魔法ほしい --------- side 魔術師ギルド長 ミルバ
この世には、攻撃魔法しか存在しない
事になっている
厳密に言うと、攻撃魔法以外の魔法は失伝した。
なぜ失伝したのか
それは数百年前に起こった大戦が深く影響している。
それはルリビア王国とレイブン帝国による約120年にも及ぶ戦い
それは血で血を洗うような戦い
軍事力で直接戦う熱戦を行い、自国の人数が減ってきたら一時休戦し
所謂冷戦と呼ばれる諜報同士の戦いに移行
これを約120年繰り返してきた。
大戦当時はそれこそ生活魔法と言われる魔法も存在していた
しかし、数百年と繰り返される戦争によりその魔法は失伝していった。
国からの指示で、生活魔法を覚えるより攻撃魔法を覚える事を優先されていた
そんな時代
このような背景の元、生活魔法は忘れ去られていった
幼少期より攻撃魔法を教えられ、才のあるものはそのまま徴兵
才の無いものは兵士となり体を鍛える
生活魔法を覚えている暇は無かった。
そして、今現在
生活魔法に関する書類は一切存在していない。
王都の図書館を探しても、帝都の図書館を探しても存在しない
何者かの思惑があったかのような操作を感じる。
攻撃魔法以外の魔法が存在しないのであれば、作るしかない。
そうして私が完成させたのが、魔力探知と、犯罪歴確認の魔法だ。
犯罪歴確認の魔法は、私がギルド長になるにあたって、開発するのに迫られた結果だ。
魔力探知の魔法は、この魔術師ギルドに組み込まれている。
初めてこの魔術師ギルドに近づいた人物且つ、魔力レベルがS以上の場合
建物内にアナウンスが入るようになっている。
魔力レベルSというのは、一般の魔法使い100人分相当であるため
中々存在しない。
それこそ、今の世の中ではありえない -----------------
「 推定魔力レベルS以上の存在が間もなく魔術師ギルドに侵入。お気を付けください 」
これは … …
「 ギルド長! 」
「
ええ、分かっているわ。
あなたは現在ロビーにいるギルド員の方たちに、絶対手出ししないよう告知しておいて。
すぐに向かうから先に行っておいてちょうだい
」
今日はこの後スイーツでも食べに行こうと思っていたのに最悪ね … …
厄介ごとじゃなければいいんだけど。
ロビーに出ると、9歳くらいの男の子がそこに立っていた。
まさか、こんな子供が … … ?
私は、契約している水魔法の精霊を呼び出す
『 あの子供に害意は存在しますか? 』
『
いいえ。あの子供にこの国に対する害意は存在しません。
しかし素晴らしいですね
魔力がとても澄んでいます。
精霊と契約していないのが驚きですね
』
精霊とは、この世の理から外れた存在
この世ならざる者。
それ故、精霊と契約を結ぶ際、精霊の存在を口外できないよう
制約がかけられる。
精霊は人の魔力と悪意を見抜く。
精霊であるこの子が絶賛するなんて、とんでもない存在ね … …
私は彼に話しかけ、要件を伺う。
すると、このギルドに入りたいそうだ。
いつも通りの説明を行い、彼の魔法をテストする。
魔法を発動する際、とてつもない魔力の奔流が彼の体から発せられる。
一体これは … …
こんな魔力を用いる魔法など、普通の魔法であるはずがない!
私はあわてて魔法を打ち消しにかかる
『 大丈夫ですよ 』
『 でも … … 』
『 大丈夫です。彼に害意は存在しません。そして、あの魔法は攻撃魔法ではありません 』
なんですって!?
驚いてるうちに彼の魔法が完成した。
『 転移魔法。まさかこんな大魔法をお目にかかれるとは思いませんでしたね 』
『 転移魔法って … … 』
『 そして彼、私の存在に気付いているようですね 』
『 そんなはず … … !? 』
あの目は警戒の目。
『
私があなたの中から出てきた瞬間、彼の魔力の波動の流れが変わりました。
まず間違いなく認識されているでしょう。
私の正体にまで気づいているかはわかりませんが。
』
正体に気付いていないにしても、存在を感じ取れる時点で並みではない。
凡夫ではない。
一般人が到底たどり着けない頂。
そこに手をかけている
『 ありえない … … 』
彼は一体 … …
『
彼の名前はルイス。あの子はこの国で早急に囲い込むべきでしょう
あの子が他国に流れた場合、多大な損失となります
一刻も早い対処が必要です
』
そうね … いつまでも驚いていられないわね。
彼に試験終了を伝え、国王に対して連絡を取る。
各ギルドには、国王と緊急の連絡が取れるラインが存在する。
「 急ぎお伝えしたい事がございます。国王はただいまお手すきでしょうか? 」
「 少々お待ちください。確認してまいります。 」
私の急ぎ具合が伝わったのか、宰相が慌てて確認を取りに行く。
「 私だ。今は娘と遊んでいたんだがな … … それに見合う話なのか? 」
… … この親バカが … …
「
もちろんでございます。
このギルドにとてつもない魔法の才を持つものが現れました。
名をルイスを言います。
身なりからしておそらく貴族でしょう。
彼は精霊の存在を一発で見抜き、また
転移魔法の完成に至っております。
彼の才能、他国に渡れば多少の損害では済みません。
彼に序列上位の位を与えることをお許し願えませんか
」
「 ふむ。転移魔法か … … 」
一呼吸置く
「
少し考えただけでも軍事、流通、暗殺
いくらでも使い道があるな
良いだろう。序列第三位を与えるとよい。
他のギルドへは私が根回ししておこう
」
「 ありがとうございます。」
この王、普段は親バカだが、やるときはやる。
転移魔法の有用性に一瞬で気づき、面倒くさい根回しも簡単にやってのける。
この人が王になってから王国にかつてない繁栄がもたらされているのは、この判断力にも起因するだろう。
「
まあ、根回しは簡単だ。
ルイスという名で魔法の才があるとなると
あの公爵家の息子だろうからな。
」
「 公爵家 … … 」
魔法の才もあって家柄も持ってるなんてずるい … …
「 あいつめ、とんでもない秘蔵っ子を持ってやがったな 」
その公爵家の人とは随分仲が良いようだ。
「 要件は終わったようだな。私は戻るが他に何かあるか? 」
戻るって娘と遊びに行くだけでしょうが … …
何仕事に戻るみたいな言い方してるのよ
「 いえ、ございません。本日はお忙しい中ありがとうございました。 」
「 うむ。 」
とりあえず何とかなった。
明日から忙しくなるんだろうなあ … …




