魔法ほしい --------- side アンジェ
私には兄が居る。
兄と言っても向こうが数秒早く生まれただけの、双子だ。
兄は魔法の才能がずば抜けている。
魔法には"炎、水、土、風"の4元素と言われるものと、"光、闇"といわれる時空干渉系の魔法が存在する。
それぞれの魔法には、階級が設定されており、上から
神話魔法、天魔法、超級魔法、上級魔法、中級魔法、下級魔法
となっている。
一般的に上級魔法が魔法を習うにあたっての壁と言われている。
超級魔法はそれこそ、ずば抜けた才能を持ったものが努力を惜しまず毎日鍛錬を重ねることによって習得が出来ると言われている。
ちなみに神話魔法は神が使う魔法とされており、実際に存在するかは分からない。
もはやおとぎ話だろう。
だがしかし、このような階級差を感じさせないような存在が身近に居る。
それが兄だ。
兄は幼少期より魔力の扱いに慣れていた。
誰よりも早く成長し、誰よりも早く魔法を習得した。
訓練では上級魔法の使用を確認したが、兄なら超級魔法だって軽々と行使できるだろう … …
ちなみに私は中級魔法が精いっぱいだ。
訓練の時、兄は私の事をとにかくほめてくれる。
魔力コントロールが上手いとか魔法の命中精度が高いとか。
私より魔法に長けている兄に言われたら普通嫌味に感じるが、
私は私の事を褒めてくれる兄が好きだ。
褒めてくれると、うれしいような恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちになる。
いけない … …
今はこんな事考えてる場合じゃなかった。
今日は父上に朝一で書斎に呼び出されていた。
多分学園関係だろうな … …
と思いながら書斎に向かっていると、途中でコバルトと出会う。
「 アンジェ様。おはようございます。お早いですね 」
「 まあ … … ね … … 」
兄の事を考えていたら遅れそうになっただ何てとても言えない。
「 旦那様が中で待ってます。どうぞお入りください。 」
「 ありがとうございます。 」
コバルトに軽くお礼し、書斎の中に入ると、中では父上がすでに待っていた。
「 アンジェか。早かったな 」
「 とんでもないです。 」
自分としては早めに出る気持ちは無かったので、素直に困る。
「
気づいては居るだろうが、ルリビア王国学園の件についてだ。
詳細はルイスが到着した後、伝える。
」
「ありがとうございます。」
やっぱりそうだった。
そういえばルリビア王国学園の入試は明日だったかな?
一日で間に合うようにみたいな命令が来るかな。
だとしたら、私が独自に編み出した風魔法を使って行けるんだけどな。
本来、魔法とは攻撃魔法しか存在しないが、今回私が開発したのは
自分自身に効果のある、所謂バフ系の魔法だ。
魔法とは本来、詠唱を行い、神に祈りを捧げ、現象を起こしてもらうものとされている。
しかし、兄と訓練をしてるさい、兄は詠唱をあまり行わない。
これを不思議に思った私は、試しに何も詠唱せずに風を作るイメージを行った。
すると、そよ風程度ではあるが、私の目の前に風が吹いた
現象としては些細なことではあるが、衝撃的な事実だった。
繰り返すが、魔法とは本来、神が現象を代行して行うものとされている。
しかし、兄が行っている魔法の仕方で言うと、
魔法とは、イメージの力である。
既存の概念にとらわれない、柔軟なイメージを使い、この世界の理を書き換える
それが魔法だ。
最初は全然うまくいかなかった。
何せ今まで詠唱に頼りっきりで、魔法をイメージし、具現化する工程を取っていなかったからだ。
だが、何回か繰り返して行くうち、兄の魔法を繰り返してみているうち、何となくコツがつかめてきた。
そして完成したのが飛行魔法だ。
風、炎属性を使い、常時空に浮く。
言うのは簡単だが、イメージが難しい。
強すぎると飛びすぎてしまうし、逆に弱すぎると地面に落ちてしまう。
微調整が大事だ。
こんな事を考えているうちに兄が書斎に近づいてきた。
私の自慢の兄さん。
私が憧れている兄さん。
もし良かったら、一緒の学園に通えたらいいな … …
なんて、
私は切に神に祈る。