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完成! と無自覚超絶魔法

「もち米?」

「はい。粘り気の強いコメみたいなものです。ここから南の方で栽培されてるんですよ」

「人間とはいろんなものを作っているんだな」


 感心しながらフィブリアさんはもち米を見つめる。

 白い粒々だもんね、見た目。

 これは炊いてつくとお餅になったりするし、他にも色々と活用方法がある。主食としていっぱい栽培されてる地域もあるから、本当に使い勝手がいいんだよ。珍しいなって思って買ってあったんだ。


「ここが流通限界でもあるんですけどね。ともあれ、これが起死回生になりそうです」


 たぶん、美味しくなるはず。


「どうするんだ? これで」

「はい。求肥を作ります」

「ぎゅう……ひ?」


 あ、頭にいっぱい「?」が出てる。

 目が点になってるし。


「牛の皮か?」

「いえ、違います。とりあえず、作ってみますね」


 僕は腕をまくって、シンクに向かう。

 もち米のままだと使えないから、加工しないとね。時間と道具がないから魔法を使っちゃおう。簡単だしね。

 まずはもち米を水で洗う。

 水ともち米をぐるぐるーっと螺旋みたいに回転させて一気に洗っていく。激しくしちゃうと傷ついちゃうから、そこは気を付けて、っと。綺麗になったら、次は乾燥させる。


 これも気をつけないとね。焦がしちゃったら大変。


 水分を飛ばすようにしてから、乾燥させていく。

 風と火の魔法を同時に扱いながら、丁寧に水分を飛ばして、と。

 乾燥が終わったら、今度は細かく粉末にする。もち米を一定空間に集めて、細かい風の刃を作ってから一気に撹拌するように、っと。

 よし、綺麗な細かい粉になったぞ。

 これでもち米粉の完成だ。


「……君は本当に規格外だな……」

「え、そうですか?」

「今のは全部、最上位魔法だろう。それをいともたやすく扱うばかりか、アレンジまでして、威力も極限にまで削るとか、フツーはできない芸当だ」

「いやー、その、魔法を料理に活用できないかなって、ちょっと研究とかしてまして」

「ある意味正しい魔法の活用方法だな」


 こめかみを押さえながらも、フィブリアさんは苦笑した。


「まぁ、誰も傷つかない魔法ですからね」


 さて、もち米粉ができたところで、求肥を作っていこう。

 作り方はいたって簡単。

 もち米粉と砂糖をよく混ぜてから、水をいれていく。ダマにならないように、数回にわけて、と。よく混ざったら、蒸す。

 時間にして、大体十五分くらいかな?


 蒸し終わったら、コーンスターチ粉を敷いた板の上に置いて、同じ粉を更に上からまぶしてからよーく伸ばしていく。


 これで完成。

 簡単なんだよね。他にも作り方はあるけど、これが基本形。

 もちもちしてて美味しいんだよねぇ。


「魔法のように生み出すんだな」

「料理って不思議ですよね」


 求肥を切り取って、余分な粉をはたく。さらに薄く伸ばして、僕はゼリーを包む。食べやすいように楕円形にしてみた。


「これでどうです?」

「少し色が透けてるな。見分けがつきやすい」


 フィブリアさんは、口をあけて、まくっ。とかじる。


「……! 美味いな、これは」


 目をきらっとさせてからもうひと口。

 僕も試食しよう。

 うん。綺麗な白色の奥に、ゼリーの色が透けて見える。これはこれで雪化粧したみたいだね。

 それじゃ、いただきますっ。


 ん~~~~。もっちもち!


 求肥のもちもちさから、ぷるるんっとゼリーが弾けて、じゅわーって水分が口を満たしてくれる。これは美味しいなぁ。

 デザートとしてもいいし、箸休め的でもいいし。片手で持てるサイズにすればいいよね。

 後は飾りかな?


「うむ、これならいけそうだな。後はサイズとか値段だが、その辺りはもう調査してるんだろう?」

「はい、もう決まってます」


 いっぱい屋台を食べ歩いたもんね。その辺りはもうばっちり!


「じゃあ、もう店を開くだけか」

「ええ。看板とかを作ったり、外装をちょっといじったりすれば、オッケーです」

「……ああ、確かに、見た目は馬車でしかないからな。って、今から作るのか?」

「はい。魔法でささっと。看板とかのデザインはもう決まってるんですけどね」


 ここの屋台は簡単な木組みに、動物の皮で被っただけのもの。そこにお店の名前を直接書いたり、台のところに飾り付けしたり、色を塗ったり。

 つまり、工夫がなされてて、一目で何が売ってる屋台かが分かるようになってるんだ。


 なので、そこでも目立たないとね。


 僕は馬車の内装を家モードに切り替えて、早速紙に書き出す。

 そっと覗き見してきたフィブリアさんは、何度か頷いてから、深刻そうな表情になった。え、ええ、あれぇ?


「よしそのデザインはやめとけ」

「なんでですか? カッコいいものを集めてみたんですけど」


 すると、フィブリアさんはますます顔を変な感じに歪ませた。表情豊かだなぁ。


「これは?」

「ドラゴンです。二本角がキュート」

「こっちは?」

「タイガーです。この牙が特徴です」

「……こっちは?」

「兄さんです!」

「じゃあ、これは?」

「炎の始祖鳥です。翼が燃えてるんです!」

「…………」


 フィブリアさんは絶句して、何度も大きく首を横に振りながらこめかみを押さえた。

 あ、あれぇ?


「どう見てもミミズにしか見えないんだが」

「ひどいですね!? ちょっと絵心ないだけじゃないですか!」

「うん。自覚はあるんだな? いや、あー、うん、だから正直にいうのが憚れてだな? 悪かったとは思うのだが。というか、この内容で出す屋台にしては派手すぎないか、いろいろと」

「目立てばよかろうもんなんです!」

「悪目立ちしてどうするんだ!?」


 フィブリアさんのつっこみは容赦ない。

 うーん、うーーん。

 じゃあデザイナーさんとかに頼んでみる? でも時間がかかっちゃうしなぁ。あまりいいアイデアじゃない。

 腕を組みながら悩んでいると、フィブリアさんが筆と紙をとった。


「仕方ないな、俺がやってやろう」

「え、本当ですか」

「見てられん」


 いいながら、フィブリアさんはシャッシャと気持ちいい音を立てて筆を走らせる。


「店の名前は決まっているのか?」

「はい。色々な国を渡って屋台を出していきますから、なんかワタリドリっぽいなぁって思ってまして。だから『ワタリドリ』にしようと」

「なるほど、いい店名だ」


 微笑みながら、フィブリアさんは褒めてくれた。あ、嬉しい。

 フィブリアさんは五分くらい筆を走らせて、さっと紙を見せてくれた。


「これでどうだ?」


 お、おお……すっごい……なんというかスタイリッシュ・アンド・スタイリッシュ。

 格好いいしクールだしちょっと可愛いし。

 フィブリアさんって本当になんでもできちゃうんだなぁ。尊敬する。


「うん、いいと思います。とっても」

「そうか、よかった」


 フィブリアさんはほっと胸を撫でおろした。

 あ、もしかしてちょっと不安だったのかな?

 こんなに素敵なデザインなのに。音符とか鳥の羽根とかが入ってて美しいなぁ。


「そうだ、色とかありますか?」

「そうだな、爽やかさを出したいなら、グリーンからオレンジのグラデーションみたいな感じでいいんじゃないか? 絵の具とかあれば再現するが?」

「ありますあります……えっと、ストレージの中に……」


 人差し指同士をつんつん突き合わせつつ、僕は視線を泳がせる。


「ふふっ。別に俺の前だったら構わないよ」

「そうですか、よかったぁ」

「人前でうっかり出さないようにしてくれよ」

「はい、もちろん!」

「うわー、すっごい不安な笑顔だなぁ……いいや、とりあえず今は絵の具をくれ」


 もちろんフィブリアさんに言いつけられたから気をつけますよ、うん。

 僕はすぐに指を振ってストレージを呼び出して絵の具セットを取り出す。簡単な魔法が開発されて、豊かな色が出るようになってから、すごく手ごろになった。


 だから全然珍しいわけじゃあない。


 ただ、絵画そのものはまだ珍しいんだけどね。芸術家って感じだし。

 だからフィブリアさんから絵の具って言葉が出てきたのはちょっと意外だった。

 あ、絵の具使うなら水もいるよね。

 小さいバケツに水を注いでテーブルに置くと、フィブリアさんはパレットに色を出して、何色も作っていく。おお、すごい。


「魔法みたいですねぇ」

「お前の料理の方が魔法のようだけどな。さて、と」

「すごく慣れた手つきですね」


 すごく鮮やかに色が塗られていく。すごい。僕だったらドブ色にしかならないのに。

 塗り方綺麗だなぁ。ささっとやってるのに丁寧。


「ああ。戦争がなかったら、絵描きになりたかったからな。デッサンの勉強もしてたんだ」

「へぇ、すごいですねぇ!」

「魔族がデッサンの勉強とか、意外だろ?」

「そうです? フィブリアさんだったら別に変じゃないですよ」

「お前はまたそういうことを……」


 フィブリアさんじゃなくても、別におかしくはないんだけどね。


「さて、出来たぞ」

「綺麗ですね! じゃあ早速……」

「早速?」

「《物質創造》――《想像顕現》」


 デザインをもとに、僕は看板を生み出す。

 部屋に僅かな光が溢れて、その光の粒子が集合して看板が出来上がる。うん、色も艶もいい感じだ! あ、そうだ。ついでにアレを作ろう。


 お店を開くとき、あるといいなって思ってたんだよね。


 僕はもう一度魔力を集中し、指を振る。

 光の粒子がまた収束し、象っていく。生まれたのは、黒板のついた折り畳み式の看板だ。あまり大きいと邪魔になるから、そこそこのサイズで。

 この黒板部分は魔法で文字が書けるんだよね。

 属性を付与した指で書けるんだ。火なら赤、光なら黄色、みたいに。


移動屋台ワタリドリ……本日のメニューはカラフル! しゅわしゅわゼリー! みたいな感じでいいかな。って、あれ?」


 フィブリア……さん?

 なんか完全に硬直してるというか、石化してるっていうか? あれ、あれ?


「フィブリアさん!? しっかりしてください、フィブリアさん、フィブリアさ――――んっ!?」


 僕は肩をゆっさゆっさして起こす。

 結局、フィブリアさんが我に返るまで三十分くらいかかった上に、ものすごく説教された。《創造魔法》は完全に神魔法。使うと世界の法則が乱れるから使うなって。

 すごく危険なものだったんだね、知らなかった……。


 そんな夜を過ごして、僕たちは翌日を迎えた。


 そう。《ワタリドリ》オープンの朝だ!



世界最強は伊達ではない主人公、タクト。

求肥は自宅でも作れますので、やってみてはいかがでしょう?

次回も面白いお話を用意します!


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お読みいただき有難うございます
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新連載はじめました! 追放ものです! ぜひ読んでお楽しみください!
料亭をクビになったけど、料理人スキルが最強すぎたので傭兵やることになりました。
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