料理フェスティバル開幕!《激戦!》
『れっでぃいいいいいいいいいっすっ! あああああああんっ! じぇんとるめえええええええええええ――――――――――――んっ!』
正午前、大きい広場で市長が魔法の声を轟かせた。
周囲には風船が舞い上がって、花火まで打ちあがる。楽隊も派手に演奏を始めて、それはもう一大フェスティバルだ。
お客さんたちも歓声をあげて盛り上がる。
そんな声がこだま的に響いてくる中、僕らは店の開店準備を終えていた。
今回手伝ってくれるのは、フレッドさんと娘さん。会計担当は、グランハルトシティの人が担当してくれる。
公正のため、なんだって。
「さて、と。お肉の準備と」
用意したのは、おばちゃんにお願いして改良してもらった生ソーセージ。ホットドッグに特化したでき具合になってる。
他には、レタスと、ケチャップ、マスタード。他にもトッピングを用意してある。カスタマイズも可能にしたんだ。その分、ちょっと時間かかりそうだけど、そこはみんなでカバーしていく方向で。
とにかく色んな人に喜んでもらえるように。
これがこのホットドッグの最大のコンセプトだ。
「ドリンクの準備もオッケーです」
「ポテトもオーブン焼き上がりました」
「オッケーです。それじゃあ……」
『料理フェスティバルっ! 開幕でえええええええええええええええすっ!!』
「がんばりましょう」
ぐっと皆に親指を立てると、どどどどどど、と地響きがした。
え。
これって、足音?
ちょっと顔を引きつらせていると、お客さんたちが怒涛の勢いで道を駆け抜けていく!
お、おおおおお。
すっごい。
「な、なんだこれは……」
「にくのかべー」
「せめて人の壁って言おうね、サナちゃん……」
「ひとのかべー」
圧倒されて顔を引きつられるフィブリアさんの隣でサナは物騒な物言いをした。即座に娘さんにツッコミ受けてたけど。
でも問題はそこじゃない。
すぐに行動しないと。
「肉を焼いていきますね」
じゅ、じゅじゅー。
僕は低温でゆっくりと加熱していく。すぐに生ソーセージはふわあぁっと、ソーセージ肉独特の旨味を含んだ匂いを放ち始める。
僕は流れるように蒸し焼き作業にも入っていく。
匂いがさらにふわぁっと広がって、お客さんがすぐにやってきた。
若い感じの女性だ。
「いらっしゃいませ」
「よくぞまいったー」
すぐにフィブリアさんとサナが接客に当たる。
フィブリアさんはグランさんの奥さん監修のもと、ばっちり可愛くなっている。黒と白のエプロン姿みたいな服装はとっても似合ってる。メイド服をちょっと改良したやつらしいんだけど。
サナも同じ格好だ。
「いい匂いだねぇ」
「当店はホットドッグを発売しておりますので、その匂いですよ。味自慢なので是非。こちらがメニューになります」
フィブリアさんが嫌味の無い笑顔で、スムーズにお品書きを手渡す。
ちゃんとイラストまで刻んだ木彫りのメニュー表だ。
「サイズは標準よりも小さめなので、その分お手軽に頼めますし、値段も控えめです」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、うまーはじゅうばい!」
「あはは、そーなんだ。かーわーいー」
女性はぴこぴこするサナの頭を撫でながら、メニュー表を見た。
「んー、トッピングもできるんだ。すごいなぁ。でもやっぱここは、ベーシックなのをもらおうかなぁ」
「かしこまりました」
僕は注文を聞いてすぐに作り始める。
パンをちょっとトーストして、レタスをしいて、ソーセージを盛り付けて、ケチャップとマスタード。よし、彩もきれいだ。完成!
「おまたせしました!」
ほっかほかのホットドッグを女性に手渡す。
小さめのパンは表面だけトーストされていて、ちょっと濃い色。挟まれているのは、少し焼き目のついて、分厚いソーセージ。つけあわせは新鮮なレタス。そこに赤と黄のソースが鮮やかにかけられている。
「わー、美味しそう! いい香り~っ」
女性は目を輝かせて、ホットドッグを受け取ると、すーっと匂いをかいでから一口した。
ぱきっ、ざくっ!
心地いい音が連続する。
「んくぅ~~~~~~っ!」
女性は目をつむって、足をばたばたさせて笑みをこぼした。よし!
「おっっいっっしぃぃぃいいいい~~~~っ!」
その声は、かなりの大きさで周囲に響いた。
うわぁ、すごいリアクション。
「なにこれ、ホントになにこれ! ヤバいんだけど!」
当然それは呼び水みたいになって、一気に注目を集めた。
あ、ちょっと怖いかも。
「何々」
「おいしいんだって」
「よしここにしよう」
フィブリアさんが鋭く目で合図を送ってくる。僕も頷いて、すぐに準備をはじめた。
案の定、次々とお客さんがやってくる。
みんな基本のホットドッグをオーダーしてくれる。
「んんっ! このソーセージの美味しさ! すごいな!」
「肉汁がとてつもなく美味しいっ! じゅわーって、すごいなぁ!」
「パンもすごいぞ。表面はパリパリサクサクなのに、中はもちもちだ。それが肉汁をうまいぐあいに吸って、小麦の風味が肉の旨さを倍増させてるなぁ」
「ソースもすごいわ」
「うん、ケチャップの甘酸っぱさだけじゃないし、深いコクがいいね。マスタードもいい辛さだ。全部ソーセージを引き立ててくれるんだ」
みんな次々と美味しいといってくれる。
よかったよかった。
僕はほっとしながらも、次々と舞い込んでくるオーダーをさばいていく。
こうなると、もう注文は止まらない。
トッピングオーダーも入ってくる。こっちは娘さんとフレッドさんが対応してくれる。
「おおおおおおっ、マスタード辛め! 刺激的だぁ!」
「つぶつぶ、ぷちぷち! たまんないねぇ」
「オニオン、辛味だけじゃないな、すごく爽やかだ」
「このレモンいりのソーセージ、たまらないなぁああ!」
「ジュースも美味しいな、本当に手抜きがない」
「ポテトもすごい、ほっくほくだ」
「でもぱさぱさしてないんだな、不思議だぁ」
「レタスのシャキシャキ感がもうステキすぎて……!」
買ってその場で食べられるようなスペースもあるので、そこがいいみたいだ。イスも用意しておいてよかった。
「お待たせした。かたじけない」
「やだー、このカワイイ子おもしろいカワイイー!」
「か、かわいいっ……!」
サナが大人気だ。もちろんフィブリアさんもまけてない。
「あ、あのっ!」
「はい、どうされましたか」
「僕をクソブタってののしってください!」
「……買ってくれたら申し上げますが」
「じゃあ五個……いや、十個買う!」
「ありがとうございます。このクソブタ」
「あひぃ」
……なんかすごく複雑そう。
ちなみにそのお兄さんは全部きっちり買ってきっちり食べていってくれた。美味しさにも感動してくれたみたいでよかった。
忙しさはどんどん加速して、あっという間に僕は外を気にしてられなくなった。
すると、すぐにフレッドさんが動く。
「仕入れの追加を」
それだけの指示で、追加発注が行われる。
今回はなるべくたくさん仕入れてあるけど、足りなくなったら怖いので、業者さんに控えてもらってるんだ。だから今回もバックアップ体制はバッチリ。
「パンもどんどん焼いていくないとね」
調理全般は僕の担当だ。
特にパンは時間がかかるから気をつけないと。
ケチャップとマスタードは、たっくさん作ってあるけど、こっちの在庫も状況によっては足さないといけないかも……。いや、大丈夫のはず。
ここは信じるしかない。
「あいよ、お待たせ!」
熱気がキッチンの中を蒸すようになり始めた頃、おばちゃんが追加のお肉をもってきてくれた。その様子をみて、おおっと口をあけてから一瞬だけ腕を組む。
「やばいねぇ、これは。ベル! あんた手伝ってやりな!」
「うわー、すげぇな、わかった!」
おばちゃんにいわれ、ベルはやる気を出しながら腕をまくった。
ベルは接客慣れしてるから、すごく助かる!
「あんた! 肉をどんどん作っていくよ!」
「うん、任せて」
おばちゃんが店へ戻っていく。
頼りにしてます。今回のホットドッグは、本当にお肉が切り札だから。この尋常じゃなく美味しいお肉をさらに美味しく引き立てる。これが僕のしたことだ。
パンにもこだわった。肉が小麦の風味さえ奪う美味しさだから、グラハム粉をちょっと入れこみつつ、表面もトーストすることで香ばしさを増やした。それだけじゃなくて、柔らかくすることで肉汁を吸収しやすくさせたんだ。
レタスは脂っこくなっちゃう感じをカバーするため。
ケチャップとマスタードは配合を徹底的に研究して、ソーセージの旨味を際立たせる。
「オーダー、通ります!」
「あいよ!」
「タイムロスはなるべくないようにね」
「基本できました。トッピングお願いします」
僕はさっとホットドッグをサーブしてから汗を拭う。
温度調整しなきゃ。
僕は魔法を使いつつ、ソーセージを次々と焼き上げていく。けど、どんどん間に合わなくなってくる。あ、これヤバいかも。誰かもう一人か二人、調理補助がいる!
ちらりとみると、行列は増えていく一方だ。
売れば売るだけ、お客さんを呼び込んでいるからだ。
「おーおー、すっげぇ行列だな」
「大変だねぇ、こりゃ」
マズい、と思っていたら、声は真後ろからだった。
「……っ! 兄さん!」
僕は姿を認めて、思わず声を出してしまった。
助っ人登場です!
次回をお楽しみに!
応援、お願いします!





