魔法ほしい
長い廊下を歩く。
廊下はとても静かで、僕が歩くたびに足音が無数に反響する
俺はこの廊下が嫌いだ。
あるのはピカピカに磨かれた壺
そして絵画
なぜ嫌いかというと、この廊下の先には必ず父上の書斎があるからだ。
書斎の前には必ずやつが立っている。
父上の護衛第一席であるコバルトだ。
あいつきらいだ。
剣術や体術、様々な訓練を奴と行うが、一回も勝てたためしがない。
まあ魔法を使えば勝てるのだろうが、それは俺のプライドが許さない。
全てをオールラウンドにこなしてこそ、一流というものだ。
憂鬱だ … … ----------------------------------------
「 めちゃくちゃ負の感情が流れてくるな … … 」
先ほどの感情はこの元々の体が感じていた事だ。
どうやら強い感情になると嫌でも元の体が主張してくるらしい。
まあ知識を得れる分にはいいけどさ … …
そうこうしているうちに、書斎前に到着した。
「 ルイス様、中で旦那が待ってるぜ 」
「 ありがとう。」
コバルトの横を通り過ぎ、父上の書斎に入る
中に入ると、妹のアンジェが居た。
「 もう、遅いですよ兄さん 」
「 ごめんごめん … … ちょっと目覚めが悪くて … … !! 」
言い訳をしようとした瞬間、父上から強烈な気配を感じた。
普段感じる事の出来ない、支配者の威圧感がそこにはあった。
「 ルイス 」
父上が静かに告げる
「 ルイス、今朝何かあったか? 」
何か … … ?
まあ転生したりしたけどさすがにそれは言えないしな … …
「 何もございません。いつも通りの朝です。 」
「 そうか 」
一言、呟く
「 まあ、言えないのであればそれで良い 」
まさか、気づいているのか … … ? 僕が転生した事に。
「 いや何、ルイスから感じる魔の気配が昨日とは比べ物にならないくらい跳ね上がったのでな 」
心読めるのかよ … …
まあそんな事ないんだろうけどね。
「 もう、父上をあまり怒らせないでください 」
「 俺のせいじゃないのに … … 」
父上から感じていた威圧が無くなった。
「 では本題に入ろう 」
僕も妹も、その一言で気が切り替わる
「
二人とも、もう良い歳だ。
ルイス、アンジェとともにもう9歳だ。
ルリビア王国学園に入学してよい頃合いだろう。
」
ちなみに、ルリビア王国学園とは国が認めた、何かの卓越した技術を持ったもののみ入学が許される学園だ。
年齢は8歳以上であれば誰でもよいという緩い感じになっている。
「 分かりました。いつ出発すればよろしいでしょうか 」
「 明日だ 」
「 明日!? 」
なんて無茶を … …
学園がある王都までは最低でも2日かかる。
道路が整備されていないこの時代ではどうしても移動に時間がかかるのだ。
「 間に合わなければそれで良い。見合う実力が無かっただけだ 」
… … 言ってくれる
確かにそうだ。
人並外れた才能を持つ者でしか入れない学園に常人が入れるはずない。
そこを突破するのは当たり前だろう。
「 分かりました。準備いたしますので、下がらせていただきます。」
「 私も準備のため下がらせていただきます。」
「 分かった。出発時は声をかけるように 」
言うことは終わったかのように、父上が座っている椅子が後ろを向く。
部屋を出るとコバルトがニヤニヤした顔で僕を眺めていた。
「 無理難題を吹っ掛けられたようですな 」
「 ああ。たまったもんじゃないね 」
「 でもルイス様、体はそう言ってないようだぜ 」
言われてから自覚する
新種の魔法を試したくて身体がうずうずしていた
「 まあ … … ね … 」
この世界での魔法は、基本的に攻撃魔法しか存在しない。
炎、水、土、風、光、闇
どれも実際に発現するか精神に作用するかだ。
二日の道のりを一日で突破するとなると、既存の魔法では不可能だ。
何か工夫をする必要がある。
「 アンジェは何か策があるの? 」
「 ありますよ。 」
あるんだ … …
「 … … ちなみにそれはどんな … … ? 」
「 言うわけないじゃないですか。兄さんは自分で考えてください。 」
考えるけどさ!
妹がいつのまにか立派に成長してて僕はうれしいと感じるほど、どうやら僕の精神はこの身体に引っ張られているようだ。
じゃあまあ … … ひとまずは魔法の開発だね




