立学院か……。



「確かに、素性の分からん私が行ける場所では無さそうだな。 それじゃあ、やっぱり腕を売るしかないか。 あんたのとこで雇ってくれるか?」



「おいおい、名前も名乗らない奴をどうやって入れるって言うんだよ。」



……そういえばそうだった。



「わかったよ。 俺の名はグレンだ。 ただ、さっきの貴族のお嬢さんには黙っててくれ。 あまり、今の段階でよく分からん陰謀に巻き込まれたくない。」



「アホか。名前しか知らんのにどうやって巻き込めっていうんだ。

俺はヴィスコンティ。 この閃狼傭兵団の団長をしている。」



「私は、ドール! 閃狼傭兵団で突撃分隊の長をしている! 後ろはその分隊員だ!」



「入れてはやるが、歓迎はしない。 最初は最下位の訓練兵からだ。 所属しているうちは生活と身分を保証してやろう。

……どっちにしろお前はもう巻き込まれているがな……。」



「構わない。 よろしく頼む。

待て、今なんて……」


馬鹿な! もう既に地雷を踏んでいたというのか!

まあ、それもまた一興。


「よし、総員! 帰投準備! 物資や拘束した奴を荷車に積み込む準備をしろ。」



ドール分隊が足早に洞窟から出ていった。


それにしてもよく分からん地に来て傭兵団の訓練兵からやり直しか。

まあ、現に私はこの地の戦い方を知らない。

好都合といえば好都合だ。


すると、ヴィスコンティがこちらを向いて言った。


「グレン訓練兵! 着いてこい。 俺らの拠点に連れて行ってやる。」


ありがとうございます。


グレン 落下 のパートは終了。

次から 本格的にストーリーが進んでいきます。

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