対クリス
視界を遮るもののない、ひらけた場所に僕は立っていた
そして、対面には
「
ここで大丈夫かな。
激戦が予想されたのでこの場所を選ばせてもらったよ
」
王直属の騎士で序列第一位が立っている
まあ本物かどうか分からないけどね・・・
この世界の剣には魔法と同じようにスキルが存在する。
剣技にも階級があり、魔法でいうところの神話魔法レベルになると
何をしているのか全く分からないそうだ。
父上の護衛第一席であるコバルトともよく対戦していたが、終ぞ剣技を使わせること無く
学園に入学する事となった。
「 この戦いにはルールとかある? 」
「 強いて言えば殺しは禁止って事かな?それ以外は何でもありだよ 」
王直属の騎士にしては中々に荒くれものだな。
「 分かった。じゃあ始めよ。 」
「 バイル! 合図を頼む! 」
「 はいはい … … じゃあ今からコインを弾くから、それが地面に落ちた瞬間からスタートだ 」
中々粋なスタートだな
王直属となると、どれくらい強いんだろうか?
魔法使いの強さはなんとなく分かってきたが、剣士の強さというのは全然分からない。
行き当たりばったりだけど、大丈夫かな … …
「 じゃあ、いくぜ 」
第四位の掛け声とともに
手のひらのコインが宙を舞った
コインがスローモーションのように地面に落ちていく
そして
コインが地面に落ちたと同時に
「 本気の剣士との戦いは初めてかな? 」
「 … … っ ! 」
早すぎる!
コインが落ちたと同時、眼前に第一位が迫っていた。
「 テレポーテーション! 」
僕は瞬間移動を使用した。
「 あの魔法 … … やはりそうですか 」
魔導士が何か気づいたみたいだ。
だが
この戦い、何振り構っていたら負ける。
この剣士
恐ろしく早い。
魔法を詠唱している時間など無い程に。
今まで僕の周りにこういう人物は居なかった。
ありがたい。
この剣士、いや、こいつ
「 偽物じゃないな … … 」
「 お褒めいただきありがとう。だが、その瞬間移動?は驚きだね 」
「 全然驚いてないくせに … … 」
こいつのスピードからすれば、瞬間移動も普通の移動も大差ない。
人間に知覚できるスピードをすでに超えているのだ。
『 何やら、困っているようだの 』
ソフィア … …
ありがとう。
でもごめん。
今回は僕だけの力で勝ちたいんだ。
だからごめんね
『 まあ、本当に困った時に言えばよい 』
ソフィアの力を使えば勝てるだろうけど、今はその時じゃない
今は僕の実力を試す時だ。
「
今、すごい気配がこの子から漂ってきたわ。
クリス気を付けて。
」
すごいな
ソフィアの力の一端を感じ取る事が出来たのか。
っと… …
今はそんな事考えている場合じゃない。
戦いに集中しないと。
「 次は俺から行くよ 」
この戦い
詠唱をしたら負ける
詠唱を行っている間に詰められて負ける
早い相手に対し、魔法を出すとすれば … …
僕は念じる
この世界を塗り替える魔法を。
「 ほう … … 」
水の上位派生魔法
アイスフィールド
地面を氷漬けにし、相手の足を止める
「 だけどね 」
第一位の足の周りに炎が発現し、足を止めていた氷を溶かす
「 私はある程度魔法も使えてね 」
… … 何がある程度だ。
そこらの魔法使いでも解除できないほどの魔力を込めたつもりだ。
そう、呆れて居た時
目の前から第一位の姿が消えた。
どこだ … …
第六感とでもいうのだろうか
僕の後ろから、何か気配がした。
「 っ !、テレポーテーション !」
今のところ回避技がテレポーテーションしかないのがつらい。
しかもこの魔法も何回でも使えるわけではない。
まあ、僕の魔力が尽きたことは無いけど … …
おっと。
「 テレポーテーション 」
一撃で捉えられないとみるや、追撃をしてきた。
「
その魔法、相当な魔力を使っていると思われるが … …
全く術者に疲れが見えないね。
」
「 どうだろうね 」
「 まあ、その魔法はある前提で動くしかないかな 」
前提で … … ?
またも第一位が迫ってきた。
「 テレポーテーション 」
… … !
こいつ!
僕はイメージする。
爆発をイメージする
「 … … 痛いね 」
危ない。
こいつ、僕のテレポーテーション先を読んできた。
前提で動くというのは、移動先を読むという事か。
「 … … なぜ移動先が分かったんだ 」
「
なぜ、か
それは勘だとしか言えない。
だがそれは運が良いだけじゃない。
僕の今までの経験に裏付けされた勘だ。
僕の戦闘経験が移動先を読んだ。
それだけだよ
」
こいつもまた、化け物か
常人では考えられない技もこのレベルになると平然とこなしてくる。
これだから止められない。
「
分かった。もう瞬間移動を使うのはやめよう。
今から本気を出す
」
「 へえ。それは楽しみだね 」
どうやら第一位も
僕と同じ穴の狢のようだ。
戦いたくてうずうずしている。
こいつほど強くなると相手も居ないだろうしな … …
さあ、ここからが正念場だ
続く