魔法ほしい --------- side クリス
「 お目覚めかな?第一位さん 」
… … ここは?
「 何呆けた顔してんだ。 もう朝だぜ」
… … … … 朝?
次第に頭の中が覚醒してくる。
「 … … ! あの子は!」
「
大丈夫だ。心配するんじゃねえ。
何事も起こってねえよ
お前が倒された以外はな。
」
… … 思い出してきた
天候を変えたあの魔法の後、何やら光の軌跡のようなモノが見えた瞬間から記憶が無い
そして今この現状
「 そうか … … 負けたか … … 」
「
あぁ。
世の中には上が居るもんだな。
正直俺はクリスがこの世の中のあらゆる生物の頂点だと思ってたんだけどな。
無敗記録も敗れてしまったな
」
… …
「 クリスが例の技出して負けたのは正直想像すら出来なかった 」
… … そうだ。
この世界には剣技と呼ばれるものが存在する。
階級は魔法と同じで、上は神剣から下は下級剣まで存在する。
私は天剣と呼ばれる技を習得していた。
天使が使ったとされる技
神の御業
人類が到達できる最高地点
この技を習得できているが故、私は帝国で一番という地位をいただいていた。
「
私自身、あの技を出して負けるとは思っていなかった
今では悔やまれる
何故、戦闘の初手であの技を出さなかったのかと
」
「
それに関しては何とも言えねえけどよ、
いきなりあれ出して死んだら大問題だろ
」
… … あの子の力量をはかれなかった
魔力量から常人ではないと分かってはいたが、
心のどこかで子供の容姿に侮りを抱いていた。
「 まあでもよ、結果何事も無かったんだからいいじゃねえか 」
それはそうかもしれないが … …
「 そういえば、戦闘の後何か言っていたか? 」
「 あぁ、それは … … 」
「 それは私が説明するわ 」
「 アンジェ … … 」
「
あの子が使っていたテレポーションだけどね
言いふらさないよう釘を刺されたわ
」
例の瞬間的に移動する魔法の事か … …
「 それとね、あなたの体にあった傷を治した事も内緒にしてほしいとの事よ 」
そうだ … …
私はあの光に貫かれたはず。どうして生きて … …
「
あの魔法が直撃した瞬間、あなたは四肢の大半を消失したわ。
そして確実に蘇生不可の領域に足を突っ込んだ。
回復魔法を使っても明らかに血を失いすぎていたわ。
」
その言葉を聞いて
私は自身の体を眺める
欠損の一つすらない。
「
だけどね。
何をしたのか分からないけど
とてつもない魔力の奔流とともにあの子が一瞬で治したわ。
ルイス君だったかな。
旅人だと名乗っていたけど、明らかに人間の範疇を越えているわ。
私にはあの子が神様と言われても何も違和感を覚えないわ。
」
あの魔導士サラの言っている事が本当ならば
確かに人間をやめている
何故ならば、それは新たな人間を創造しているも同然だからだ。
失ったものを瞬時に戻す
まるでそこだけ時間が巻き戻ったかのように … …
「
テレポーションと治癒の2点、だけどね
内緒にしなかったら帝国を滅ぼすらしいわよ
」
「 それは … … 」
「
まあ、冗談でしょうけどね。
でも、あの子にはそれを成し得てしまう力を持っている。
いたずらに刺激すべきではないでしょうね。
」
「 まあ、それもそうかな … … 」
「 どうしたクリス、気が弱ってるじゃねえか 」
こういう時、バイルの元気さは本当に助かる。
「
まあ、ね。
色々要因はあるんだけど、やっぱり一番は負けてしまった事かな。
」
弱音を吐いていると
入口が開く音が聞こえてきた。
「 元気そうじゃねえかクリス 」
「 皇帝陛下!! 」
バイルもサラも首を垂れる。
「 良い。気にするんじゃねえ。今は情報の伝達が最優先だ 」
「はっ。失礼します。」
「 それでクリスよ。 相手は強かったか? 」
「
… … はい。とても 。
恐らく100回戦ったとしても1回勝てるか怪しいです。
」
「
クリスがそこまで言わせる人物か … …
サラ、そいつの特定には至っているか?
」
「 現在調査中ではありますが … … 」
「 どうした? 」
「
あまり刺激はしない方が良いかと。
相手はこの帝国を一人で滅ぼせる人物です。
迂闊に手を出せば最悪、このレイブン帝国が日を浴びる事が無くなるかと … … 。
」
「 ふむ … … 」
「
ただ、名前は判明していまして
ルイス と名乗っておりました。
」
「
偽名かどうか分からねえが情報はそれしかねえか … …
ルリビア王国が差し向けた刺客の場合、うちは最悪の事態を想定しないといけねえな
」
最悪の事態か … …
ルビリア王国の話はよく聞こえてくる。
魔導士ギルドの長の話であったり、王を護衛する騎士の話であったり。
「
そういえば、今はネロを王国に留学させていたな
それとなくそういった情報が無いか聞いてみるか。
後で伝達係に頼んでおくとしよう
」
「 承知しました。 」
「
まあ、起こった事はしょうがねえ
クリスもあんまり気に病むんじゃねえぞ
次そいつが来た時勝てばいいんだからな
」
… … 皇帝陛下も中々に無茶を言ってくれる。
だが、
確かにそうだ。
今まで無敗という事が私を慢心させていたのかもしれない。
「 … … はい。精進いたします。 」
「
よし。それで良い。
後は任せたぞ。バイルにサラ
」
「「 はっ 」」
今よりさらに一段上に上るには
あの方に師事するしかないかな … …




