料理フェスティバル開幕!《仕入れ編》
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ヴァルハルト・シティ。
東の町よりもさらに規模の大きいこの町は、東の町から三日ほど馬車で進んだところにある。すごく立派な門構えというか、もはや要塞?
うわぁ、すごいなぁ。
分厚くて高い壁がぐるりと町を囲っていて、侵入なんて絶対無理だろうな、って思わせる堅牢さだ。これは歴史がそうさせたんだよね。
ヴァルハルト・シティは、街道が重なる地点にあって、要所になっている。
そのため、たびたび戦場になったんだ。
結果、防衛要塞としてああなったわけ。ちょっと悲しい理由だけど、今は観光名所として人気になってるんだ。
「ふむ……この壁を打ち破るのは一苦労だな」
「わたしならーがおーってやるぞ。でも、たいへんかも」
「そうですか?」
二人の会話に、僕は不思議になる。
たぶん、僕なら魔法の一撃で風穴あけられると思うんだけど。
「いや、無理だろ。耐魔法対策もなされている」
「むずかしー」
「うーん、確かにそうですけど、あの術式なら解除できますよ? 確かにちょっと複雑っぽいですけど」
「……術式を解除? ちょっと複雑?」
「はい」
ん? なんでフィブリアさんが顔を引きつらせてるの? サナもちょっと変な目で見てくるし。やだなぁ。あ、もしかして出来ないと思ってる?
よーし、それならやってみせようかな。
「大丈夫です。すぐに解除できますからね」
「ってやめぇい!」
いだだだだっ!?
なんか久々のこめかみにぐりぐりされてるっ!?
「ちょっと何するんですか、フィブリアさん!?」
「それはこっちのセリフだ。いきなり要塞の術式を解除するなんて、戦争行為だぞ!? お前はあの町とケンカしにきたのかっ!?」
「いいえ? フェスティバルに参加しにきたんですよ?」
「だったらそんなことはするなっ!」
お、怒られちゃった……。
そっか、そうだよね。術式を解除されたら大変だよね。
「まったく……」
「タクト、たまにすごいバカ」
「あ、あれぇ……?」
と、とりあえずもう町に入れるし、うん。中の様子って見て回れるのかなぁ。
思っていると、すぐに僕らは入れた。そっか、グランさんが先頭だからか。グランさん、東の町の所長さんだもんね。
名所にもなってる分厚い門をくぐって、町の中に入る。って、うわぁ。
何ここ、めちゃくちゃ広い!
馬車なんて軽く重大は横に並べるんじゃないかな、すごく大きい通りだ。スレイプニルさんが歩きやすそうにしてる。
「道の端、人が通行するところは石畳だが、この真ん中はちょっと湿った土なんだな」
「みたいですね」
でも固さも十分あるから、馬車の動きも妨げない。すごいな、魔法土なのかなぁ。
馬車を気づかった道ってすごい。
それだけじゃない。
建物も立派だ。豪華な造りとかじゃなくて、一軒一軒がしっかりしてる。よく見ると魔術陣が組み込まれていて、かなり燃えにくくなってる。
「すごいな、全部の家がそうなっているのか」
「おー」
「住み心地良さそうですね」
そんな大通りをひた走っていると、大きい広場に辿り着いた。
噴水と大きい銅像を中心に円形になっていて、十字路のように大きい道が合流してる。軽く数百人が集まれそうな規模だ。
ふはー。圧倒されそう。
「ほう、他の地方からきた出場者たちも集まってきているようだな」
「あ、そうみたいですね」
馬車が集まってきてて、中には屋台を引いてるものもある。あれ、かなりの数だ。
フィブリアさんは事前にグランさんから貰った手引きを見る。
「ええと、出店数は三百を超えるようだな」
「はい?」
「おー」
さ、さんびゃくって……。
かなりの数だなぁ。
「開催期間は三日間。およそ十万人が利用するそうだ」
「桁がちょっと違いすぎませんか……?」
「優勝した店のいる町が観光誘致できるくらいだからな、納得の規模だ」
冷静を装ってるけど、フィブリアさんも顔ひきつってますからね?
あ、グランさんからの合図だ。馬車から降りないといけないみたい。
僕たちはさっと馬車から降りる。
他の人たちも続々と降りてきて、壮観。ざわざわっとしている。
『あ、あー』
魔法で拡大された声が聞こえた。
銅像の上に、魔法使いが何人かいて、魔法陣を展開している。
『ようこそ! グランハルト・シティへ! 私は市長のグランハルト十三世です! どうぞよろしくお願いします! さぁ! 全国各地から集まっていただいた料理人のみなさん! 正々堂々と、清く、美しく! その腕をふるい、皆さんの舌を唸らせてください!』
おおおおお!
っと、歓声がわきあがる。なんか嬉しいなぁ。主催の人がこうやって不正なんてするなって咎めてくれるなんて。やる気がでてくるよね。
市長さんはさらに続ける。
『開催は一週間後の正午から三日間! 営業は夜の十九時までとします! 時間前にはスタッフがお知らせに参りますので、しっかりと時間は順守してくださいね』
営業時間は七時間ってことだね。
ここはしっかり覚えておかないと。逆算して仕込みの時間や開店準備を考えないと。
『また、材料の仕入れに関しては自由とします。我が市場も大いに活用してください。ただ、我が町の市場は朝の六時から十五時までとなっております!』
え、市場の営業時間は短いんだ。
仕入れに動くとしたら、朝しかないってこと? でもそれって、争奪戦になるんじゃないのかな。となると、この一週間は仕入れ期間だ。かなり注意が必要だ。
これは並大抵のことじゃないんだよね。
まだ市場を覗いてないから確実じゃないけど、かなりの規模だと思う。
けど、いきなり三百店舗もの出店の仕入れを賄えきれるんだろうか。もちろん祭りなんだから仕入れる量はかなり増やすんだろうけど……。
もし欲しい材料が重なってしまったら。
当然価格交渉になる。
となれば、仕入れ値の高い方に材料は入る。つまり、販売価格に直撃するんだ。
もちろん値段が上昇すれば、それだけ売れにくくなるのは明白。
これはすぐにでも動いた方がよさそうだ。
「フィブリアさん、今何時かわかりますか」
「ん? 正午を少し回ったくらいだが?」
懐中時計を確認して、フィブリアさんは教えてくれた。
「市場の場所は分かります?」
「ああ、探知をすればすぐだな。ちょっと待ってろ、時間がかかる」
「まほー、つかうと、けんちされる」
「その通りだ。警戒網が凄まじいからな。注意をして、と……」
フィブリアさんがぶつぶつと魔術構築を考える。
その間にも市長さんからの注意事項があって、僕は傾聴しながらも、色々と考える。
今回、僕が勝負しようとしているのは、求肥でつつんだしゅわしゅわゼリーだ。
東の町ではあれだけ売れてたんだから、ここでも売れる自信があった。
でも、何か変な感じがする。
うーん。こればっかりは、なんとも。とにかくがんばらないと。
『それでは! 皆様、楽しんでください!!』
おおおおおおおおおおお―――――っ!!
と大きく歓声。
フィブリアさんが直後に魔法を完成させて、市場の場所を把握する。僕はすぐに移動することにした。
馬車を置いていくことになるけど、スレイプニルさんは厩にいかなくてもいいみたい。専用の馬場があって、そこはとても広い野原になってるんだって。
そこならスレイプニルさんものびのびしていられるから、いいかな。
とりあえずスレイプニルさんに馬車を宿泊先まで持っていってもらう。誰かに預けるのは不安だってことで、フィブリアさんとサナがついてくれることになった。
うん、それなら安心だしね。
さすがに馬車に入ることは誰もしないだろうけど……。
「さて、と」
人ごみをかき分けて、僕は市場へ向かう。
むやみにぶつからないようにしないとね。ゆっくり素早く急ぐ。
――ざわざわ、ざわざわ。
喧噪が大きくなった頃、僕はようやく市場にたどりついた。
お、おっきい……。
さすがに東の町よりも大きいや。
ぱっと見たばかりだけど、取り扱ってる種類も豊富。塩の専門店とかもあるんだね。
僕は色々と見て回りつつ、果物屋を探す。ええと、どこにあるだろ。
あ、あそこだ。
「……ん?」
あれ?
すぐ向かい側にもあるぞ?
って、奥をみたら、何軒もある。
どういうことだろう。比率からしてもかなり多いんだけど。
それだけじゃない。砂糖や牛乳を扱っている店も多かった。
どういうことだろう、と疑問がわく。
小麦粉が多いのは理解できる。でも。
「これは品質をよく確認した方がいいな」
僕はひとりごちて、果物屋さんを物色する。案の定、品質にはかなりのバラつきがあった。僕の場合、ジャムにしちゃうから、そこまで高級品を使う必要はないんだけど、でも、ジャムにするにしても……と思うような品質も多い。
仕入れるにしては、ちょっと値段も高めだしな……。
僕はしれっと観察しつつ、やっと僕の手が届く果物屋さんが見つかった。
あ、ここならいいな。
取り扱ってるのも、いちご、りんご、ゆず、ブルーベリー、マスカット。うん、欲しいもの全部揃ってる。ここなら仕入れ交渉してもいいかも。
僕は店頭に並べてあるのを確認して、店長さんへ交渉しようとして。
とんでもない看板を見た。
――……え?
《すでに契約済み。仕入れ不可能》
ど、どういうこと!?
かなり大規模なお祭りになりました。
タクトくんは料理のこととなるとカンと洞察力が鋭くなります。
でも、予想を超える……!
次回をお楽しみに。
応援、どうかお願いします!!





